見出し画像

レビュー01 押切蓮介「サユリ」

はじめまして!


作家兼ライターの和田賢一と申します!
 
このたび、NOTEを初めてみました
 
ここでは自分が趣味で集めたフィギュアや玩具、面白く印象に残った小説や漫画、映画、役に立った資料本などをご紹介していきたいと思います!
 
では、まず最初にご紹介したいのがこちら!
押切蓮介著『サユリ』です!


押切蓮介さんと言えば、アニメ化されたことでも有名な漫画「ハイ・スコアガール」で有名な漫画家さんですよね
 
また同作者の漫画を原作とした映画「ミスミソウ」もその激しくも悲しいバイオレンス描写で話題になったのは記憶に新しいところです
 
そして、私こと和田賢一が次に実写映画化して欲しい押切作品こそ、本作「サユリ」だったりします!
 
では早速、「サユリ」についてレビューさせていただきます
 

≪あらすじ≫


家族とともに中古の一戸建ての家に引っ越しした中学生、神木則夫
しかし、新居での新しい生活に馴染む間もなく、一家の大黒柱である父・昭雄が急死してしまう
以来、残された家族にはおぞましい怪異が襲い掛かり
祖父は変死、姉と弟は家の中で忽然と姿を消し
母は次々と家族を不幸が襲った心労から自ら命を絶ってしまう
 
絶望の闇に沈む則夫の前についに姿を現す、家に憑いた女の怨念・サユリ
どす黒い、この世ならざる者の悪意に則夫が呑み込まれそうになった時、
痴呆症だった祖母が突然正気に目覚め、ともに家族の仇討ちを則夫にもちかけるのだった
 
あらすじはこんな感じですね!

続いて登場人物を紹介します

≪登場人物≫


神木則夫…主人公。中学3年生。クールだがごく普通の少年
神木昭雄…気が弱いところがあるけれど家族のために夢のマイホームを手に入れ張り切るお父さん
神木正子…お母さん。少し神経質なところがある
神木俊…神木家の次男。小学校5年生。怖がりで兄の則夫によく甘える
神木径子…神木家の長女。自己主張が強いお姉ちゃん。則夫と新居の部屋を取り合ったりする
神木章造…お爺ちゃん。則夫にテレビを買ってくれたり径子に部屋譲ってくれたり優しい
おばあちゃん…名前は不明。昔は凄まじい気迫の持ち主だったが現在はボケてしまっている

 
……以上の人々に主人公の則夫を含めた総勢7名が
謎の怨霊「サユリ」の引き起こす怪異の被害者となる神木家の面々です
まあ、どこにでもいるごく普通の家族と言っても差し支えはないでしょう
 
そして、彼らに加え則夫の同級生の隅田菜緒……。
霊感少女である菜緒は「サユリ」の存在を感知し、早く家を出るよう則夫に進めてくれるのですが
いかんせん、普通の女の子。
 
おぞましい「サユリ」の精神攻撃を受け
「神木君…私…何もできない…何も…」と早々に膝を屈してしまいます

ホームドラマ版呪怨 

本作「サユリ」を一言でいえばホームドラマ版呪怨でしょうか?
謂われなき赤の他人の怨念に襲われ、次々と主人公にとって大切な人々が命を落としてゆく展開は
正にジャパニーズ・ホラーの王道ですよね!
 
しかし!
本作「サユリ」は後半、そんな王道ホラーな世界観を大きくぶっ壊しにかかります!
そのキーパーソンこそ!
前半、ぼけてしまっているせいか、ほとんど出番もなく
これと言った動きも見せずなかったあの人!
神木家のおばあちゃんなのです!
 
彼女は神木家の一員でありながら劇中、一度も名前が出て来ません
前述した通り痴呆症が進行しており、一番の弱者と油断していたのか彼女には「サユリ」の怨霊も一切手を出していません

超展開


ですが、おばあちゃんは突如として正気に戻り
則夫の口から家族が皆殺しにされたと聞いた後、静かに孫にこう問いかけるのです
 
「則夫 このままでいいんか…? やられ損のままでいいんか…?」
 
そして、ここからが超展開の始まりです
おばあちゃんに鼓舞された則夫は「サユリ」に復讐し
未だどこかに連れ去られたままの母・姉・弟を取り返すべく
己を鍛え始めます!
 
……普通のホラーならこのまま則夫も怨霊にとり殺されてしまうところですよね?
 
まずは基礎体力をつけるための早朝走り込みのトレーニング!
 
おばあちゃんの手作り!油ギッシュな中華っぽい朝ごはん!
もちろん、食欲がないだとかそんな甘ったれたことは許されません!
 
「甘えは聞かんぞ」
「食べて命を濃くせんとワシャ許さん」
 
……腹が減っては戦はできぬ、っていいますもんね
ましてや相手は恐ろしい怨霊
おばあちゃんが体育会系全開なのも当然と言えば当然でなのです
 
さらにおばあちゃんは
 
「引っ越ししてから床掃除を怠っていたな…」
 
と家の中の掃除を始めます
 
「家はなるたけきれいにしろ則夫」
「内であることは外でもある」
「内を良くすりゃ外も良くなるこった」
 
何と言う名言!
コンマリこと整理整頓アドバイザーの近藤麻理恵さんが聞けば
大いに賛同してくれそうですよね
 
ただし、則夫にかかっているのは
人生のときめきではなく、自分の生命そのものですが…
 
こんな感じでおばあちゃんは正気に戻ってからわずかな時間で
則夫から絶大な信頼を勝ち得ます
 
おばあちゃんの功績は弱った則夫の生活を整え、励ましただけではありません
 
不幸続きの神木家について
嫌な噂や陰口を叩く近所のおばさん達をなんとバットを振り回して追い払います
 
そのおばさん達のなかでも特に発信源となっている人物に至っては
 
「何じゃあ~?」
「何じゃあ~?」
「何じゃあ~?」
 
と恫喝しつつ往復ビンタで制裁を加えてしまいます
 
……ちょっとやり過ぎだと思うかもしれませんが
スピリチュアルの世界では言霊、つまり言葉にして出したことは本当になる、
という考え方がありますので
おばさん達の陰口のせいで神木家の不幸が強まる
という見方もできるわけです
 
彼女達が不謹慎にも神木家の不幸を面白がり、
好奇の目を向けていることは事実ですからね
 
ある意味、このおばさん達も怨霊「サユリ」の精神に同調しているのかもしれません
 
おばあちゃんに往復ビンタを喰らってしまったおばさん
白々しくも「お祓いした方がいいですよって忠告してあげてるのに…!」
などと嘯きますが、もちろん、余計なお世話です
 
おばあちゃんの覚悟は既にガンガンに決められており
 
「祓ってすませるつもりはねえ」
 
と鬼の表情でそう宣言するのです
 
……このおばあちゃん、一体何者なのでしょうか?
つい最近までボケていてか弱いお年寄りだったはずなのですがwww
 
生者が怨霊と戦う唯一の方法が
 
「生命力じゃ」
「よく食べよく寝て――よく活きる」
「ヤツがワシらに手を出せんのは…生命の濃さに気圧されているからじゃ」

 
と則夫を諭し
 
怨霊「サユリ」の正体を過去、この家で殺害され庭に埋められていた少女であると看過する様はとても素人とは思えません

ババァ無双

そして、おばあちゃんは目的のためなら
犯罪行為にすら手を染めることを厭いません
 
他人の家に侵入し、そこの住人を拉致したり…
さらにその人たちの足にアイスピックを突き立て、親指を追ったり
ロープで首を絞め殺しかけたりと
 
はっきり言って鬼畜の所業です
正気の沙汰とは思えません
 
だけど、この凶行は全て守れなかった家族を取り戻すため…
愛ゆえの行いだったりします
 
作者の押切先生は後書きで
 
「邦画のホラーはいつも負け戦ですっきりしない」
「何でもいいから人間側が怪異に対し一矢報いるホラーが出ないものかと待っていた」
 
と仰っており、それを体現したのが、この「サユリ」後半における
ババア無双だということです
 
……それにしてもババア無双って凄いパワーワードですよねwww
 
そして鬼と化したおばあちゃんは全てに決着をつけるため
怨霊「サユリ」と最後の戦いに挑みます
 
阿鼻叫喚の地獄の中、則夫は何を失い、何を取り戻すのでしょうか?
この物語の結末は他ならぬあなたの目でぜひ確認してください!
 


ライター自己紹介

今回、この記事が気に入った方はスキボタンをクリック
フォローをお願いします!
 
また、私、和田賢一は作家兼ライターとして活動しております
 ポートフォリオはこちら→
https://1drv.ms/f/s!AkB-zzTY7FxO8Xs65qb_tF7aCA1E

お仕事の相談は
wadaken@live.com
までよろしくお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?