見出し画像

マイナンバーカードに関する私見

 先日、高齢の母親のマイナンバーカードをやっと作成した。区役所まで行くことができないから役所が定期的に実施している訪問サービスを使って自宅でやっと作成したのだ。
 驚いたことに五人もやってきた。実働していたのは二人で、母や私とやりとりして書類を作成する方と、写真を撮る方。残りの三人はおそらく地方公務員だろう。実働の二人はこのサービスのために雇われた「公務員の資格を持たない」方たちだろう。なぜなら、最初から最後まで何もせず椅子に座っていただけの三人は、二人が作成した書類を最終的に確認し、そのときだけ上司面していたからだ。
 何たる非効率!再鑑が必要だとはいえ、ただ金魚の糞みたいに実働部隊の後をついていって書類を確認するだけが公務員の仕事か!しかも三人も!はっきり言ってあきれ果てた。これが日本のお役所の現状だ。マイナンバーカードを実効的に活用できるデジタル社会に必要な公務員とはとても思えない。
 私は決してマイナンバーカード否定派ではない。総背番号制が嫌だとか、所得が権力に筒抜けでいずれ没収されるとか、陰謀論含めて前時代的なアナログ礼賛思考には加担しない。
 またマイナンバーカード否定派には、セキュリティ面を憂慮して、個人情報が漏れるという理由をもっともらしく挙げる人が多いが、そういう方々に聞きたい。スマホやネットサービスのあちらこちらで使うパスワードの使い回しを避け、ニ重認証をきちんとやった上で言っていますかと。私は1passwordで管理しておりすべてランダムパスワードだ。
 そもそも日本人はセキュリティ意識が低い。だから大抵の人はパスワード管理はいい加減だし、個人情報なんて現状既にだだ漏れだ。マイナンバーカードにケチをつける以前に、自分のパスワード管理を見直せと言いたい。
 だから基本的にはマイナンバーカードに反対する理由が私にはなかったのである。
 しかしだ!そういう私が唯一気に入らないのが、健康保険証の廃止である。そもそも母にカードを作ったのは来年から健康保険証が更新されなくなるからだ。高齢者はカードを使うのが大変だろうと思う。運用がうまくいくとは到底思えない。
 だが私が懸念するのは高齢者ばかりではない。私も含めてすべての患者が今後不便かつ不利な立場に立たされると思うからである。
 健康保険証をマイナンバーカードに統一することによって、医療側は患者の医療情報を一元的に把握できる。医療側にとっては便利だろう。しかし患者にとっては迷惑極まりない。
重複診療を知っている方ならわかると思うが、マイナンバーカードに統一されたら恐らくそれができなくなる(医療情報提供に同意しなければ可能かもしれないがマイナンバーカードを使う意味が全くなくなる)。
 どういうことかというと、病気でA病院に行ったものの、どうもそこの医者とあわない、診断を信頼できない、他の病院で診療を受けたい、という場合、今はA病院に何も言わず、自分で探して別のB病院にかかることができる(A病院に行っていることは内緒にしておく)。これは重複診療といって薬剤などが重複する危険があるため本来禁止されている。しかし面倒な病にかかったことがある人ならわかると思うが、患者にとっては便利で、ときには極めて有効である。なぜなら最初に行ったA病院がヤブ医者で、後から探したB病院が名医だったりすることがままあるからだ。もちろん最初から良い医者にかかることができれば言うことはない。
 ところがマイナンバーカードに統一されると重複診療であることがわかってしまうからこれができなくなる、と私は思う(使っていないからわからないが、そうでなければカードを使う意味がない)。
 そのためにセカンドオピニオン制度がある、と言う方は、費用のことをわかっていない。セカンドオピニオンに保険はきかない。高額な診療費をとられるから簡単には使えないのだ。しかも、医者によっては良い顔をしない。そりゃそうだろう。自分が信頼されていないわけだから。
 もちろん面と向かって「他の病院に行きますから紹介状を書いてください」と言えば良いのだが、セカンドオピニオンよりさらに言いにくいし、医者との関係は悪くなり、医者によっては書いてくれず、勝手にしろと放り出される場合もある(自分の経験からそういうことが昔あった。医者は病気を診るのではなく患者を診よと言われるが、そういう善意の医者はなかなか少ないのが悲しいかな現状である)。
 自分にあった名医を探すには、重複診療を使うしかないのだ。
 それができなくなりそうな未来。医者にとっては便利だけど、患者にとっては極めて不利な未来がやってくる。
 私がマイナンバーカードそのものには反対しないが、保険証廃止に強く反対するのはそのためである。今からでも良いから、マイナンバーカードと保険証を併用できるようにしてもらいたいと切に願う。

#マイナンバーカード
#重複診療
#公務員は何をやっとんねん
#高齢者
#セキュリティ
#個人情報

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?