大手電機メーカーでの4年間 下

私の最初のキャリアは日本電気(NEC)という大手電機メーカーでスタートしました。最終的には4年弱で退職したのですが、当時を思い出しながら3回に分けて書きたいと思います。

日本電気では半導体のプロセス開発や生産技術のエンジニアとして就職しました。なぜこの選択をしたのか、なぜ退職しようと思ったのかについてお話したいと思います。

5.2回目の転職活動と内定

 転職を決意してからはいくつかの製造業や半導体工場を持つメーカーで面接を受けました。この頃は本当に積極的に動いていたのは記憶しているのですが、具体的に何をしていたかといわれるとあまり思い出せないのですが、有給休暇を取得することを頑張ってた記憶があります。
 覚えていることは転職活動をし始めている頃に、ちょうどNEC山形の鶴岡300mmラインでの90nmプロセス立ち上げ支援の話も出てきていました。当然今まで何度か出張立ち上げ支援を経験していた私にも3か月程度の出張支援の話が出てきましたが、転職活動をしたいことに加え、自分たちが立ち上げた90nmプロセス用の設備と異なるメーカーの設備を鶴岡300mmラインに導入したことで立ち上げに苦しむのが目に見えていたので部長や事業部長からの「鶴岡300mmライン立ち上げにいかないか?」というお言葉をさらっとお断りしました。
 また当時は、転職していく人も多く、同期の仲間とは普通に情報交換や退職者がどこに転職したとか、転職した同期と会って話もしたりして、他社の半導体業界に転職するか、それとも半導体と関係ない業界に転職するかをかなり真剣になやんでいました。
 転職活動の中で募集があった一つにトヨタ自動車がありました。都内での面談から始まり豊田市の本社での2次面接を経て無事に内定をいただくことができました。この頃は私もまだ、品質保証、品質管理の仕事についてはあまりよく理解しておりませんでしたが少なくともハイブリッド自動車をはじめとして電子ユニット化が自動車の主流になっていくことは間違いないと確信を得ていたことと、トヨタ自動車自体の給与水準の高さに魅力を感じていたのを今でも覚えています。

6.退職

 トヨタ自動車から内定をいただいて退職を決めるまでは本当に早かったと記憶しています。およそ2か月ほど前には社内のシステムより退職の申請を出し、上長面談、部長面談を行いました。
 上長も部長もNECエレクトロニクスの現状を踏まえ、私が退職することを快く受け入れていただけました。また、退職を届け出た当時は私はNECファブサーブへ出向している立場でしたので、当然出向元のNECエレクトロニクスの事業部長との面談もありました。
 事業部長はNECエレクトロニクスの現状と課題、どうすれば会社が良くなっていくのかなど非常にありがたいお話を伺うことができ、私の新たな出発を快く応援していただきました。いまだに感謝しております。この当時の事業部長は、ルネサスエレクトロニクスになった後もご活躍されていることをトヨタ自動車に転職してからも風の噂で聞こえてくるほど素晴らしい方でした。
 あとは出向先のNECファブサーブの役員とか言う人と面談しましたが、一度も見たことない偉そうな人がお決まりの文句をブツブツいっていて、とてもじゃないですがNECエレクトロニクスの事業部長とのお話を思い出せば、ただの時間の無駄だったと感じてますし、まったく名前も思い出せないくらいです。
 基本的な手続きはほとんど終わって、あとは事務的な引継ぎなどを行うだけですが、今でも思い出すのはその当時の上司です。
 有給休暇は十分に余っていて手続きが終われば出社する必要などないのですが、なぜか「週1日程度出社しろ」とか意味の分からないことを言ってくるような方でした。当時はまだ世間のルールがよくわかっていなかったので仕方なく従って出社しましたが、先輩や同期には「何しに来たの?」的なやり取りも多く、出社しても一日中ぼーっとしているか、新しい職場に向けての勉強や同期や先輩方との雑談で一日を消費していました。いまなら確実に退職日まですべて有給休暇を取得して消え去りますね。

 大手電機メーカーでの4年間の総括となりますが日本電気への新卒入社およびNECエレクトロニクスへの転籍、そしてNECファブサーブへの出向と、非常に密度の濃い4年間でしたが、半導体のプロセスエンジニアの仕事はとても楽しく、この4年間で統計的な手法や考え方、データのとり方、設備の立ち上げ方、様々な改善や関連工場への長期出張支援立ち上げなど、今でも私の仕事のベースになったと考えています。
 とくに半導体のように大量のデータを取り扱って良品条件や統計的に異常を見つけたり、ネットワークでつながった設備から設備状態を集めて解析したりと、すでに2005年の段階で今でいうIoTによる設備データの取得と、ビックデータの解析の基礎を実践していたのだと思います。
 20年近く昔のことで、多くの同期や先輩方とお会いする機会はありませんが、4年間という短い期間で育てて頂いた先輩方には今でも非常に感謝しています。NECエレクトロニクスがもしあの時に半導体プロセスの先行開発を中止していなければ私はきっと今でも半導体に直接かかわっていただろうなと思います。


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