[ショートショート] 白い靴下
白い靴下がない。
朝起きてからどこを探しても見当たらない。
欠伸をしながら机の下やソファの下を見てみた。
書棚と壁の隙間も覗いてみた。
まさかと思って冷蔵庫を開けて中も確認してみた。
テレビの裏側や天井からぶら下がっている照明の上も手探りで確認してみた。
玄関際の傘立ても覗いてみた。
ゴミ箱の中も探ってみた
やはり見当たらない。
仕方がないのでわたしはパジャマ姿のまま椅子に腰掛けて冷蔵庫から取ってきたペットボトルの水を一口飲んだ。喉にしみて痛い。新聞をとりにいって温かいコーヒーをわかそうとも思ったが、気が乗らない。テーブルの上の写真立てに目をやった。白い靴下とわたしが写っている。写真立ての脇の花が枯れかけている。
また欠伸が出た。今日は休日だ。何も慌てる必要はない。
二度寝するか。
わたしはよろよろとベッドに向かい、乱れている掛け布団をめくった。
「おや?」
白い靴下がいた。
「ホワイトソックス!」
白い靴下を履いた黒猫がわたしをじっと見て鈴の音を鳴らした。
「そうしよう」
わたしはそのまま横になる。
彼も寄り添うように横になる。
そのままもう一度眠りにつく。
彼の温かみを太ももに感じる。
もう目覚めなくてもいいや。
わたしは深い眠りに落ちる。
恐れ多くも、初めてシロクマ文芸部さんに参加させていただきます。
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