【ToDo⑨】教育支援センター様にご挨拶に伺おう
【前回の記事】
▼教育支援センターとは
近隣の各校へのご挨拶周りが終了したら、次に伺うべきは市区町村の教育支援センター様です。これからフリースクールを始めようとされている先生方の中には、”教育支援センター”という言葉にあまりぴんと来ない方が少なくないと思います。
教育支援センター(短く教育センターと呼ばれることが多いです)とは、どんな場所でしょうか。文部科学省は教育センターについて下記のように位置付けています。
教育支援センター(適応指導教室)とは、不登校児童生徒等に対する指導を行うために教育委員会及び首長部局(以下「教育委員会等」という。)が、教育センター等学校以外の場所や学校の余裕教室等において、学校生活への復帰を支援するため、児童生徒の在籍校と連携をとりつつ、個別カウンセリング、集団での指導、教科指導等を組織的、計画的に行う組織として設置したものをいう。(「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果令和元年5月13日文部科学省より)
教育支援センター(以下教育センター)という言葉よりも、適応指導教室という単語のほうが馴染みがあるという方はいらっしゃるかもしれませんね。学校の教室には足は向かないけれど、登校復帰を目指し、学校とは別の場所で訓練をしたいという小~中学生のお子さんが通う場所としても運営しています。(※適応指導教室は基本的に登校復帰を目指して訓練する場所であるという認識が一般的でしたが、最近では必ずしも登校復帰だけをゴールとしないという方針で運営されている適応指導教室も出て来ています)
皆さんがお住まいの市区町村名+教育センターと検索するとその活動や支援内容がわかりやすくHPに記載されていることもありますので、もっと詳しく知りたいなという方は、ぜひ近隣の教育センターについて調べてみてください。
↓【参考】埼玉県上尾市教育センターの情報HP
▼教育センターとフリースクールの連携は必要なの?
教育支援センターさんへのご挨拶の方法は、基本的には学校様へのご挨拶と同じ流れになります。よろしければ下記の記事「ToDo⑧近隣の学校にご挨拶に伺おう」を参考になさってください。
さて、そもそもの話になりますが、フリースクールと教育センターさんとの連携は必要なのか?わたなべの意見は「絶対ではない。けれども特殊なケースを除いては積極的に連携を図るべき」です。
理由はいたってシンプルで、「生徒・家庭・学校・支援者みんなにとってメリットしかない」からです。具体的に理由を説明していきましょう。
▽子どもの居場所はひとつじゃない
ひと昔前の世代ですとフリースクールと学校が双方または一方的に対立の図式を描いていたこともそう珍しくなく、生徒さんがフリースクールへの来室を選択した時点で、生徒さんのその後の居場所はフリースクール一択とってしまうケースも少なくありませんでした。
ところがここ数年で少しずつ状況も変わり、2016年9月に文科省が不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)において「不登校=問題行動ではない」という認識を明らかにしたあたりから、フリースクールと教育行政の距離感も変化してきました。
実際に最近では、不登校の子ども達が利用する教育機関数はフリースクール一択ではない場合がほとんどです。
私の運営しているおうちフリースクールでぃありすに過去在籍した生徒さん達の例でいうと、「現在通所利用している教育機関はフリースクールでぃありす上尾だけ」という生徒さんは2人だけで、その他の生徒さんはみんな「フリースクール週2回+学校の相談室週2回」とか「フリースクール週3回+校長室訪問週1回」とか「フリースクール週2回+教育センター週1回」という感じで複数の施設を併用している状況でした。私個人としては、この利用状況は大変好ましいものであるとみています。
勉強は少人数でみてほしいからフリースクール、人と話す練習は教育センター、大人数の友達との交流は学校の相談室というように、生徒さん達は目的を明確にして通っていました。特におうちフリースクールのように小規模のスクールですと、生徒さん達が出会える大人の数もお友達の数も少なくなってしまいがち。教育センターさんや学校さんでそのあたりの補完をして頂けることは大変ありがたいことでしたし、実際に生徒さん達にも、とても良い変化が現れていました。
ちなみに「施設併用していない子もいるのはなぜ?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかと思うので補足すると、生徒さんの心理的安全が守られない環境のまま変わらない学校さん・教育センターさんの場合には施設の併用は無理にはおすすめしていなかったからです。例えば、生徒さんが不登校になったハッキリとした原因が学校にありながら、学校側にその解決を図る意思が見えない場合などです。このケースにおいては全面的にフリースクールで支援を完結させてもらっています。また、生徒さんが転入・転出したばかりなど、慎重な順序を踏んで支援をする必要がある場合も、無理に施設併用のおすすめしていません。あくまでも生徒さん一人ひとりの意向と意思に寄り添った支援をしていくことが肝要です。
▽みんなでかわいがったほうが絶対にうまくいく
教育支援センターさんと連携を図るべきもうひとつの理由は実にウェットなもので、”生徒はみんなでかわいがったほうが大人も楽しいし生徒も伸びるから”です。
不登校児童生徒支援の鉄則は「生徒を押し付け合うでもない、奪い合うでもない、みんなで成長を見守る」ということです。これは私がフリースクールを始めたばかりの頃に、当時の生徒さんの校長先生からいただいたお言葉です。
実際に上尾市の先生方とは温かい関係を築かせて頂いており、月に一度ほど生徒さんの在籍中学校に訪問すると「●●くん、最近は相談室でフリースクールでもらった課題をやっています」とか「●●さん、この前部活に来ていて僕にも挨拶してくれたよ」とか「●●くん、教育センターでこんな遊びにハマっています」とか、嬉しい情報をたくさんくださいます。
子ども達も、「大人たちはお互いに仲良くやっているようだ」ということが何となくわかってくるみたいで、最初の頃は「学校の教師は嫌い!」と言っていたような子でも、徐々に学校の先生方ともコミュニケーションを取ろうとする態度が芽生えてきたりします。
もう少し前進すると、生徒さん達はフリースクールでも担任の先生や校長先生の様子を楽しそうに話してくれたり、教育センターでの出来事を教えてくれたりします。大人にしてみても、子どもの成長を分かち合い、喜び合える相手というのは多ければ多いほど教育の仕事は楽しいものです。
そんなわけで、教育センターさんについては可能な限り連携を図る努力をした方が大人にとっても子ども達にとってもいいというのが私の意見です。私などは大変不勉強で、フリースクールオープン当初は教育センター様へのご挨拶を行なわなかったのですが、その後大変後悔するにいたりました。なんと、上尾市教育センターの先生方のほうからご丁寧なご挨拶のご連絡を頂いてしまったのです。「上尾市の子ども達を共に支える者同士として力を合わせましょう。教育センターにできることがあれば何でも教えてください」というような内容でした。
このご連絡を頂いて以降、教育委員会の先生方にわざわざフリースクールまで足をお運び頂いたり、反対に私をセンターにお招きくださったりと、とてもいい関係を築かせて頂いています。これからフリースクールを立ち上げられる先生方におかれましては私のような失敗をなさらぬよう、ぜひフリースクールのほうから積極的に教育センターの先生方にご挨拶に行かれることをおすすめします。
ただ、中には結構”アレ”な教育センターさんも存在します。ご挨拶の電話をしたところ「フリースクール?何の権限があってうちに電話してきたんですか?」といきなりすごまれたこともありました。「御センターにご相談中の生徒さんが当フリースクールに入会されたのでご挨拶をいたしたくお電話いたしました」と伝えると「要件は何?それだけ?うちはフリースクールとの連携なんてしないから。うちの市の子の問題はうちの市の問題なんでよその人はおかまいなく。」と言って切られました…。いやいや、その問題をあなたの市に解決してもらえなかったから生徒さんはうちに来ることになったんでしょう…。このおじさんはあんまり不登校支援に全然詳しくないけどここに配属になっちゃったんだな、文科省の通知も読んでないんだなと理解しました。結局この生徒さんはその後教育センターには一切足を運ばなかったし、同様に学校のほうはもっと”アレ”だったので登校復帰もさせませんでした。こういう場合には無理に「連携連携!」と頑張らなくていいと思います。フリースクール利用だけでも、学習も心のケアも進路支援も足ります。
▼【こんなことしてます】教育センターさんとの連携いろは
前置きが長くなりましたが、ここからが教育センターさんとフリースクールの具体的な連携フローのご紹介になります。本記事の有料エリア内に、私が使用している「教育センター様用連携資料のひな形」もダウンロードできるように添付しているので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。
※「教育センター様用連携資料のひな形」は下記の有料記事内のものと同じ内容です。
▽月度報告書の共有
おうちフリースクールでぃありすでは、生徒さんのフリースクールでの学習・活動内容をまとめた報告書を上尾市教育センターさんにも共有しています。この報告書の内容をもとに、教育センターの先生方から生徒さんに声掛けをしてくださったりしているそうです。場合によっては担当のSSW(スクールソーシャルワーカー)さんもこの報告書を閲覧し、適切に支援に生かして下さっているとのことでした。うちに通っている生徒さんの支援を以前に担当されていたセンター職員の先生が報告書や学習プリントを見て「あの子がこんなに勉強に取組むようになったなんて…」と涙ぐまれていたことがありました。こういう場面に遭遇すると、つながれたバトンの重みを強く実感することになります。
こちらの報告書の教育センターさんへの共有は必ず保護者の方のご意向を確認してから行うようにしましょう。また、大切な個人情報になりますので郵送の場合には簡易書留等を、電子データで共有する場合にはパスワードを設定するなど、セキュリティー面には十分注意しましょう。
★【ダウンロードして使ってください】「教育センター様・学校様用連携資料のひな形」
では、私が教育支援センター様と学校様への報告用に使用している各書類のひな形を下記に添付いたします。必要に応じてダウンロード・編集してご使用頂いても結構です。
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