影を慕いて 〜青春の終わりを容赦なく描ききった名作『暗殺の森』〜
影に憑かれた男の映画である。
影とは叶わぬ夢が見せる幻、失われた青春の残照。
13歳の時に性的虐待を受けた運転手の青年を拳銃で撃ち殺した“異常な”過去を隠し持つ主人公マルチェッロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、自身がそこから締め出されてしまっているように感じている“正常な生活”を独力で作り上げ、その内部に復帰せんとする強迫的な欲望に駆り立てられている。中産階級の平凡で退屈な女ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)を妻に娶り、大いなる全体の一部となって機能すべくファシスト