ありがとう

 私が小学生くらいまでのころ、母方の祖母の家の3つ下の階の佐藤家で遊ぶことが多かった。佐藤家とは母が子供のときからの付き合いらしく、昔は毎日のように遊び、旅行にも一緒に行くくらい仲であったらしい。佐藤家には娘が2人いる。当時、その娘2人と男のいとこ、私の計4人で無邪気に遊んでいた。

 それぞれ年をとっていくと、会う回数が減り、やがて一切会うことはなかった。仕方ないことだ。子供も成長し自我が芽生え、一人で行動することができるのだから。物事には始まりがあって終わりがある。いとこは何度か会うので顔は勿論覚えているが、娘2人は顔が全く思い出せなくなるくらい会わなくなった。

 それから10数年が経ち、祖母の葬式があった。本当に悲しかった。ずっと生きるものだと思っていた。私の家族は車で葬儀場に向かった。到着して、部屋に入ると5人が先着していた。私はその内3人の顔と名前は一致した。しかし、問題は2人のスタイルのいい女性。全く誰だか分らなかったので、母親に聞いた。

私 「あの2人誰?」
母 「何言ってるの、ホッピーとアスリンじゃない。」

 衝撃だった。佐藤家の娘ホッピーとアスリンが大きくなり、色気も出し素晴らしい女性になってるではないか。不謹慎だが興奮した。仕方がないことだ。数年女性と話す機会がなかったのだから。美人すぎて、私の全細胞が喜んでおり、特に心臓は血液が滝のように流れる感覚だった。祖母ではなく2人をずっとみていた。

 すると、アスリンが私の存在に気づき当時の呼び名で呼んでくれたのだ。しかし、会話はなかった。葬式なのだから。2人は私の祖母を悲しみ、私は2人の顔を見て、エネルギーをもらった。美人すぎて、笑みがこぼれてしまった。世間からみたら非常識なのだと思う。しかし、祖母はこのように言っているだろう。

     「出会いを大切にして、仲良くしなさい。」

 一瞬、寝ている祖母が笑ったような気がした。祖母はこれから私たちの幸せと希望を願って大空に飛び立つのだろう。葬式なのになぜこんなに微笑ましいのだろう。

 大人の女性はどうして、色気があるのだろうか。小さかったホッピーとアスリンがどのようにして生きて大人の素敵な女性になったのだろう。もっと会話して、連絡先もらっとけば良かったと今後悔している。

  それからは会ってない。2人共更に綺麗で素敵な女性になっていることだろう。生きていて苦しくなったら、是非私に会いに来てほしいと思う。祖母の命がつないでくれたこの機会に感謝したい。ありがとう

 今日は晴天だ。祖母も天国で喜んでいることだろう。




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