見出し画像

読書感想「あたしの一生 猫のダルシーの物語」

 昨日読了しました。ディーレディーの「あたしの一生 猫のダルシーの物語」。
 ある雌猫ダルシニアの一生を子猫から最期の日まで猫目線で綴られる大人の童話です。
 「一生」とタイトルにある以上、最期は覚悟して読まなくてはなりません。そしてプロローグがすべてを語っていると言って良いでしょう。

あのひとへの、あたしの愛        
それから、あたしへの、あのひとの愛      
あたしは、あたしたちが一緒に暮らした日々の思い出を       
あのひとの胸のなかにちゃんと蒔いておいた。          
あたしがいなくなったあとも           
その思い出があのひとをなぐさめてくれるようにね。
けっきょくのところ         
もんだいなのは愛ということ……。

ディー・レディー. あたしの一生 猫のダルシーの物語 (小学館文庫) . 株式会社

 ダルシーは飼い主の女性のことを「あたしの人間」と呼びます。犬と違って、主従関係は猫が上で人間が下。人間は猫の下僕です。猫を飼っているひとならその意味がわかるはず(笑)。ダルシーは、母親からそう教わってきた賢く気高い猫ですので、決して人間に媚びず、自分の思うように人間を動かそうとするし、そうできていると思っています。
 さまざまな事件が起きます。事故に遭って大けがをしたり、新しい猫がやってきて飼い主の気持ちがそちらに向くと嫉妬心が芽生え(本人はそう思っていないでしょうが)、ダルシーなりの抗議を続けたり、長い間主人が留守にしているときの地獄のような心細さだったり、実際にあることが次々と起きるので、そういうときの猫の感情はこうなのかもしれないと思わずにいられません。
 重要なのは、先ほど述べたようにダルシーにとって飼い主は下僕であり、自分よりも下の存在ですが、実際にはダルシーは深く飼い主を愛しており、常にそばにいて欲しいほど依存していていることです。自分が主のように思っていながら、本当は飼い主の女性なしでは生きられないほど彼女を愛しているということですね。
 だからこそ、飼い主が落ち込んでいたり、毎日泣いていたりすると、心配になってそばに寄り添おうとします。ありますよね、こういうこと。飼い主が悩んでいたり、辛いときには、負のオーラを察するのか、そばに寄ってきて慰めてくれたりしますよね。わたしも実際にそういう体験を何度もしています。それを猫目線で描いているわけです。
 物足りないなと思ったのは、飼い主側の人間がいつも一人であることです。ダルシーと飼い主は一七年間一緒に過ごすのですが、その間出てくる人間は飼い主と獣医だけでした。飼い主が結婚して同居人数が増えたり子供ができたりすると、ダルシーの反応はどうだっただろう、と思わずにいられません。それも実際にはよくあることですからね。

 今回は、最期が悲しいですが、読みやすくて、猫好きの人にはお勧めの一冊を紹介しました。

 それではまた。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?