傍流音楽記⑨つれづれのつれづれ

ゆくえしれずつれづれのことを書きます。

とはいえ、つれづれに関する記憶はかなり断片的なものになっていて、一本の線にまとめるのが難しいです。思い出したことを書いていきます。

ゆくえしれずつれづれは2015年から2021年まで活動していたアイドルグループです。僕は旗揚げメンバーでもある「◎屋しだれ(ふたまるやしだれ)」さんと「まれ・A・小町」さんのファンでした。2015年年末か2016年の年始(確か帰省していました)「だつりょく系げきじょう系」の文字列を観て、スポークンワードとスクリームを軸にした曲を聴き、これは僕の為に結成されたグループに違いないと思い込み、ライブに行くことを即決しました。

初めて見たライブは心斎橋VARON、つれづれはしだれさんと小町さんの二人体制でした。「書いてきた遺書を破り捨てる」という衝撃のオープニングに始まり、柵に登って客を煽りまくるパフォーマンスに僕は心から感動しました。あと単純に、曲が本当に良かったです。それまでにラウドロックを経由しているグループやスクリーマーがいるグループは多数観ていましたが、叙情ハードコアの流れを丁寧に掬っていたのはつれづれくらいだったように感じました。僕はつれづれに完全にハマり、群青(つれづれのファンの呼称)を自称するようになりました。

つれづれへの傾倒は日常生活の端々に影響を与えました。僕は趣味で落語をするのですが、着物を買い替える際に迷わず群青色を買いました。確か手ぬぐいもつれづれのものを使っていた時期があります。冬はつれづれのマーチのトレーナーで寒さをしのぎ、夏に台風が来ると聞けば窓につれづれのマークの形にテープを貼っていました。ライブを観るために全国に行きました。梅田の茶屋町で行われた野外ライブで極寒のなか裸足で吠えまくるメンバーを見てこれはホンモノだと感動しました。仕事終わりに新幹線に飛び乗り、名古屋まで日帰りでライブを観に行ったこともあります。つれづれはたまに信じられないくらい良いライブをすることがあり、目が離せませんでした。

僕は自分の顔が本当に嫌いで写真に写りたくないのですが、何とかしてつれづれにお金を払いたくてチェキ列にも並びました。どうしても耐えられなかったので撮ってもらったチェキの自分の顔は刳り貫いていました。あと、しらふでは並べなかったので大量に飲酒していました。大量に飲酒した状態でしだれさんに「俺はつれづれに金を落としたいんだよ!」と言ったことがあります(覚えられていました)今思い返すと顔から火が出る思いです。

「アイドルに認知される」を実感したのもつれづれが初めてでした。上記のような言動を繰り返し、ライブに出入りしていたある日、ライブハウスでつれづれの皆さんとすれ違う機会があり(ハロプロや坂道を推している方には信じられないでしょうが地下では日常的にある光景です)その際に「あっ、ウォーリーさん」と言っていただきました。ぼくは冗談ではなくその場に立ち尽くしてしまいました。衝撃の体験でした。一生忘れないと思います。

「生バンドの素晴らしさ」を知ったのもつれづれが初めてだったように思います。もともとバンドが好きで音楽を聴き始めたので今日はバンドセットだ!と思う度に嬉しかったです。特につれづれのバックバンドはギターを弾きまくる傾向にあり、酒が大いに進みました。また観たいです。

いちばん印象に残っているライブは、2017年の夏の魔物in Kawasakiでのステージです。つれづれは野外の一番小さいステージでの出演、どうやるのかと思いきや一曲目から飛ばしまくり、客の上に登り、芝生の上を走り回り、側転し、ファンもそれに応えて観たことないくらい巨大な円陣を組んでいました。ほとんど暴力みたいな狂騒の中で全員が笑顔でした。間違いなくベストアクトだったと思いますし、あの光景は未だに脳裏に焼き付いています。

しだれさんの脱退以降あまりライブに行けなくなってしまいました。どうしてもしだれさんと小町さんの二枚看板を期待してしまう自分がいて、それが辛くて最後まで観ることができませんでした。つれづれを追いかけていた時期はちょうど人生でいちばんキツかった時期と重複していて、そこを乗り越えられたのは柵の上で吠えまくる皆さんがいたからだと改めて強く思います。あの日の自分の直観を信じ、群青になって良かったです。

2016年に発売された1stアルバム「ポスト過多ストロフィー」はアイドル史に残る、いや別に残らなくても僕が一生聴くので構わない、とにかく名盤だと思っています。叙情派ニュースクールにも接近した「ポストカタストロフ」はリードトラックとして完璧だし「インディースキン」からアンセム「六落叫」への流れが美しくて何回聴いても飽きません。全編に渡ってメンバーのスクリームが冴えているところも聴きどころのひとつです。この記事を見てつれづれを知った方、ぜひ聴いてみてください。


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