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窓の外側は愛おしい程にけなげ

私達二人は、毎日の様に練習を繰り返した。


風が激情する寒波の中も、雨がだだ漏れる豪雨の中も、私達は屋根の無い練習場で時間が許す限り練習をした。


志は高く、常識を内側から破裂させる様な技を会得することが理想である。


その為にはやはり、二人の呼吸が狂いなく合わさることが何よりも重要なことだと考えた。


ピアノを連弾し、テニスでダブルスも組んだ。


今昔、だれも成し遂げていない記録と技の完成。

ひとつの当たり前をも覆す。





技を会得するまでは歩みを止めない。

体力はいくら消耗しても構わない。

気力が満ち溢れる限り、二人は技を極め、
研磨し失敗という概念が見当たらない世界を目指した。






思いたった初心から幾度の季節が巡ったのであろう。


後ろ指を刺されながらも、失敗を繰り返し
漸く辿りついた、極みの果てに堂々と鎮座した。





二人の呼吸は寸分の狂いもなく、
失敗がつけ入る余白もなくなった。



もう私達にはひとつの常識は通用しない。
ひとつの言葉が意味を見失って彷徨うのをみた。




二階のベランダから落とした一滴の神聖な雫は、
アスファルトの上にどっしりと構え、天を仰いだ私の右目に、ご無沙汰な雨を待ち望んだいた木根の様に滲み込んでいった。


勿論だが一滴の雫さえも地面にじっとりと染み込むことは、私達の間ではもう二度と見ることは出来ないだろう。













その日、










二階から目薬








という意のままにならない歯痒い言葉は私達には全く適応しない。もはや違う意味へと生まれ変わったのだ。

ひとつの言葉は意味を変え、
私達はこの世の常識の外側に行くことができた。


二階から目薬は、二人だけには完璧を意味する言葉に生まれ変わった。



地球で唯一の非対象者、
これで二人は、常識の外側に住む特別な世界の住人になれたのだ。



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