雪の思い出

①夜行列車
②スキー場
③吹雪

①夜行列車
雪というと大昔のことを思い出す。
雪合戦、雪だるま、かまくらというものではなく、スキー場での思い出だ。
腹話術師になる前の私は、会社員だった。当時、スキーがとても流行っていた。私も流行にのって、スポーツは得意ではないが、スキーをしていた。
スキー旅行を夜行列車で行った時のことだ。
現在、夜行列車というと、もうサンライズ瀨戸やサンライズ出雲しかない。
当時は、いろいろな夜行列車が走っていた。
私が乗車した夜行列車は、三階建てベットがついているものだった。私と友人はレディース車両に乗車した。一階が友人で、私が三階で寝た。私は寝付きが悪く、夜中にトイレに起きて三階のベットからはしごで降りた。眠くて眠くて仕方なかった。
トイレについたら、なんと窓が開いていた。ピューピューと雪がトイレの中に入っていて、眠気も吹き飛んだ。寒すぎた。顔が雪で凍るかと思ったぐらいだ。
真冬で、夜行列車は山形に向かっていた。
車掌さんにちょうど会ったので、窓が閉まらないとお伝えした。
三階のベッドに戻ったら、あっという間に寝た。
朝、夜行列車は目的地である山形に到着した。
②スキー場
寝不足だが、すぐにスキー場で朝からスキーをすべりはじめた。
せっかく来たから、時間がもったいないと思った。若かった。
今ならば、寝不足だから、少し休んでからにしようとなるけど・・。
スキー場の天気は良かった。快晴だった。
スキー板などをレンタルして、スキーウェアに着替えてリフト&ゴンドラに乗車した。
天気は良かった。
さーて。滑り出した。たくさん人がいた。そうあの時までは。滑っていて、急に回りが見えなくなった。

③吹雪
吹雪になり、あたり一面見えない。
さっきまで晴れていたのに、なぜ?
困った。困った。
でも滑らなくては・・・。
滑った。
寒い寒い・・・。
滑った。
寒い寒い・・。
寒いのに、急に眠気が襲ってきた。
友達に、寝てはだめ!と大声で言われた。
私は、気がつくと雪の上で座って寝ていた。
夜行列車の寝不足が響いた。
よくテレビなどで寒すぎると、眠くなると聞いたことがあったが、まさか自分に起きるなんて。
想像したこともなかった。
眠い・・寒い・・眠い・・寒い・・。
起きて!!!うつらうつらしていた私の目の前で友達が叫んだ。
はっと起きた。
ここで寝てしまったら、私は遭難いや凍死してしまう。
もう一度立ち上がり、友人と滑り出した。
誰も見えないあたり一面雪の中で・・。
滑って滑って・・・。ようやく目の前が見えた。
やった。もう終わりか・・。
そんなに甘くなかった。山は厳しかった。
私の目の前に、とんでもない光景が広がっていた。
急斜面にこぶだらけの場所に来てしまったのだ。
えーー。
うそーーー。
信じられない。
こぶだらけの斜面を滑らなくては、下に降りれない。
友人も同じ気持ちだったと思う。
滑りたくない。でも滑らなくては、下に行けない。
ここにいてもだめだ。
心を決めた。
こぶだらけの斜面を滑るしかない。
こぶだらけの斜面といえば、モーグルを思い出した。
こわいこわいこわい。
すべれないすべれないすべれない。
でも、滑らないと駄目だ。
滑るしか選択肢はなかった。
友人と同時に滑ると決めた。
もう一緒に、いっせいのせい!
こぶだらけの斜面を私は滑り出した。
スキー初心者の私。
こぶだらけの斜面
こわいこわいこわい。
火事場の馬鹿力という言葉があるが、まさに私はその言葉のとおりに滑った。
テレビでモーグルの試合で出てくるような斜面を私は、滑った。
大きなこぶを、ものすごいスペードで滑った。
びっくりする早さで、私はこぶを次から次から滑った。
私は、その瞬間モーグル選手のようになっていた。
どんどん大きなこぶを私は、滑った。
今まで経験したことのない早さで滑った。
私は、まるで鳥のように軽やかに滑っていた。
ほぼ同時に、私と友人はこぶだらけの急斜面を滑り終わった。
無我夢中だった。
もし転んだら、終わりだった。
私達、二人とも奇跡的に転ばないで滑りきった。
よかったの一言につきた。
奇跡だった。
ほっとした瞬間、寒さが襲ってきた。
窓ガラスに写った、自分の姿をびっくりした。
びしょびしょでやつれきった私・・・。友人も同様だった。
どうしてこんなことになったのだろう?
レストハウスで、温かいココアを飲みながら、スキー場のパンフを見た。
私達は、上級者コースを滑ってしまったのだ。
あのこぶだらけの斜面は、超上級者向けだった。
ゴンドラで上にあがった時、右と左の選択肢を間違えたのがすべての原因だった。きちんとゴンドラに乗車する前にパンフレットをみておけば起きなかった。
確認が大事とつくづく思った。
でも本当に無事で良かった。
一歩間違えれば、大けがをした。もっと大変なことになっていた。
スキー場そばの診療所で、耳が凍傷のようになり、診察してもらった。その際、大きなけがをした人が何人も運ばれてきた。
私は、この後スキーをやめた。
スキーウェアもすべて捨てた。
あれから、かなり長い年月が過ぎた。私はスキーをやっていない。
もうスキーはやらない。
でも雪は好きだ。


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