詩「我に問う」~詩集「悪魔に乾杯」
「我に問う」
視えていたものが視えなくなるのと
視えなかったものが視えるようになるのと
どちらを恐れるか
後者だ
正体を知っているものを失うのと
得体の知れない何かを手に入れるのと
どちらを恐れるか
後者だ
慣れ親しんだこの世界から消えるのと
未知の世界に新しく生まれるのと
どちらを恐れるか
後者だ
健全なる自らの身体を失うのと
健全なる知己を失うのと
どちらを恐れるか
後者だ
誰も一顧だにしない死と
英雄的な死の
どちらを恐れるか
後者だ
残酷で狂気に満ちた真実と
優しさと正気に満ちた虚構の
どちらを恐れるか
後者だ
針と糸
どちらを恐れるか
後者だ
黒と白
どちらを恐れるか
後者だ
最後に問おう
朝と夜のどちらを恐れるか
もちろん、朝だ
陽の光ほど恐ろしいものはない
擦り切れた詩集から最後の一行がこぼれ落ちた
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