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赤い公園のベンチを探して(1)

梅雨に入ったばかりの時期だったが、かなり空は晴れていた。暑い。
水を飲みながら、汗をかき
マスク姿で芋窪街道をのしのし歩いていた。
このときはまだ、すぐに見つかると思っていた…。

2021年5月28日。
赤い公園というバンドがラストライブを終え解散した。
コロナ禍、リモートワークを早々に終えた私は
食べ物を買い込み、そのライブをPCの前で観ていた。

最後だからくらいの軽い気持ちで
配信チケットを買ったのだが予想以上に面白く、
アルバムを遡り、
私はまた赤い公園を聴きはじめることになったのだった。
(昔ちょっと聴いていた)

そこからどっぷりと
メンバーのSNSを漁ったり、
ファンの方のブログを読むうちに、
赤い公園が立川の公園に寄贈した
赤いベンチがあることを知る。
その公園の近くにはカフェがあって、
手入れが行き届いていて…などと
ファンの聖地のような場所として
いろいろなことが書かれていた。

最初のうちは特にそこまで興味をひかれなかったが、
ラストライブから日が経つにつれて、
一度は立川のベンチを見ておかなければという
気持ちが強くなった。

2021年6月12日。土曜の休日。

午前中にふと立川へ行こうと思い立った。
しかし結構遠い。
都心に住んでいたため、なかなかの道のりに退屈するだろうと
読みかけだった文庫本をジーパンのポケットに突っ込んで
バッグなども持たずに(荷物を持つことがあまり好きではないため)家を出た。

中央線だか総武線だかに長々乗っていると、
ベンチをただ見に行くのもつまらないかなと思い始めていた。
そうだ、ベンチの場所を先に確認せず
「ふと歩いていたら出くわす」的な形にしよう。
私みたいなにわかファンたるもの
その方がなんか気取らない感じだし、
なんか散歩がてら見つけた感じで良いだろう。
どうせ赤いベンチなんて目立つところにあるのだからすぐ見つかるさ…
この予想が大幅に外れることなど思いもしなかったが。

立川駅についた。
一回来たことがあるような気もするが
来たことがないような気もする。
まあよくある郊外の駅のつくりだ。

出口はどっちだろうなんてやっていると、、待てよと。
うっかり駅の地図に
「ここが赤いベンチです」なんて
立川市が場所を書いちゃってるかもしれないと思った私は
地図を見ないで探すことにした。

この先を読む人に言っておくが、
写真は一切出てこない。撮っていないからだ。
だってこんなことを書くことも想定していなかった。
あれから8か月くらい経ってふと書こうと思ったのだからしかたない。
今、衝動的に私はPCの「メモ帳」でこれを書いているので、
文章一本のストロングスタイルでいかせてもらう。

ちなみに、このころ歩数計を毎日つけるようにと
会社の健康委員?からお達しがあり、歩数だけは記録があった。
とりあえずそれを貼り付けておく。

どうだろう。
私の歩くスピードが分かってしまって恥ずかしいが、そんなことはいい。
ベンチがまったく見つかっていないことはあんたでも分かるだろう?
とりあえずこの道程15kmほどを説明しよう。

立川駅に着いた私は公園の場所を検討し始めた。
まず北か南か、どっちに向かって歩き出すかだ。
そこで私を突き動かしたのは、
昔に転勤で住んださまざまな地方駅の光景。
それに基づき、公園は北にあると予想を立てた。

駅の南側は飲み屋街や商店街があり、
ごみごみしているだろう。
それに比べて北側なら役所があったり広場があったりして
子どもがのびのび遊んでそうな感じだろう。
そんな見立てだ。どこの地方都市とはあえて書かない。

北口を出て歩き始めた。
コンコースから降り、まずは大通りを北へ。
人出は結構ある。タワレコだったかがあった。
すると早速交差点に公園らしきものがあるじゃない。
ベンチがいくつかあり人が座っている。
後で調べたら立川北口公園と言うらしい。
これはすぐに見つかりそうだと思ったが
そこには茶色のしかなかった。芝生も少なかった。
ちらっと見たネット上の写真では
もっと緑があったような気がしたのだ。
まあいい、もっと北へ歩こう。

大通りはすぐに分岐となった。
お昼でお腹が空いていたこともあり
とりあえずお店を探すことも考える。
ここから先の大通り沿いにはなさそうだ。
そこで高校生の通学路らしき右の小道の方へ行くことにした。
が、ずっと住宅街である。何もない。
さっきの大通りに戻ろうと左へ進んだ。

すると比較的大きめの道に出た。
高松バイパスと言うらしい。とりあえず右へ。
ずんずん行くと腹が減って仕方がなくなった。
なにかないか、なにかないか。
と…全然なにもない!
途中公園らしきものがあったが、
マンションのものかなにかで小さめなものばかりだ。
パスタ屋さんがあったが
郊外のレストランは団体が多く
一人だと入りにくい。
もっと違う店は無いかと
芋窪街道というところを北上する。
なんだかおいしそうな通りだ。
途中にニッカホーム?のカフェがあったり
しゃれたマックがあったりしたが
なんか入りづらい感じで断念。

泉体育館駅というモノレールの駅まで来てしまった。
その日は暑くてもう歩くのはつらいと思っていたので
これで立川駅まで戻った。でなにかを食べて休憩。

さて、夕方近くになってきた。
これまでの整理と分析をしよう。
駅の北をずんずん歩いていったが
公園は小さなものしかなかった。
もう少し大きなものだとも思う。
また、ファンの方が行って写真を撮れるということは
そう駅からは離れていない場所だろうとも思っていた。
そうなると北ではないのかも…?
目標の再考を迫られていた。

とりあえず南口の方を歩くことに。
予想通り、ごみごみしていた。飲み屋がいっぱいある。
偏見ではあるが、日本全国南口はこんな感じなのかもしれない。
ちょっと歩いてみたが細い通りのオフィス街という感じで
なかなか公園らしきものはない。
これは今日はギブか…。そんなあきらめが頭をかすめた。

と、そのとき、
もしかしたら立川BABELはこのあたりなのでは?
という直感が働いた。
赤い公園がよくライブをしていたライブハウスである。
大体南口のごみごみにライブハウスはある(偏見すぎる)。
その直感は当たって、
見事ふと散歩がてらふとBABELを見つけた。
前に出ている看板を見てみると、何やら知らないバンドの名前が書いてあった。
赤い公園が終わったことは特に関係なく、通常営業のようだ。
一瞬、写真を撮ろうと思ったが人通りが多くやめた。

というわけで、ベンチは見つからなかった。
今度もう1回、立川に行くことにした。

そう言えば、立川の公園でBBQをしたことがあった。

(つづく)