消せない録画たち。 ~3本目~ 「一人が好き同士ってどうやって友達になるの?」<マツコ・デラックス>

買って10年くらいになるうちのテレビ。
ハードディスク容量がいっぱいになり、
新しく録画しようとするときは
断腸の思いで昔の録画を削除する。
しかし、その中にいつまでも消せない録画がある。
何度削除ボタンに指を伸ばしただろう。でも消せない。
そんな極私的名作番組、
自分一人だけの熱狂をここに記録します。

(消したくても)消せない
(ロクでもない)録画たち。 3本目
「一人が好き同士ってどうやって友達になるの?」
<マツコ・デラックス>


3本目に取り上げるのは、深夜番組のお手本と言ってもいいこの番組。

2020年10月23日O.A.
テレビ朝日「夜の巷を徘徊しない
マツコとヒャダイン理想の46分カセットテープ作り」

 

コロナ禍になり街を徘徊できなくなったため、こんな番組名になっています。番組は本題に入る前に、北海道旅行に行ったヒャダインとマツコのオープニングトークが15分くらいあるのですが、この何気ない雑談がとても素晴らしい回です。私自身、雑談がとても苦手なので、そういう部分に憧れがあるのかもしれません。自由に、知的に、言葉のやり取りを楽しむ。ラジオのだらっとした感じまではいかない、テレビのある種そこだけが輝くスポットライトの中で、ハイでもローでもないミドルブロー??なコミュニケーション。心地良すぎです。

レンタカーで一人旅をしてきたヒャダインが、閉店するお店で買ったホタテのボイル耳をマツコに土産に渡すところから始まり、稚内の街が死に始めている話、マツコの札幌のオカマと会うレンタカー旅、東北の冬の厳しさを知るために雪の中に出て死を感じるという行為…伊集院光がラジオで話す一人旅に通ずるものがあります。我々一般人もこういう旅の会話をするけど単なる旅自慢になっちゃうんだよね。「一人がいちばん良い旅行は。団体とか、仲良い二人でとか行く旅行は鴨川シーワールド行ってればいいのよ。一人で行くからこそ向き合える」とマツコは言います。

なかなかこの二人で会うことがないとマツコ。人を誘うのがあまり得意じゃないというヒャダイン。おそらくわたしゃ人のこういう内面を知るのが好きなのだろう。行きつけのバーをテレビで行っちゃったらもう行けなくなったという自意識とか、共感するところばかりです。

「思ったよりこの人あれよ、お金稼いでも使い道分からないタイプだからね」
「お互い様じゃないですか」

自意識に振り回される不器用な生き方をしていると、悩んでいるうちに無駄に時間ばかりが過ぎていく。たとえば俺もさっきコンビニでたまたまレジの列に並んでた人が、そのあとで同じ定食屋に向かっていたことが分かったなんてときにゃ、今日はそこに行くのは絶対にやめるというくらい敏感で不器用です。知らない人でしょ?っていやいや。とにもかくにもさっき出会ってしまっているので、もう今日は行くことはできません。生きづらいねえ。

「ずっとケチなんですよ」
「ようやくミキモト買ったじゃない」
「でも3ランクある中のいちばん下」

そしてだんだんと話は切実に。

「どうなのよ最近、そっち系は」
「なんもないですよ」
「あたしようやく分かったのよ。
なんかある人ってね、外に出てるのよ(笑)」
「昨日と同じ今日がほんとに続いていて」
「でも結局好きだからやってんのよ、あたしたちそれが」
「でもこのまま朽ちていくのかなって思うと
結構ゲボ吐きそうな気持ちになりますね」


「一人が好き同士ってどうやって友達になるの?」

ハリネズミのジレンマ的なマツコのこの問いかけで、フリートークは終わりを迎えます。結局最後はここにたどり着くことが分かっているんですよ。番組の中では、ここからカセットテープ作り企画という「友達ごっこ」が始まるわけですが、それはごっこでしかない。一人と一人に戻っていくということで。こんな切ない気持ちをテレビから感じられるとは……と、このテキストもここでやはり終わるしかない。これを読んだ人も次の記事に行くしかない。結局そうするしかないんです。まあまた次回も。懲りずにぜひ。