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【ワクセル講演会レポート】石井哲也氏講演:トンガから学ぶ日本~南の王国を通じて自国を思う~ 7/6(火) 20:00-@オンライン開催!

ワクセル(主催:嶋村吉洋)は、7/6(火) 20:00、前トンガ大使の石井哲也(いしいてつや)氏による、オンライン講演会を開催いたしました。石井氏は、外務省に入省後、中国南京大学、米ハーバード大学への留学を経験。外務省では主に地域(アジア局)、分析(国際情報局)、経済協力(経済協力局)等の分野でご活躍されました。海外では中国(北京、上海、香港)、豪州、フィリピン、オランダ等主にアジア太平洋地域の大使館や総領事館で勤務。2017年から2020年まで在トンガ特命全権大使を務められました。

日本の代表として海外に長く滞在した石井氏より、トンガという国はどんな国なのかという点から、トンガと日本の意外な共通点、そしてトンガを通じて学ぶ日本の姿についてお話いただきました。

本レポートではその講演会の報告をいたします。

嶋村吉洋氏主催ワクセル講演会:講演会の様子

■講演会の概要

本講演は、次世代を担う起業家の輩出と人財育成に取り組む嶋村吉洋が主催する、ワクセルによるオンライン講演会です。
講演会のテーマは「トンガから学ぶ日本 ~南の王国を通じて自国を思う~」です。

講演会は、以下のプログラムで進行いたしました。

●はじめに
●自己紹介
●トンガはどんな国?
●両国関係と現地大使館
●トンガを通じて日本を考えてみる

■講演会の詳細

自分の見る場所によって、見えるモノの形は変わってくる


石井氏は、まず円すいの茶筒を取り出して講演を始められました。

上から見れば丸。
しかし、横から見ると四角。

人によって、丸、四角と主張が異なりますが、それぞれ嘘を言っているわけではありません。
少し位置を変えると見え方は変わってくるのです。知らないうちに位置が変わっているかもしれません。

石井氏は『自分の「立ち位置」と「見る視点」によって見え方は変わることを認識することが大事』と言います。

そのほか、海外から日本を見るように「一歩離れて物事を見る」こと、相撲の取り組みにたとえて「モノは止まっているようで力が反発しあっていることがある。わずかな力の差が大きく変化を招くことがある」といった点が本講演を通して伝われば嬉しいとお話いただきました。

嶋村吉洋氏主催ワクセル講演会:説明に用いた茶筒を持つ石井氏の写真

トンガとはどんな国なのか?

冒頭で物事をフラットに見ることと人の意見に耳を傾けてみることの大事さを伝えて頂いたあとに、トンガがどんな国なのか、概要や特徴について説明頂きました。

トンガの一般的なイメージとして「ラグビー」「相撲」「青い海」などはよくいわれるなかで合っているものですが、「名前からアフリカと思った」「一年中とても暑い国」といった、現実と違うギャップもしばしば耳にされてきたようです。季節によっては寝る時に毛布が必要な時もあったとのことです。

■トンガの概要

●面積:720平方キロメートル(対馬とほぼ同じ、東京都23区が630平方キロメートル)
●人口:約10.4万人(東京都23区が約1000万人)
●首都:ヌクアロファ
●民族:ポリネシア系
●言語:トンガ語、英語
●宗教:キリスト教

南太平洋に位置する島国で、長崎県対馬とほぼ同じ面積だと言います。日本からの直行便はなく、ニュージーランドのオークランドやフィジーを経由して行くのがこれまで一般的だそうです。但し、残念ながら現在の社会情勢の下では、日本との往来はなかなか難しいようです。

トンガの特徴:3つの「キ」

トンガの特徴を説明する上で、3つの「キ」をご紹介いただきました。
石井氏が発案したものですが、「少し苦労したが、我ながら結構気に入っている」と冗談を交え、会場に小さな笑いが起きていました。

1.国王(キング)
→南太平洋で王様がいる国はトンガだけです。

2.キリスト教
→アジア・太平洋地域では、実は国王とキリスト教の組み合わせはトンガのみです。

3.気候変動
→海面が上昇すると、島の地下水に流れて塩分濃度が上がります。トンガでは、主に飲用の水は雨水が使われますが、生活水は地下水を使っているため、気候変動による影響を受けやすい現状があるようです。

その他、トンガの特徴づけとして「誇りある独自性・穏やかな国民性」や若者の雇用に関する「地場産業の課題」、未だコロナ―フリーである「トンガでのコロナの扱い」など、現地のエピソードを織り交ぜながらお話いただきました。

嶋村吉洋氏主催ワクセル講演会:講演会の撮影の様子

トンガと日本の意外な関係性

続いてトンガと日本の関係性について、大使館でのご経験を踏まえてお話し頂きました。

「心情的・伝統的」、「経済的・政治的」、「文化的・国民的」に分け、主に以下の点を説明していただきました。

●トンガの王族と日本皇族は良好な関係である
●日本からトンガへのODAなどの支援も活発である
●算盤(そろばん)やラグビーなどで日本と強い関係がある

現在の天皇陛下は皇太子の時代に、トンガへ3回訪問されたことがあります。「親子関係の類似点」「年配者への敬意」「謙虚であることが美徳」などが日本とトンガは似ていて、どことなく親近感を感じるそうです。

また、トンガには算盤の授業があること、ラグビーが国民的スポーツであると同時に日本のチームを熱く応援していること、日本のラグビーチームではトンガ人選手も活躍していることなどもお話いただきました。

トンガを通じて日本を考えてみる

最後のトピックは、この講演の本題でもある「トンガを通じてみる日本」についてです。

●「トンガ人や日本人はどこから来て、どこへ行ったのか?」
「トンガ、日本ではいかに文字が広まっていったか?」
「トンガ国民はキリスト教徒に、日本では神仏が共存したのはなぜか?」
「トンガ及び日本がともに列強による侵略を免れたのはなぜか?」

トンガの島を「通過点」としてかつて大海原を転々と移動した南太平洋の人々、一方で、「終着点」として地理的にどこから来たかに関心が集中する日本列島の我々の祖先。同じ島国でもそこに共通性とともに異なる国民性もあるのではないか。もしくは、日本人の中でも日本を「通過点」としたトンガ人のような人々もいたのではないか。石井氏は、そういった興味深い疑問を投げかけます。

また、トンガも日本も、列強による侵略を免れたという共通点とその理由もお話いただきました。
両国ともに、既に国内の統治が比較的しっかりしていたという内的要因、そして世界的な主要航路から外れ輸出品に乏しかったという外的要因が合わさって列強からの侵略を免れたという共通点があるのではないか。
日本の場合、「国を開こうとする力と国を閉じようとする力が反発しあっていた状態」だったとします。

そこにわずかな力の差でも積み重なることで、開国という大きな変化を招く。
石井氏はその点を強調され、講演のプログラムを終えました。


■質疑応答
あっという間に石井氏のたくさんのトンガの文化について語って頂いた講演は終わり、最後は質疑応答の時間になりました。

質問は参加者がチャットで投稿していく形式です。さっそく参加者から質問がありましたので一部取り上げます。

参加者「自分のいる場所を俯瞰するために大事なことは?」
石井氏「大事な視点は、自分の位置が相対的であること、自分も動いていることを意識することが大事。自分と相手で見えているものが違うことがわかると、ものの形がよく見えてくると思います。」

参加者「日本以外で食や文化などの違いなどを経験してきたと思うが、現地の方と関係性を結ぶために変えたことはあるか?」
石井氏「先入観を持たないこと。いろいろな人と出会う中での新しい発見を楽しみにして、想像で話すのではなく実際にコミュニケーションを取りながら理解していくことが大事です。」

参加者「日本のほうがインフラなどは進んでいるかと思うが、トンガと比べて心の豊かさはどうか?」

参加者からの最後の質問に対して、石井氏は以下のように締めくくりました。

石井氏「日本経済は根強さを持っているとは思うが、少子高齢化、人口減少等の大きな課題に直面している。今までと同じことをしていたのでは維持が難しくなってきている。日本人はより外との交流を広げる中で、明日の日本を見据えた準備が必要。今はコロナの問題があるが、特に、若い人々には内外のいろいろな人との接点を通じて、目で見て、耳で聞いて、自分で判断をしてほしいと思う。」

たくさんの国、文化に触れてきた石井氏は、先入観を持たずに、自分の目で見て確かめたことを大事にするメッセージを参加者に届けました。

嶋村吉洋氏主催ワクセル講演会:ワクセルの色紙を持つ石井氏


■石井哲也氏 プロフィール

嶋村吉洋氏主催ワクセル講演会:石井哲也氏プロフィール

1955年横浜生まれ。東京外国語大学卒。外務省入省後、中国南京大学、米ハーバード大学に留学。本省では主に地域(アジア局)、分析(国際情報局)、経済協力(経済協力局)等の分野で、また、在外では中国(北京、上海、香港)、豪州、フィリピン、オランダ等主にアジア太平洋地域の大使館や総領事館で勤務。その後、地球環境戦略研究機関(IGES)に統括ディレクターとして出向し、2017年から20年11月まで在トンガ特命全権大使を務める。同年12月退官。趣味は博物館めぐりと現地料理を味わうこと。

■SOCiAL BUSiNESS COMMUNiTY「ワクセル」
ワクセルは、コラボレートを通じて、人に夢を与え続けていくソーシャルビジネスコミュニティです。健全に学び、チャレンジし、成長し、達成し続ける人が次々と集まるコミュニティを作り続けます。
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