『真夜中のペンギン·バー』 ハルヲの読書日記《1冊目》

こんにちは。
今回は、横田アサヒさんの『真夜中のペンギン·バー』についてお話させて頂きます。

――悩める者だけが辿り着けるバーがある。
その不思議な店のマスターは、なんと人語を喋るペンギン。

表紙のペンギンの可愛さと、美味しそうなカクテルに釣られて本書を手にした。この直感は大当たりだった。

お酒の描写に五感を刺激された。
チョコレートムースのようなアレキサンダー。アプリコットフィズ、ブラッディメアリー……他にも様々なカクテルが登場する。チャーム(いわゆるお通し)も美味しそうで、なんとも食指が動かされる。

カクテルを作るペンギンマスターの動きには躍動感があり、この世界ではあり得るのだなと妙に納得してしまう。作者の横田さんのペンギン愛が伝わってきて、好きなものの魅力を他者にも伝えられる筆力が凄い。

想像の中で出来ないことが追体験できて、コロナ禍でたまったストレスが癒やされた。まるで自分もバーの客に加わったかのように、傍から悩めるお客さんの物語に耳を傾けてしまう。

プロローグの漫画的な印象や第一話のオチについて、最初は個人的に合わないかなと思ってしまった。その不安感ですら、読了後は作者の計算の内なのではないかと思ってしまう。

詳しく書くと興ざめになるのでやめるが、まるで夢からすっきり目覚めたかのような読後感。本を閉じた後の余韻からなかなか醒めなかった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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