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触媒雑記帳(1)~かたりすとの日常

一 初夏


今朝、郵便受けから朝刊を取り出しふらつきながらエレベータに向かう時、マンションの玄関ロビーから「よいしょよいしょ、暑い暑い」という高齢女性の声とたどたどしい靴音がした。案の定、脚が遅いわたしに追いつき昇りのエレベータで一緒になると即座に話しかけてきた。
「朝からこう暑いと、日中は外に出られへんわ」
背中にリュックを背負った女性が額に汗をうかべて話しかけてきた。八〇代というところか。
「暑いですか。わたしは寒いですけど」
気分がすぐれなかったので少し意地悪な気持ちになり言ってみた。実際、わたしは未だにパーカーを羽織っているし、暑さもあまり感じないし汗もほとんどかかない。脂肪が少なく新陳代謝がうまく機能していないのだろう。
「寒いんかいな。こっちは汗だくやけど」
「それは健康の証ですよ。水分とればいいんです」
「もうお迎え待ってるんやけどな」
エレベータの扉が開いた。わたしは軽く会釈すると先に降りた。
「お迎え」って、あと一〇年いや二〇年は生きそうだけどな。
そう思って吹き出しそうになった。

二 布団


先日通販で五〇〇〇円くらいの薄い低反発マットレスを買って一〇日ほど使っている。わたしのベッドは昔買ったかなり上等の畳ベッドで脊椎と腰椎に色々疾患を抱えていたから柔らかすぎるマットレスはあわず、敷布団をニ枚重ねて丁度良い状態が十数年続いていたのが、この数年で体重が二十キロ近く減少し、脂肪が薄くなって股関節その他の骨が硬い敷布団に当たって褥瘡ができてしまった。皮膚科で手当はしているものの一向に治らないのは布団が硬すぎるせいだということになり低反発マットを購入したのである。
最初敷布団の上に置いて寝てみたら確かに骨が当たる部分は楽なのだが身体が沈んで硬い布団に慣れている自分には心地が悪い。そこで、ニ枚ある敷布団の間に低反発マットレスを入れて3枚重ねで使用している。もう一〇日になるが、ちょうどよい硬さになるし、直接敷くとウレタンなのでおそらく真夏は暑くて仕方ないだろうから、このやり方は結構正解なのではないかと思われる。
ただ、本音を言えば、昨年夏に入院したときの病室のフランスベッドのマットレスは最高だった。さすがに介護用ベッドのマットレスだけあって、ちょうどよい硬さで寝返りも打ちやすく、褥瘡も傷まなかった。ただ、さすがにまだ買えないよね笑。
健康であれば、日本人は畳に上質の敷布団と清潔なシーツ、これが一番だと個人的には思うけれども。

三 ベジタリアン


ベジタリアンになっても二年になる。
好んでなったわけではない。食欲の低下から始まり、嚥下能力が弱ったこと、味覚異常(醤油やソースをなめてもヒリヒリ辛く感じる)など複合的要素がからまって食べられるものが限られてしまったためだ。
今食べているのはキウイやパイナップルなどの果物と片栗粉でとろみをつけた野菜と半熟卵とパンひとかじりくらい。牛、豚、鶏はもちろん魚も食べられない。四六時中テレビで放送しているグルメ番組などは昔から嫌いだったが、最近はトンカツとか見るだけでも気分が悪くなるので野球中継と映画くらいしかテレビは観ない。
しかしおもしろいことにこれほど偏った食事を二年も続けているにも関わらず、血液検査上の栄養状態はそれほど悪くないのである。確かに亜鉛が不足しているとか低血圧とか色々あるにはあるが、アフリカその他の国々の餓えで苦しむ人々に比べれば、はるかに栄養状態は良いのである。それでなぜ痩せるかといえば単に量が足りないからだ。なのでできるだけ食べるように努力はしている。
ところでベジタリアンの話しに戻るが、こんな食事で栄養状態がキープできるという事実から、やはり人間は野菜とせいぜい酪農食品だけで十分活発に活動できることが身を持ってわかった。
愛するクリッシー・ハインドはもちろん、ジェフ・ベックもポール・マッカートニーも多くの有名ミュージシャンがベジタリアンである。
別に他人に押し付けるつもりはさらさらないが、ベジタリアンを身を以て証明できたことだけ報告しておく。


これは、わたしが思いつくままに綴った雑記です。


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