『地球の長い午後』、大分今更の

ふらっと見つけたので読んでみたのです。
若き日にどっぷりハマった作品群の元ネタなのを思い出しつつ。

これまんまオールディスだったのか!
みたいな体験をたくさんしました。
多分書いたり描いたりした方々もオマージュのつもりだったんだろうなぁ、なんて思いながら。

私の知ってる作品だと、思い出せるだけでも。
椎名誠『水域』『アド・バード』(多分『武装島田倉庫』は意識して外しに行ってる)
ジェイムズ・ティプトリー・Jr.「たったひとつの冴えたやりかた」
藤子・F・不二雄「みどりの守り神」
アンディー・メンテ/泉和良「アールエス」
この作品群は私の青春に強く食い込んでおり(特に水域は人生で二番目位に読み込んでます。一着は高校世界史の教科書)、今でもかなり影響受けてるんですが、これらの元ネタを20年以上経って触った格好になります。
…一方でお話自体はこの五作の方が上手いというか、『地球の長い午後』のストーリー自体はびっくりするほど盛り上がらずに終わるというか。

「たったひとつの冴えたやりかた」と『地球の長い午後』

と書きはしましたがシロベーンはアミガサタケとは無関係に出てきてるかもしれません。その場合はごめんなさい。

脳に寄生する菌糸生物が宿主とその種族の手に余ってしまい他に術もなく、という話の軸がほぼそのまんま共通してました。調べてみたらティプトリーが20年くらい後になるんだそうで。
ただ物語の盛り上げ方に関しては圧倒的にティプトリーの方が上手いです。『地球の長い午後』に閃きとガールミーツガールを掛けると「たったひとつの冴えたやりかた」になってたんだなぁ、なんて思ったり。

「みどりの守り神」と『地球の長い午後』

細菌兵器で動物が滅んだニッチに植物が入ったのが「みどりの守り神」。
太陽が膨張して地球が自転しなくなったので昼側が植物の天下になったのが『地球の長い午後』。
だった筈です、確か。
動物がいなくなった理由でABC兵器が出てくるのが戦後日本らしいというか何というか。イギリス(や米ソ)だとこの発想出てこないかもね。

植物が動物みたいに飛び回ってるのを初めて読んだのが「みどりの守り神」だったと思います。投石で撃ち落として食べたら植物の味がしたとか、樹液が牛乳みたいになってて栄養ももっとある(…考えてみるとほぼ生き残っていない動物に当てるためにそんな進化するんだろうか、でも進化って明後日の方向を狙って初めて当たるのも珍しくないからそんなものか)とかの下りは今でも覚えてますね。

「アールエス」と『地球の長い午後』

先に言ってしまうと「アールエス」は前半の折り返しまで行けずに止まってしまったのですが。…2022年でもプレーしてる人いるのか。

月と地球という違いはあるんですが、「懐かしき太陽」号が月に落っこちて独自の生態系が出来る下りが、今思うと大分オールディスだったなぁと。
オールディスだと遺伝子損傷を起こす理由が地球から月に吸われる途中での宇宙線、こっちは退化した人間に☓☓されるってのが何とも性癖出てて素敵。
色々あって月が緑の世界になっている中、人間は遺伝子多様性が足りなくて退化していたというセンス・オブ・ワンダーがBGM「懐かしき太陽」も含め強烈に印象に残っています。フリーゲーム、かつ割と早い段階で出てくる話なので暇をつぶしたい方は是非どうぞ。最後まで行こうとすると大変な事になりますが。

椎名誠と『地球の長い午後』

『水域』の解説にオールディスの名前があったんですよ確か。

『武装島田倉庫』→『水域』→『アド・バード』の順に読んで、
一番のめり込んだのが『水域』です。
ちなみに「ウォーターワールド」はまだ見た事が無いです。

『地球の長い午後』を読み終わって思うと、『アド・バード』のアドバードや地ばしりが本当にそのまんま『地球の長い午後』から出演しててひっくり返りそうになりました。オマージュなのは知ってたんですがここまでモロに影響受けてたとは。
そこから『水域』で変な名前の動植物が出てきつつ、『武装島田倉庫』では大分オールディス要素が薄まっている辺りに色々葛藤とか、オリジナリティ出したかったんだろうなー、みたいのが今だと見えます。20年前だとその辺全く想像も出来なかったのですが…

一方でオールディスが世界を描いているのに対して、椎名誠は人間と食欲を描いていてかなり違いが出ているんですよな実際の所。私がそうだったのを差し引いても、『地球の長い午後』よりも椎名誠SF三部作の方が面白いよ、なんて意見は珍しくないんじゃないでしょうか。それも日本に限らず。
『水域』の何が凄いって出てくる食い物が美味そうなんですよ、全然見当もつかないのに食べてみたくなる味がするんです。

翻って私の感想

アイデアは間違いなく凄いです。地球の自転が止まってる(多分)からバカでかい蜘蛛の糸が地球から月まで届くだなんてどうしたら思いつけるのか。滅びた文明の遺物として出てくるのがストライキを扇動する機械だけなのもなんか皮肉な笑いが出ました。

でも物語も起伏もほぼ無いんですよなぁ。アイデアだけで突き抜けた作品。オチどうするんだろうと思ってたら結末そうなるんかい。いやまぁ、午後というか黄昏すら終わってしまった後の種族な訳だからそのまま沈んでも変では無いんですが。それとアミガサタケがひどく原始的な罠に引っかかってて笑っちゃいました。

とはいえ、しかし。やっぱり偉大な作品なのは分かります。
私に多大な影響を与えてくれた作品群の元ネタに二十年越しに触るという、かなり貴重な経験もさせていただきましたし。

えっ「風の谷のナウシカ」『漂流教室』『アバター』もこれ汲んでたの?!
それはちょっと大分意外でした…

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