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映画日記#2『ビフォア・ザ・レイン』

今日は、1996年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得したミルチョ・マンチョフスキ監督の『ビフォア・ザ・レイン』を鑑賞した。
奇遇なことに、昨日鑑賞した作品は『ブラック・レイン』で『レイン』つながりだが、あまり意味はない。
明日『レインマン』を観る予定も無い。
東京国際映画祭で最新作である『カイマック』がワールド・プレミア上映され、非常にコミカルでブラックユーモアの効いた作風が面白かったので、過去作を観ることにした。

この作品は、マケドニアを舞台に、ギリシャ正教徒とアルバニア系ムスリム住民の緊迫した対立関係を、3話構成で、時間を交錯させながら描いた作品だ。

1話目はマケドニアの修道院の少年が主人公で、2話目はロンドンの女性とその愛人のアルバニア人男性を中心に描き、3話目はアルバニア人男性が地元に戻った後の様子を描いている。

最後まで観終わった時に、この3話が見事につながる!
物語を螺旋階段のようにつなげることで、終わりの無い民族同士の争いを示唆しているのだろうか。
民族対立の根深さは、その地域に住む人たちにしかわかり得ないものではあるが、そこに住む人たちは、常に争いの火種を待ち続けているように感じた。
もちろん全員が争いを望んでいるはずはないが、一部の声の大きい者たちが、常に争いを生んでいて、その争いに巻き込まれる人たちがいるということは決して忘れてはいけない。

この映画では、争いは「愚か」であると明確に突き付けていると思った。

あと、ショットが見惚れてしまうほどに美しかった。陰影の青さ、からっとした大知の壮大さ、黒々とした雨雲など、どのシーンを切り取っても写実的で素晴らしかった。

『カイマック』とはテーマの重厚感が大きく異なるように感じたが、群像劇の巧みさは突き抜けている。
観ていて爽快なほどの、物語同士のつながり方。
他の作品も観てみよう。

こういう映画を観ると、世界の歴史に興味を持つ良いきっかけにもなる。
マケドニアから北マケドニアに国名が変更された経緯、主人公のアレックスの意味など。
非常に意義のある映画だ。

(写真はFilmarksより引用)


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