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とにかくやってみる、ということを辞めようと思う

久しぶりに書きたいなと思いPCに向かいました。
この1年、ありがたいことにたくさんのガラスを制作し、多くの方にお届けするために制作に取り組む日々を過ごしていました。

さて。タイトルにありますが、今日は私の作家仕事のありようについて見直してみたいと思っています。
何事か?と思われるかも知れませんが、誰かに聞いて欲しいと思うことでもありますので、特に同じようなお仕事をされている方や私の作品にご興味のある方、これまでの制作活動を見守って下さっている方に読んで頂けますと嬉しいです。

オンラインショップメインでの作品販売

私は現在、ほぼ全ての作品をオンラインショップで販売しています。
始めた1番の理由は委託で販売してもらえるお取引先がまだまだ少ないので、自ら販路を開拓しようと思ったことです。
ガラス工房でスタッフとして働いていた頃に登録したiichiやPinkoiをはじめ、
現在はBASEのショップを中心にほぼフルラインナップをご購入頂けるようにしています。
よく同業の人に質問されるのは、「大変じゃない?」ということ。
確かに、商品写真や加工は自分のスタイルを確立するまでにかなりの間試行錯誤を重ねてきました。
写真撮影に関しては、ここ1年で自宅に作った撮影スペースがとても気に入っています。

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撮影した後、GIMPで明るさ(トーンカーブ)と色温度を調整、トリミング、必要があれば少しだけ修正(シャープ調整や汚れ取り)をしています。
まとまった時間は必要ですが、作品の記録にもなるし楽しい作業なので苦にはなりません。

ただ、顔が見えないオンラインショップでのお買い物はやはり
お客様とのコミュニケーションに気を遣います。
フルラインナップご購入頂ける、と書きましたが常に在庫がある訳ではなく、正直なところ在庫を作る余裕はないのでいつも受注制作という形で対応させて頂いています。
在庫を抱える余裕がない理由でもありますが、私には自分の工房がなく、
工房を時間でレンタルして作品を制作しています。
共同工房は多くの作家さんが利用しており、工房の仕事の都合もありますので毎日借りるということは難しく、制作のペースは比較的ゆっくりです。
オンラインショップでは受注後約20日〜1ヶ月でお届けと記載してあるのですが、
“購入可能=在庫がある、あとは発送するだけ。”と思われる方も少なくはないのではと思います。
実際、複数のECサイトをご覧いただいた上でご注文を頂いたお客様が「こちらのサイトでは売り切れだったけどこちらでは購入可能だったのですぐに手に入ると思い、プレゼント用に注文した」と仰られたこともありました。
実際はどのサイトで買って貰っても20日くらいの余裕を持って発送出来るように制作の予定を組んでいます。
その時は私のサイト管理不足だったので、最短で制作したのですが…メッセージを送っていなかったらお客様を困らせていただろうなと思うとひやひやします。
このようなこともあるので、ご購入頂いた際には出来るだけ直接お客様にメッセージを送るように心掛けています。
たくさんの注文を抱えてしまうと何が何だか分からなくなりますし、制作で疲れた後にこういった作業をするのは負担に思われる作家さんも少なくはありません。
ですが、ご購入頂いて嬉しい気持ちは大きいですし、直接嬉しいご感想を頂くことで次の制作意欲へと繋がる貴重な場だと思っています。

さらに難しいなと感じていることは、様々なお問い合わせに対する対応の仕方です。
カジュアルにインターネットでコンタクトが取れるとはいえ、お問い合わせを頂くならばせめてお名前を(ニックネームのようなものでも)記載して欲しいと思うことがしばしばあります。
ギャラリーで直接お話する場合はそのような必要はないのですが、ネット上でのやりとりは私にとっても不安要素が多くあります。
「どんな方かな?」「以前から作品を知って下さっていたのかな?」など、そのお客様に向き合いたいという思いがある中、
お名前も分からず「これは〇〇ですか?」とだけポンっと投げられるのは、どう答えたものか…と考えてしまいますし、あまり気持ちのいいものではありません。
私からも心を込めてお返事が出来るようにして頂けたら、と思います。


日々の暮らしと制作活動のバランス

前述したように、私は自分の工房を持っておらず
以前働いていた共同工房をレンタルして制作をしています。
スタッフとして働いていた頃から制作活動を少しずつ拡大していったのですが、週5日+α(隔週で出勤もしくはスタッフ制作日)+レンタル(自分の作品制作)、というほぼ休みなしの時代は仕事にも精一杯だったこともあり
毎日疲れ果てていました。
同年代のスタッフと一緒に働いていたので、工房は職場というより寮のような、学校のような、家のような…色々な面でずいぶんお世話になり
楽しく過ごした思い出がたくさんあります。
しかし3年4年目になると蓄積した疲労で集中力が低下し、怪我をしたり胃腸の調子が悪くなったりしていました。
自己管理をする余裕もなかった当時の自分には、もうちょっとちゃんと出来たやろ!と全力でつっこみたいです。
その代わりにガラスの技術は少しずつ確実に向上していっているのを肌で感じていました。
存分に制作させてもらえる貴重な環境でしたので、いつか卒業して作家として生計を立てていこう、その思いで必死でした。

工房に就職してからちょうど8年が経ちました。
現在はフリーランスで、自由に注文を受け制作時間を確保して仕事をしています。
一昨年には入籍もしたということもあり、ゆっくり休息をとったり好きなことをして過ごすなんでもない時間を、一層大切にしたいと思うようになりました。
健康や栄養にも目を向ける心の余裕が出来た、これは私にとって大きな変化です。
当たり前に出来ていたことまで忘れていた10年間。
大げさかもしれないのですが、今の暮らしは私にとってかけがえのないものだと感じています。

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花サボテンが開花して、毎朝見るのが楽しみです。

休むも働くも全て自分次第である今、気をつけたいことはON/OFFのバランスだと思います。
スマホにいつでも通知が来ることで、すぐにご対応しなければと過度に気にしすぎるのはよくないなと自分に言い聞かせています。
真面目すぎる性格とよく言われ、いつの間にか私は真面目なんだからやらなきゃ、と私自身を縛りつけていたのかも知れません。
そうしてなんでもうまくこなせると、いつの間にか思いこんでいたのでしょうか。続きます。

出来る、出来ていると思っていたはずのこと

先が見えない緊急事態宣言下で、私はより一層オンラインでの作品販売に励んでいました。
昨年秋の展示会をきっかけに、これまで透明ベースだった作品から全体に色を使ったカラフルな作品を多く作るようになりました。

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制作する側からすればシンプルに色を使っただけの作品なのですが、
真新しさと色合いが好評だったのか、まとまった数の個別注文を頂きました。

実は、これまではこのような色ガラス材料を多く使う作品は意識的に避けてきました。
理由は、材料のコストがかかるため失敗したくないにもかかわらず、トラブルの起きやすい方法であるからです。
正直なところ、私自身ちょっと派手すぎるかな?自分なら食卓には取り入れないかな。とも思っておりましたので、ご要望がなければ作らなかったかも知れません。

実際に作ってみると、何よりもまず可愛くて魅力的な作品になったなと自分でも嬉しくなりました。
出来るだけ綺麗に作って皆さまにお届けしたい、と強く思いました。慣れるまでには少し時間もかかりましたが、可能な限り不安要素(気泡や歪み、適切な厚みやサイズ感)をクリアしてご注文をこなすことが出来るようになってきたと思います。
ただ、トラブルが起きやすい技法であると言う認識は作り手側の言い分で、お客様にはそのことを説明してもしきれないということが生じてきてしまいました。

私なりの精一杯の努力と、手仕事の作品ゆえの不可避な部分。
それを理解してこの作品を好きになってもらいたいと思う反面、
それは妥協ということになるのだろうか?
その姿勢は、よりよいものを追求していないということになるのだろうか?
とはいえ常に完璧なものは作れない。それは開き直りなのだろうか…。
時に全て自分の未熟さだと思って感傷的になり、落ち込み、期待に答えられず申し訳なく思ってしまうことがありました。

また、多くの仕事を引き受けていく中で私の作りたいものがぼやけていくように感じてしまうこともありました。
他人の期待に応えようとするあまり、自分の技術の範囲外の作品を頑張って作ろうとする。
どうしてなんでも出来ると思っていたのか、冷静になれば判断出来たはずなのにと後になって思います。

出来るはずといった自分に対する過信は捨てて、
じっくりと丁寧に取り組む。
相手にもしっかりとガラスの技法や作品、価値について理解してもらうことが必要だと感じました。
勇気を持って、出来ないと言うべきだった。
そしてひとりでも多く、それでも私の作品を選んでくれる人に
精一杯のものをお届けしたいと改めて思います。


とにかくやってみる、ということを辞めようと思う

春になり、本格的にガラスのシーズンがやってきます。
清涼感があるテーブルウェアは季節を感じるのにぴったりですよね。

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可能な限りご対応させて頂いてきた特注のオーダーですが、
しばらくの間おやすみさせて頂こうと思います。
現在取り組んでおりますお仕事に集中しますので、
グループ展や個展でぜひ作品をご覧頂けますと幸いです。
(BASEショップでの通常の作品販売はこれまでどおりに行います!)

最後に。
吹きガラスで作品を作ることが出来る作家は少数です。
私もその一翼を担う者として、もっと作品の魅力を伝えていけたらいいなと思います。
手仕事の美しさが伝わるような作品を作れるよう、これからも精進していきたいと思います。もちろん、日々の暮らしを楽しみながら。

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まだまだ遠出は出来ませんが、美術館に行きました

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澤田 和香奈/wakana sawada GLASSWARE
最後まで読んで下さりありがとうございます。 これからも応援よろしくお願い致します。