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音を有形にしていく人生

「なんだお前シェフなのか?いいか、LAに音楽ががっつり流れて、料理食べられるところ作ったら絶対ヒットする」

Irv's Burgerに連れて行ってくれた人懐っこいUBER運転手の話は止まらない。その話を聞きながら、まるで彼がWAGYUMAFIAのことを話しているかの錯覚に陥った。僕はそれぐらい音という要素を重要視している。オースチン空港でもライブ・バンドが演奏していた、それだけで空港はこんなにも変わるのか?と思うぐらいのインパクトをもたらしていた。ドーム型の空港デザインはそれだけでアコースティックな音場を創造する。

“Sound is a critical, often overlooked element in our lives. We created Syng so anyone can experience the power of audio.”

こんなことを言っている、スピーカーデザイナーがいた。

ツアー最後にSyngを作っている元アップルの工業デザイナーのクリストファー・ストリンガーと会うことにした。僕が使っているMacBookもApple Watchも彼のデザインの一部である。22年勤めたアップルを辞めて、スタートしたのがSYNGだ。スタジオでそのスピーカーを使いだしてからしばらく時間が経つ。

僕はスタジオが2つあり、もう一つのスタジオは昔ながらの音作りをしている空間になる。スタジオに入ってきた瞬間に音が鳴るんだろうということが視覚的に分かる空間だ。クリスのSyngを導入している空間は音を感じさせずに音を鳴らしたい、だからこそ彼のSyngがとても良く似合う。キューブリックの映画に出てくるようなオブジェのようなデザイン、電源以外の有線もないのがいい。何よりも操作性がとても良くできている。360度の音場コントロールを自由に出来るから、一人のときはモノラルにして、人が来ているときはライブ空間のようなセッティングをするなどiPhoneから操作が出来る。

いつものように音とスピーカーの話は5分ぐらいで、その後はずっと90年代の日本の話、食の話、彼らが住んでいるベニスの話、明日から飛び立つケイマン諸島の話、そんな話をずっとしていた。奥さんのエリザベスはケイマンで育った人だ、彼女もスカルプチャーアーティストで、海の中から小さな小石を探してそれを巨大化させてオブジェのモチーフにしているという。京都に昔、フランク・ザッパ好きな店主がやっている店があってザッパって言うんだけど、そのお店がとても良かったのよ。いつも初対面が苦手の妻のフローラも同じアーティスト同士、バリアーがないのだろう。いつも見せないような笑顔をしていた。「ケイマンは面白いから、一度来て料理したらどう?」そう彼女は優しく笑うのだった。

7時のフライトのはずが、すっかり話し込んでしまい深夜近くになってしまった。再会を誓って、僕らは東京へと飛び立つことになる。

http://bit.ly/ULTRANICHE


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