美味しい物は毒
今の時期、家の裏手の木に夏蜜柑が生る。たわわに実るそれを、姑がせっせと何日かに分けて採り、食卓に持って来てくれるのだけど、いかんせん数が多い。そこで今回も知り合いに配ったりしたのだが、まだまだ食卓は黄色の果実に埋め尽くされていて、それを眺めるうち「ゼリーにしよう」と思い付いた。
粉ゼラチンを買って来て、絞り器も無いのでギュウギュウ手で絞る。何度か作るうち、絞り易い切り方や絞り方のコツが解って来た。一緒に取れた果肉はそのまま、種だけを丁寧にすくい取って、果汁のみのゼリーを作る。
酸味が勝るが、適当な歯応えもあるぷるぷるのゼリーは、そのまま食べるのとまた違い美味しい。何より大量の夏蜜柑がどんどん捌けるのがうれしい。下の方は一部カビが生えてしまった実もあったので、早目にゼリーに取り掛かって正解だった。
ゼリー作りもそろそろ終焉を迎えそうだ、と思う今日、少し前からあたためていた「全卵フィナンシェ」を作る事にした。買っておいたアーモンドプードル、小麦粉、砂糖、バター、本来なら白身を使う筈の卵をそのまま使って作る。分けるのが面倒なのと、全卵で美味しければそれでいいから、と試作してみたかったのだ。
焼き上がったそれは、外側の焦げ目が香ばしく、色目はやはりくすんだ感じのフィナンシェになったが、美味しい。そして大量の砂糖を使ってあるこのお菓子が舌に触れた途端、その甘さに改めてびっくりした。夏蜜柑そのものだけのゼリーを食べ続けていたので、砂糖の甘さの刺激に驚いたのだ。砂糖は中毒性がある、というのも頷ける。コーヒーと一緒に外側のカリカリと、中のしっとりした生地とアーモンドの香りを楽しんだ。
砂糖の摂り過ぎは良くない、と頭で解っており、身体もそれを摂りたがらないので、私はこういう食べ物を常食する事は無いが、何も知らずに「お気に入りの食べ物」として食べる人も多いだろう。
身体の機能をあれこれ使っていれば、取りたい栄養も本当に必要な物を必要なだけ、という風になる。脳が喜ぶ、麻痺する食べ物は周りに沢山ある。美味しそうな見た目、香り、パッケージや宣伝文句。お洒落で洗練されて無くても、生きた食べ物そのものがやっぱり美味しいし、身体にしっくり来るんだようなぁ、と残り少なくなった夏蜜柑を見て思う。
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