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全てのビジネスパーソンは1度は社外役員をやった方がいい、なぜならあらゆるニュースがリアルに「自分ごと」になるから

正確には「社外」役員じゃなくてOKで、むしろ本当は「社内」役員の方が良い、と思います。

遠い国の紛争や、格差問題、1票の価値、などは、「今日の仕事」には直接関係ないかもしれない。
だけど例えば待機児童の問題は、独身貴族にとっては「大変ですね」で終わりかもしれないけど、経営者にしてみれば自社の従業員の働きっぷりに関係してくる。ブラックライブズマターは、日本人には若干縁遠いかもしれないけど、経営者からすると、人権意識の高まりは、ひいては自社のハラスメント対応に影響してくるかもしれない。アフリカのどこかの国で感染症が発生したら、数年後のうちのサプライチェーンに支障が出るかもしれない。
自分の仕事や、自分の部署や、自分の業界には関係なくても、「自分の会社の長期的な経営」の目線に立つと、あらゆるニュースが自分とこの課題であり、まったく関係ないニュースがほぼなくなる。
要は、あらゆる社会課題って、経営課題でもあるんですよ。

だから社外役員をやっていると、報道があったとき、とっさに「ええーっ、うちの会社は大丈夫…!?」と反応してしまうようになります。そしてリアルに自社の経営に関係ありそうなテーマの場合、ちょっと深掘りして調べねばと思い、文献を調査したり、専門家に意見を聞いたりすることもあります。

経営トップはよく「従業員に経営目線を持ってほしい」と仰いますが、経営者でもないのに経営目線を持つなんて無理です。現場はただでさえ忙しいんですよ。
英語の勉強だって、「やった方がいいんだよな〜」と思ってるうちは、やりません。TOEICの試験を申し込んでお金払って締め切りを設定しないと、そんなのするわけないです。
だから「従業員に経営目線を持ってほしい」なら、「経営目線を持たないとヤバい」状況に置く必要がある。

だからといって部長全員によそで社外役員やってこいと言うわけにもいかないから、どうするか。
最近流行りの、経営幹部育成のためのタフ・アサインメントなんかは、この考えから来ていると思います。
つまり、将来の幹部候補生は、経験も浅いうちから海外子会社のトップにして、無理やり社長経験をさせたりするわけです。
まあ、本当に希少な幹部候補生にはこういうことをさせればいいわけですが、そんなにたくさん社長ポジションがあるわけでもないので、このほかにどうするか。
アイディアベースですが、部長などの管理職層を順ぐりに取締役会にも呼んで、強制的に自分の部署と関係ない議案についての質問や意見を述べさせる、というのはどうでしょうか。
それは素朴な疑問でよくて、例えば、ある日の取締役会の議題が月次の報告事項とM&A関連の決議事だったとして、M&Aとは全然関係のない事業部の部長が、当該M&Aによって起こるシナジーをもうちょっと詳しく説明してくれって聞くとか、月次の決算報告について別部署の利益構造のことを質問したりとか。
現場の管理職も、いつ取締役会に呼ばれてトップ層の前で質問や意見を言わされるか分からないとなると、いやがおうにも日々の経営課題を意識して、社外役員を含めた役員たちに笑われないようなことを言わないと…と思うようになるのではないでしょうか。
もちろん、多くの管理職様は「そんなことせんでも日々のニュースに目は通して検討している」と仰るとは思いますが、より一層切迫する、という意味で。
ある部署の部長の素朴な疑問に担当取締役がオタオタする、というのもちょっと面白そう…。
質疑あわせて5分までとか区切っておけば運営上の時間的な負担も少ないでしょう。

情報管理が必要になるから役会事務局は間違いなく嫌がると思いますが!
あ、あと取締役会で取締役や監査役など法定の出席者以外の人が発言するには取締役会の同意が必要ですから、手続きは気をつけてくださいね。

弁護士 野村彩(のむらあや


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