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ラジオで採用されるメールの書き方

実は高まっているラジオ人気

 テレビが発明され、ネットが登場したことで廃れていくのではないかと思われていたラジオ。ところが意外や意外というべきか、しぶとくというべきか、ラジオはしっかり生き残り、むしろ他のメディアよりも親和性の高いメディアとして注目されています。

 その理由の1つとして、意図を持って投稿したメールが読まれる、ということがあると思います。この「意図を持って」というところがポイントで、SNSと違ってパーソナリティに選ばれ、読まれるということを前提として投稿し、それが不特定多数の人の耳に入るというのは、ほぼラジオの独壇場。

 つまり、「読まれたい」と投稿して、それが実際にパーソナリティ(実際にはディレクターだったり)のお眼鏡に適って「読まれる」というプロセスを経るというのは、やっぱり相当うれしいものです。

 というわけで本稿では、「ラジオで採用されるメールの書き方」を書いていきたいと思います。
 かなり生々しい部分もありますし、実名を拝借する方もいらっしゃるし、そうとう切り込んだ内容も書いていきますので、今回は有料で公開しようと思います。ちなみに僕自身が投稿したメールの採用率はほぼ100パーセントです。これは証明のしようもありませんし、サンプルが少なすぎて統計学的に有意でもありませんが、最後には実際のメールも例示しようと思います。

 ご興味がありましたらぜひ。

【初級:内容と書き方の基礎編】

・テーマから外れない

 あたりまえのようでいて、意外と忘れがち。
 番組があるテーマでお便りを募集しているときに、そのテーマを考えているうちに次第に頭がそこから離れてしまって、関係ない内容でメールを送ってしまうという。
 たとえば「テーマは海!」といわれれば、「海であんなことがあった、こんな人がいた」と考えていきますよね。ところがそのうちに、「そういえば薬局に日焼け止めを買いに行ったときにおもしろいリップクリーム売ってたな」なんて思い出してしまって、「パーソナリティさん、知ってました?ゴツいおっさんの顔が描かれたリップクリームがあるんですよ」などという話題にすり替わってしまう。
 そうなっちゃうともう、採用される可能性はゼロです。

・説明が必要になる言葉、事がらは避ける

 番組でメールを紹介するとき、パーソナリティはそんなに長い時間は割けません。それに、聞いている側も集中して番組を聞いているとは限りません。
 ですから、メールの内容を理解するために長々とした説明が必要になるような言葉、事がらは避けましょう。
 ラジオは基本的に、聞き流しのメディアです。もしかしたら、リスナーは断片的にしか聞いてくれないかも知れません。そこでリスナーに必要以上に集中を強いるようなメールは、まず採用されません。
 とはいえ、他の多くの項目についてもいえるのですが、これは番組の性格にもよります。比較的ゆっくりした展開の番組であれば、ある程度説明的な内容が入ってもいいでしょう。

・長さを気にする

 どんなにおもしろいメールでもそれが時間を食いすぎるのであれば、採用される可能性は低くなります。
 長いメールを紹介した場合、必然的に他のメールは読まれずに犠牲になることになります。紹介したメールがリスナーに受ける(よく「刺さる」といいます)かどうかはもちろん内容次第ですが、その率はある程度一定です。
 ですからラジオでは基本的にたくさんのメールを紹介したい。そのためにはあまり長すぎるメールは敬遠されます。
 しかしこれも前項と同じように番組の正確な、そのときのテーマによります。
 短いメールを次々と紹介する番組やテーマもあれば、長くアツいメールをじっくり紹介する番組もあるでしょう。ですからこの項のタイトルは「メールは短く」ではなく「長さを気にする」にしてあります。
 そのへんの見極めは、その番組を聞き続けて見つけていきましょう。

・同じ言葉の繰り返しは避ける

 文筆家でもなければ、人はそんなにたくさんの言葉を持ってはいません。だからなにかを伝えようとするとき、擬音語に頼ったり、同じ言葉を繰り返したりします。
 普段の会話ではそれで十分事足りるのですが、ラジオ番組で読まれるメールとなると話は別です。
 特に形容詞や副詞は同じ言葉を繰り返し使いがちです。「形容詞、副詞……、うっ、頭が……」というひとは、そんなにむずかしく考えないでください。ようは「強める言葉」や「様子を表す言葉」です。
 たとえば、程度のはなはだしいことを表すのに、「とても」や「すごい」をよく使います。これを繰り返し使うと途端に読みづらい、または稚拙な文になります。
 たとえば、

「すごい可愛いい犬がすごい勢いで走ってて、飼い主さんがすごい引っぱってるんだけどぜんぜん止まんなくて、すごい何度もドアにぶつかってたの」

という文は、「すごい」が多すぎて「すごい」読みづらいです。しかも文法的にも間違ってます。ただ、メールではよほどおかしくない限り文法的な間違いは気にしなくて大丈夫です。
 さて、この文の「すごい」を別の言葉でいいかえるとどうなるか。

「とても可愛い犬が勢いよく走ってて、飼い主さんががんばって引っぱってるんだけどぜんぜん止まんなくて、何度も何度もドアにぶつかってたの」

 この方がはるかに読みやすく、文として整理されている感じがします。この辺の修飾語関連は中級編でも説明します。

・漢字を開く

 ラジオに送ったメールは、番組でパーソナリティ(またはそれに準じる人)が音読します。そして生放送の場合、初見で読まなければなりません。
 そのときにどう読むのかわからない漢字があると、パーソナリティにとっては途端に読みにくいメールになってしまいます。ここでいう「どう読むのかわからない漢字」というのは難読漢字という意味ではなく、「どちらとも読める漢字」のことです。
 たとえば、「間」という漢字。「あいだ」と読むのか「ま」と読むのか、はたまた「かん」と読むのか、ぱっと見ではわかりません。
 普段僕たちはそれを文脈から判断しますが、一秒を争うラジオ・パーソナリティに生放送中にその判断をしろというのは酷な話です。また、パーソナリティは他にも気にしなければならないことが山ほどありますので、そういうところの負担はできるだけ軽減したいもの。だから漢字をあえてひらがなで書くようにします。これを、「漢字を開く」といいます。
 ただこれもなんでもかんでも開けばいいというわけではなく、読みやすさをいちばんに考えましょう。
 たとえば前の項であげた例文、「すごい可愛い犬が……」ですが、「可愛い」は開くことが多い漢字です。しかし前項ではあえて漢字にしています。これはもしひらがなで書いてしまうと読みにくくなるからです。
「すごいかわいい犬がすごい勢いで走ってて……」
 また、同じ文字、似た文字が繰り返し出てくると読みにくいということにも関係しています。この部分では「い」という文字が比較的多いです。また「犬」は漢字で書いていますが、やはり「い」という音が出てきますので、少しひっかかるところです。
 これは人間の脳の文字認識機能にも関係しています。
 人間は文字を一文字一文字読んでいるわけではなく、数文字のまとまり、または単語レベルで意味を把握しています。その例として非常に有名な例文があります。

「こんちには みさなん おんげき ですか。わしたは げんき です。 
 この ぶんょしうは いりぎす の ケブンッリジ だがいく の 
けゅきんう の けっか にんんげ は もじ を にしんき する とき
 その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば じばんゅん は
めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。」

 ぱっと見て、ちゃんと読めてしまいませんか?人間の脳はこのようにまとまりとして言葉を把握しているのです。
 ですので、まとまりとして漢字の方が意味を取りやすい=読みやすいのであれば漢字を使えばいいでしょう。

・ラジオネーム

 ラジオ番組にメールを出し始めると、ラジオネームに凝りたくなるもの。大好きなパーソナリティの心に残りたい、印象的なラジオネームを作りたい。よくわかります。ですが、これもよく考えましょう。
 そのラジオネーム、奇をてらいすぎていませんか?発音しにくくないですか?意味がわからなくないですか?
 心理学の言葉に、「単純接触効果」というものがあります。人は繰り返し目や耳にしていると、その対象に好意を持ちやすいというものです。
 あなたが番組にメールを出すなら、ラジオネームは同じものを使い続けましょう。そうするとメールを選ぶ人は、「あ、またこの人送ってくれてる」と目につくようになり、次第に採用率は高まります。
 しかしこのとき、それが読みづらいラジオネームだったりすると逆効果です。単純な、とはいいませんが、明快なラジオネームの方が目に留まりやすいでしょう。

【中級:読みやすさ編】

 初級編でもかなり読みやすさという点について触れましたが、中級編はさらにその上を考えます。

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