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tatoo

Kは鳶職をしながら独学で彫り師を目指し始めた。
Kは絵が上手だった。
実際のもの、空想のもの、どんなものも。
そしてモノづくりに長けていた。
マシーンも見よう見まねで電化製品を改造して作ってしまう。

最初は自分の体の自分で彫れる場所の至る所に。
そして私の体。
私は喜んで体を差し出した。
私で役に立てるなら使って欲しい。
役に立ちたい一心だった。
そしてそれが私を優越感に浸らせた。
なぜか?
それはKの周りにいる女たち、これからKと出会うであろう女たちに、これが出来るのは私だけだという烙印。
そしてKがどこかに行くのではないかという恐怖を常に抱いていた私の心を強くさせるため。

なんの知識もない状態だったから、墨汁が良いのか、ポスターカラーか?など複数の体に良くないものを体に入れていった。
一つ目は左肩。
当たり前のように化膿し色はまだらに抜けていった。
それは今でも皮膚はボコボコのケロイド状になったまま。

そこから本当の彫り師から情報を得るようになり、入れて欲しいという後輩にタダで入れていくようになった。
そのうち人伝に「お金を出すから」と言ってくる人が増えてきた。

そしてKは地元の暴力団に呼び出されることになる。
刺青はヤクザのものという意識が根強く、その刺青で収入を得るのなら、いくらか組に入れないと我慢してはやらんぞと。
私はKの身に何かあるのではないかと落ち着かなかった。

友人たちも含む周りの心配な気持ちをよそに、Kは1人で暴力団の事務所に行き、自分のはヤクザ入れ墨ではないし、ヤクザには入れない。
だから組に売り上げを入れるつもりもないとキッパリ断り、ヘラヘラと帰ってきた。

それから私の背中にもキレイなモノが彫られた。

この頃には、ちゃんとしたタトゥーマシーンを購入し、全て体に害のないものへとなっていた。
ケアの仕方もしっかり勉強して、少しずつ確実に彫り師へと進んでいった。

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