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聴かせて!「NPO法人シニアと地域を元気にする会」のわがこと

「聴かせて!みんなのわがこと」、今回は「NPO法人シニアと地域を元気にする会」の上田さんにお話しを伺いました。
そこには「人生に無駄はない」と言い切って、わがことにして活動を行っているかっこいい姿がありました。

「聴かせて!みんなのわがこと」とは?
香川県内でとても素敵な活動をされている個人や団体にスポットライトを当て、「共感の輪が広がっていってほしい」という想いから、その活躍や思いなどのわがこと(我が事)をインタビュー形式でお届けします。

Vol.15
NPO法人シニアと地域を元気にする会


ノウハウを積み上げ啓発活動へ

—今の活動について教えてください

上田さん:「NPO法人シニアと地域を元気にする会」は、シニアさんをテーマにした、終活と認知症の啓発活動を柱に活動をしています。
それと地域の人材育成で、ちょっと終活の話を入れたオリジナルの介護予防サポーター養成講座を行っています。

土台となっているキラメキ社会福祉士事務所の方では、生活支援サービスとまるごと安心サービスという2つの事業をしています。まるごと安心サービスではおひとり様、つまり家族がいない人の代わりになるという事業で、お一人お一人を丁寧に家族のように見ていくというコンセプトでやっています。
うちはキラメキで実際の利用者さんの支援をしてノウハウを積み上げて、その中で私が気がついたことなどを、NPOの方で広報活動、啓発活動として、地域活動に落とし込んでいるという形ですね。

地域で介護予防や終活についての講演を開催しています!

 —今のお仕事を始めるきっかけは何ですか?

上田さん:そもそもそのきっかけは、大島青松園で終活に関わる委託事業を13年間運営させていただいたことです。
委託事業の継続先がなくなった結果、一般社団法人のキラメキ社会福祉事務所を設立して、事業継続したんです。
社会福祉士の始まりは、医療ソーシャルワーカーからですね。最初は病院の事務で働いていて、医療費の支払いができない方の相談業務に携わっていたんです。

結局お金がない人っていうのは生活課題が隠れているんですね。それでもう少し勉強したいってなって、社会福祉士を取って医療ソーシャルワーカーとして働くようになったんです。
医療事務での経験はすごく忙しかったですが、毎日カルテを読んだり、先生の患者さんへの説明をずっと聞いていたりしたことで広く浅く医療の知識ができました。事務職の経験が、委託事業の事業構築の際ににも役に立ちましたし、医療現場での経験がそこは今の仕事で利用者さんの体調面とかを見る上で非常に役立っています。


人生に無駄はない!!

上田さん:父が末期がんで9ヶ月闘病生活を送ったんですが、この時の経験も今の仕事に繋がってるんです。
父親は胃がん大腸がんだったんですけど、なんと手術を失敗したんです。でも、この話ができるのは、先生がすごく誠実な方で、正直に話して謝ってくださったからです。真摯に向き合う姿勢には、勉強させてもらったと思います。毎日、必ず1日1回どんなに遅くなってもうちの父親を診に来てくださって、一生懸命に治そうとしてくれました。

もう一つびっくりしたのは、先生が自分から「実は手術失敗してしまって申し訳なかったです」って父親に謝ったんです。
それも驚きでしたが、それをまた父親が、過酷な闘病生活だったのに、ニコニコしながら赦したんです。その時人を赦す力がすごいと思ったんです。福祉の仕事に携わる者として根幹になる大事なものを教わったかなと思いますね。

お一人様の家族の代わりになるため親身になって話を聞く上田さん


活動の原点となった父親の最期

—正直に伝えた先生も、それを笑顔で赦すお父さんもすごいですね

上田さん:そう思いますね。それで、とうとう父親の病状が進行して死期が迫ってきたときに、先生に、麻酔を使って眠らせますか?人工呼吸器つけますか?って聞かれたときに、悩んだんです。

母親は「かわいそうだから寝させてあげた方が」って言ったんですけど、私は病院にいる時に人工呼吸器つけると大変っていうことを見てきていたはずなのに、父が反応してくれるのが嬉しいし、人工呼吸器つけてでも生きていてほしいって思って、親子で意見が合わなかったんです。
そうこうしていたらその時がやってきたんですけど、意識ない中でも家族と水入らずの時間があって、家族みんなが思いを伝えて、手を握ったりさすったりできたんです。父も聞こえているよということを伝えてくれて、そこから最期すーっと旅立ったんですけど、その時の生き様、死に様じゃなくて生き様が、今の終活の活動をすることに大きく影響していますね。
 
終活の活動をする中で、やっぱり親と死生観について早く話しといたらよかったと思いました。人間は必ず、生まれた時から死ぬことは決定事項で決まってます。だから、親子でちゃんと話をしておくことの重要性ですよね。
結局、人工呼吸器の希望とか聞いてないわけですよ。それが急にあの状況になって、最後、どうするなんて話せないです。

まずは大まかな方針というか、「私は自然に旅立ちたい」とかでもいいので、そういうことを共有しておくことの大事さがあると思いますね。私、いまだに父親を変に苦しましてしまったんじゃないか、眠らしてあげたほうがよかったんじゃないか、とか思うんです。そういうところでエンディングノートを書くことでお互いに後悔がないように困らないようにという思いです。

利用者さんとの素敵な一枚。日々の関係性の良さが現れています!

—知る備えの重要性、ですね

上田さん:私が言ってるのは、知って備えとくっていうこと。急に知らずにその状況になったら、みんなあわあわなるじゃないですか。それでもある程度知識を得た上で起こったことに対してある程度は落ち着いて対処できます。そういうとこ含めて「エンディングノートも書いとかないといかんよ」ってことも話します。

私のエンディングノートの講座は全4回の連続講座になってまして、1回目はなぜエンディングノートを書くのかという心作りから始めて、ざっくりとエンディングノートを書いてみましょうというものです。
なかなか書くのが難しいんです、エンディングノートは。でも、その書けないところにその人、その家族の課題があるので、この講座の隠れたテーマとしては自分の課題に気が付いていただくということも実はあります。

家族の代わりとなるよう、何度も話し、思いを共有する。
大切だけど簡単にできないことです! 

—うちの親とも話さないとと思うんですけど、どうやって話を持って行こうかなって考えてしまいます

上田さん:そういう人にいつも言うのは、まず自分が受けてくださいということです。そうすると若い人が親が高齢期を迎えるにあたってどんな介護の準備が必要かってことが学べるんですよ。そのことをきっかけに親に話してもらうんです。実はこういうこと勉強してきて、って。

当然私もシニアさん中心の講座なので、シニアさんにも必ず言うんですよ。こういう話は子どもさんの方からしづらいから、ぜひお正月とか皆さんお家に帰ってくると思うんで、その時にちょっとずつ、何回かに分けてお話ししてみてください。その口火は必ずシニアの皆さんから切ってくださいって。だって子どもさんたちの立場からしたら、「俺に死ねって言うのか」っていうふうに親に思われるのではないかと思うでしょ、って話をするんです。そうするとシニアさんも、「それはそうやな」って笑ってくれるんです。

ある程度の気持ちは伝え合うことが大事なんです。全く下地がない状況で病院行った時に「人工呼吸器どうしますか」って言われるのと、気持ちを伝え合うという下地があって、それを基に判断するのと全然違いますから。

取材スタッフの悩みにもあったかく答えてくださいました!


終活と切り離せない認知症の問題

—認知症のことも大切ですよね

上田さん:そうですね、やっぱり自分の意思をきちっと表明するには頭がしっかりしてないと表明できないので、終活の話の中で認知症の話は切っても切り離せない話ですね。
だから認知症予防の取り組みとして認知症予防の講座に加えて、脳若トレーニングっていう iPadを使った脳トレーニングでみんなでワイワイ言いながらコミュニケーション重視のトレーニングも提供しています。

1回したくらいでは認知機能は上がらないんですけれど、「こういうことは家でもできますよね」って言ったりね、こういう生活を心がけましょうみたいなことも お伝えしながらしています。これも脳トレ体験を兼ねた啓発活動ですね。

—お互いに助け合わないとダメなんですよね

上田さん:終活の話って暗い内容が多いんですけど、一つ明るい話としては、元気な高齢者も増えてるんですよ。
だからその元気な高齢者の人たちには、自身の介護予防を兼ねて支え手にまわって、っていうのを啓発しております。

だって人生100年時代考えてみてくださいよ。70、80くらいから寝たきりになったとしても医療が発展した結果、その後15年とか20年とか生きるとしたらつらいから、それだったら人のお世話しながら、元気にハツラツと生きていただきたいっていう啓発です。

―それはどうやって、伝えていけばいいでしょう?

上田さん:そうですね。私のところでは月1回寄り愛カフェ(=終活カフェ)だったり、介護予防終活サポーター養成講座(全4回)を提供しています。
カフェでは、私が伝えるというよりは自ら気づいて考えてもらう場が必要かなと思って、毎回テーマを決めてちょっと話題提供して、そのことについてグループで話し合ってもらう大人の話し合いみたいな感じです。そこで助け合うっていうことの話をしたりします。

結局、一方に寄りかかりすぎて頼りすぎると、しんどくなるから、それはお互いの思いやりがあっての上でのことで、 頼る側が頼られる側を思いやることも大事なので、 そこにはお互いの気持ちの上での自律が必要ですよね。常に相手を思いやりながらお願いすることが互助にもつながると思います。

大したことせんでもいいんですよ。隣の人が困っとったら、スーパー行く時一緒に乗っていくとか。市役所から書類が来て困っとるのを一緒に見てあげたり、これこうやって書いて出したらいいんやとかっていうちょっとした助け合いです。
思いやりをみんなが持ち寄ったら、助かる人が多い。地域の人材育成、老後の生き方についての学びの場としては、介護予防、終活サポーター養成講座で、現在100名のサポーターさんの登録があります。

100円ソフトクリーム、利用者さんテンション高めの「美味しい」いただきました。


自分の活動がこれからの人への道筋になるように

—これからの展望を教えてください

上田さん:今後はもうちょっとオンラインで全国に向けての講座もやっていきたいなと思っています。加えて、オンラインで終活や介護についてのご相談に乗ったりっていうところも整備したいなと思っています。

今の活動はほぼ県内です。駆けつけできる範囲の高松市内が中心なので、だから全国展開するつもりとかは、一切ないんですけど、いろんなお一人様とかシニアの方々との関わりの中で探り探り支援の幅を広げていったりとか、契約書の中でカバーできないかとやってきたうちのノウハウを伝えていくようなことは していく必要があるのかもしれませんね。

道筋といってもとても細い道筋かもしれないけど、この分野の地域の一番手として、この後にこの道に続く人のためにあぜ道ぐらいは引いておきたいと考えています。
 


取材を終えて

病院の事務員さんから医療ソーシャルワーカー、社会福祉士、そして終活+認知症予防のNPO代表と、自分の進むべき道をどんどん切り開いていった上田さん。
どれか一つだけでも大変なことなのに、ただただビックリです。

どこにそんなエネルギーが・・・と思っていたら、上田さんの口から出たのは「この仕事は自分のため、エゴなんです。」という言葉でした。
「私がしたことにありがとうと言ってくれる人がいる。それに癒やされているからやっているんです。」

「社会的使命への想い」も間違いなくあるでしょうし、「父親への想い」もあったりするけれども、それ以上に自分のためにやっているという感覚があるからこそ、大変でも笑顔で取り組んでおられるのだと気付かされました。まさに「わがこと」なのですね。

「大したことでなくても、お互いに隣の人が困っていればちょっとずつ助け合えれば」という上田さん。
そんな未来を、みんなでつくっていきたいと心から思ったインタビューでした!

スタッフと一緒に記念写真。素敵なお話をありがとうございました。


NPO法人シニアと地域を元気にする会
[Web] https://scgenki.jimdofree.com/

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