父が残した犬 出会い

実父が亡くなって今年で14年。
14年前、当時父は胃がんによる苦しい闘病生活を送っていた。

感受性が強い私は、父の具合が悪いと一緒に調子を崩してしまう。気持ちの切り替えが難しい日々。
父が亡くなる半年前の5月。天気の良いある日

「犬を飼おうか」

とふと思った。

「気晴らしに外を歩くのに犬を飼わない?」と私が言うと、父は快くオーケーしてくれた。

父は若い時から動物が好きで、一人暮らしの時も猫と暮らし、結婚して子供が出来てからも我が家は歴代犬や猫、鳥たちとの思い出であふれていた。

しかし可愛がっていた猫の失踪を最後に我が家に動物はいなくなった。その間10年。
久しぶりに迎えるペットになる。

私が想像していたのはペットショップで買える小型犬。病の父が散歩に行きやすいように。

でも父が欲しがったのは雑種の犬だった。
血統書付きの犬はあまり長生きしないから雑種がいいと言う。

そうと決まったらとその週末、子犬の譲渡会が開かれているスーパーの駐車場に行ってみた。

たくさんの子犬たちがゲートの中でひしめきあっていた。その中で一際目立っていたのは、元気に動き回り飛び跳ねていたクリーム色の雑種の犬だった。
私は(この子のお散歩はさぞ大変だろう)と思い、他の動きの少なめの優しそうな表情の犬を探した。
「あの犬にしよう」と隣で父が言った。
「え。どれ?」
「あの白い犬」
指差したのは、例の一際目立っていたクリーム色の犬だった。
「あの子はすごく元気だよ。飼えるかな?」
「大丈夫。あの犬にしよう」

そうして、迷うことなく決まった犬。その日のうちに譲渡の手続きを済ませた。

それから一週間ほどたった5月後半のある日、元気な子犬が我が家にやってきたのだ。

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