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『肉山』光山英明 ×『ABF Capital』熊原充志氏 特別対談

おはようございます。光山です。

来月11月15日で創業から丸21年で22年目となります。前回の肉noteでもお話した通り、いち個人商店が22年目を迎えることができたことは、たくさんのお客さんに恵まれたこと、周りの方々からのサポートやスタッフの頑張りがあったからで、まさに“神風”が吹き続けてくれた結果だと思っています。

今回の記事はABF Capital熊原氏との対談となりますが、創業20周年を過ぎてから、私自身が全面に出て店舗展開をしていくというよりは、裏方に回り、サポート側の立場として、これから可能性のあるお店、若手のシェフの支援をしていきたいという想いがある中で、熊原氏も“日本初”の飲食店特化型ファンド事業という形で飲食店経営者をサポートされており、双方の想いが合致した上で、私も出資者兼アドバイザーとして活動させていただいております。

ABF Capitalはこれまで大々的なPR活動を行ってこなかったので、ご存じない方もいらっしゃると思いますので、今回は熊原氏に創業経緯や、現在の事業内容、今後の飲食業界への想いなどを聞かせてもらいました。

(インタビュアー:小関健太




▼ 光山英明との出会い、ABF Capital熊原氏との関係性


ー 光山さんと出会ったきっかけを教えていただけますでしょうか。

熊原氏:出会いのきっかけは共通の知人からのご紹介になります。昔一緒にお仕事をさせてもらっていた仲間に新しい飲食業界向けのビジネスをすることを相談したら「それなら、まずは肉山の光山さんに会った方が良い」とアドバイスをいただいたので、ご紹介いただいたという経緯です。

光山氏:初めてお会いしたのが、新宿のカフェだったと思うんですけど、いわゆる熊原さんがやられているようなファンドに出資するという機会がこれまでなかったので、経営者、投資家としての身元調査とか、ファンドとしてのルールもかなり細かく設定されているんだなという印象でしたね。今までは面談して翌日に「今から1000万円振込みますねー」というライトな感じの出資しかしてこなかったですからね(笑)

熊原氏:それも凄いお話ですけどね(笑)

ー 熊原さんは元々飲食業界でお仕事をされていたのでしょうか。

熊原氏:それが全く飲食業界とは異なる経歴なんです。東京大学の在学中にJAXA(宇宙航空研究開発機構)で宇宙、特にブラックホールの研究をしておりまして、そこから新卒でBCG(ボストンコンサルティンググループ)という経営戦略コンサルティングファームで仕事をさせていただいた後に、アドバンテッジパートナーズというファンドに転職をしまして、企業を買収して、成長支援をした上でバイアウトまでサポートするという業務を行っておりました。

事例としてよく挙げられるのが、コメダ珈琲です。ここまでの規模になる前に株式取得をしてから、現在のような全国規模の珈琲チェーン店になるまでの成長戦略を策定と、事業拡大をサポートしたことは有名ですね。

ー 宇宙の研究をされていた熊原さんがどのような経緯でコンサルティングファームやファンドのお仕事に就くまでに至ったのでしょうか。

熊原氏:私が元々東大の研究者だったということもあり、私の周りには、とんでもなく頭の良い研究者ばかりに囲まれてお仕事をさせていただいていたのですが、実際の研究者の労働環境は厳しくて、長時間労働の割に、驚くほどの低賃金だったんです。勉強という競争の中で、当然努力もした上で、受験という勝負に勝ちづづけて、東大に入学した先の仕事がこれで、一方、商社や広告代理店に就職した友人達が新卒の頃から高給取りになっていく現状に疑問を抱き、「才能があって、努力も出来るけど、埋もれている人たちのサポートがしたい」と思ったのが、ビジネスの世界へ進むきっかけです。

当然宇宙の研究をしていた人間が、すぐに誰かをサポートできるわけはないので、ビジネスを学ぶという目的でBCGに入り、金融や法律などを学ぶという目的でアドバンテッジパートナーズに入って、BCGの同期で同じ志を持つ仲間で現在のABF Capitalの創業に至ったという流れになります。

▼ ABF Capitalとは~創業の想い~

ー 日本初の飲食店支援特化型ファンドを立ち上げた経緯について教えてください

熊原氏:先ほど申し上げた“才能はあるけど、まだ日の目を浴びていない方”は世の中にたくさんいると考えておりまして、その中で我々は飲食業界に着目しました。料理人やソムリエの方々(以下、投資対象者)です。実は世界では料理人はスーパースターで、地位も名誉もあり、お金もめちゃめちゃ稼いでいる人も多いのですが、日本はまだそこまでに至っていないという現状があります。

でも一方でミシュランの数で言ったら日本はぶっちぎりでナンバーワンなんです。このギャップは非常にもったいないと考えていまして、日本は食文化は世界から高く評価されているのに、社会的地位は低くて稼げない業界のままだと、これからの若い子達が料理の世界を目指さないと思ったんです。

今後は子どもの数も減少していきますし、料理人やソムリエを目指す人の割合も減っていくわけですから、今から飲食業界にも大谷翔平のようなスーパースターがいて、社会的地位もあり、しっかり稼げる業界にしていかないと日本の食文化自体が衰退していくのではないかという危機感があり、その想いを事業という形にしたものが飲食店特化型ファンドです。

日本が世界に誇れるものって恐らく片手で数えられる程度で、アニメやゲームなどは代表格ですが、食文化も入ってくるはずです。その食文化を支えている料理人やソムリエの方々の平均年収が日本全体の平均年収より下という状況はありえないと思っているので、我々のファンドがこの現状を変えるという強い想いで日々活動しています。

▼ ABF Capitalの具体的な事業内容


光山氏
:私みたいに出資したり、必要であればアドバイスをするお店もありますけど、ABF Capitalは一つの飲食店に対して、必ず担当者がついて、打合せを重ねた上で、経営上どこまでサポートするのかもお店ごとにルールを決めてやっていただけるし、例えば5年後に売却したいのであれば、そういった出口の戦略まできめ細やかにサポートしてくれますよね。

熊原氏:我々のファンドは具体的には、お店を持つ初期段階から支援をしておりまして、光山さんのような投資家の方々からお預かりした資金をお店の開業に投資していくという形で活用させていただいております。恐らくこの記事がリリースされる頃には10店舗目の支援先の案件がまとまる予定です。ちなみにABF1号ファンドは2年前に設立して、そちらに光山さんに出資いただいております。


ー 現在までに10店舗目までが最終的な契約に至っていると思いますが、これまでにどのくらいの候補者の選考をされてきたのでしょうか

熊原氏:有難いことに100件以上のお話がありましたが、投資決定したのは10件ですね。書類選考の時点でお断りすることもありましたし、本格検討に至ったのは23件で、ギリギリまでメンバーで考えた上でお断りさせていただいたケースもあります。


ー ABF Capitalのファンドの特長を教えていただけますか

熊原氏:私の前職も含め、一般的なファンドは会社を買収して、価値を高めて、株式を誰かに譲るか、上場させてたくさんの方々に渡しにいくかの選択になります。我々は投資対象者ご本人の希望に沿った形ではありますが、必ず最後は本人に株式をお返しするというやり方で事業を進めています。

独立時のお金の支援もやりますし、オープン後のお店の経営支援もさせていただいて、最後はお店も投資対象者のものになるという仕組みでやらせていただいているのですが、今のところ、この仕組みでやっているのが、日本で我々ABF Capitalだけです。

ー 競合ではないかもしれませんが、飲食店に出資されている他の会社との違いはございますか

熊原氏:独立を支援されている会社はたくさんありますが、仕組化されていなかったり、案件としてバッティングした会社でいうと、開業支援の時点で、完全にその会社の傘下のお店にしてしまい、投資対象者に対しては業務委託で報酬をお支払いするという形なので、我々とは出口の部分で、投資対象者のお店になるという部分が異なります。

▼ ABF Capitalと光山英明の生み出すシナジー


ー 光山さんがこのビジネスモデルを聞いて、実際に携わっていてどのように感じているのかを教えてください

光山氏:これまで個人商店の規模感で飲食店経営をやってきて、熊原さんが携わる規模感のお店を資金的にも広さ的にも、自分がやることはないと思っていたから、間接的なサポートにはなりますが、一番の感想としては私のこれまでの経験が必要とされていることを「誇らしい」と思っています。ドルチェや高級レストランとかは今後も絶対自分ではやらないと思いますし、多彩なお店を見れるということは自分にとっては勉強になる部分も多々ありますね。

熊原氏:光山さんのアドバイスはうちの会社としても一番参考にさせていただいておりまして、試食のご協力だけではなく、投資対象者の面談時にもたくさんの助言をいただいています。面談の際に候補者の顔を見た瞬間に「あいつアカンな」と言われた時は驚きました(笑)

我々はコンサルティングファーム出身なので、理屈を積み上げるのは非常に得意としている部分ではあるのですが、理屈以外のセンスや直感などは経験も浅いので、光山さんの長年の経験を元にいただけるアドバイスには、いつも本当に感謝しています。

ー 投資対象者の方々の選考基準を教えていただけますか?

熊原氏:我々は一ヵ月単位の事業計画を6、7年分策定するので、数値的な部分も判断の材料にはするのですが、一番は才能と想いがあるかどうかですね。その才能をチェックするための項目は多く設けているのですが、一番わかりやすいの項目の一つは、その方の経歴ですね。過去にお仕事した方からどのような評価を受けてきたのかは参考の一つになります。これは上から目線ではなく、我々も投資家の方々から大切なお金をお預かりしているので、投資に値するかどうかをたくさんの項目を材料に慎重に判断させてもらっています。

光山氏:最初に面談してから本契約に至るまでにかなり時間をかけて選考されていますよね。

熊原氏:投資対象者から本当に急ぎでという要望があれば2.3カ月でという短期で対応することもありますが、1年ぐらいかけて選考させていただくケースもありますね。

ー 現在までに投資を行ったお店からはどのような声がありますか

熊原氏:飲食業界全体への貢献を考えてくれているとか、個人では達成できない想いを汲んで伴走してくれているなど、ポジティブなお声をいただけていますが、お金周りや料理以外のことを気にすることなく、料理だけに集中してお店を営むことが出来ているという声は我々としても一番嬉しい声ですね。日々の資金繰りのことから、対外的な契約書の作成まで、本当に何でもサポートできる体制を整えているので、料理とお客様に集中できる環境だと思います。

▼ ABF Capitalが思い描く飲食業界のビジョン

ー 熊原さんが事業を通じて目指されていること、飲食業界全体に対するビジョンを教えてください

熊原氏:厳選させていただいていることもあり、投資という形で我々が直接サポートできるお店の数は限られていると思いますが、ABF Capitalの認知がさらに広がれば、才能がある料理人がどんどん独立して活躍できるようになるわけですから、既存のお店としては、人材の流出を防ぐために、料理人の待遇を改善しなければなりません。そうやって飲食業界全体の労働環境全体の底上げに波及効果をもたらし、素晴らしい人材が気持ちよく働ける業界にしていければ良いなと思っています。これが我々の中期的な目標です。

さらに長期目標としては、冒頭に申し上げたように、飲食業界のスーパースターを輩出できるお店の開業支援をすることです。スーパースターが増えれば、業界全体の待遇も改善され、稼げて、子ども達の憧れとなり、なりたい職業ランキングで上位にくるような仕事になるはずです。ABF Capitalは飲食業界の才能を花開かせるためのインフラ的な役割を担い、社会の仕組みの一つとなるべく、今後は業界内でもより一層存在感を高めて参ります。

光山氏:昔はホテルのシェフなんかは、高い報酬をもらっていてゴージャスでカッコいいイメージでしたけど、今はホテルの値段が上がっている割には待遇がそれほどでもないということを聞きますからね。

ー 最後に光山さんからこれからのABF Capital熊原氏に期待することを教えてください

光山氏:先ほどの投資実行に至るまでの面談数を聞いて驚いたんですけど、今実際に動いているお店が10店舗弱で、まだスーパースターと言える人材の輩出は出来ていないと思うので、これから10、20店舗とABF Capitalさんが支援する上で、名前も広がっていくでしょうし、お店の中から、スーパースター人材が出てくることを望んでいます。私自身も東京や大阪だけでなく、今後は地方の良い料理人を見つけてこれるように裏方としてサポートしていけたら良いなと思っています。

ー 本日は長時間に渡り、お話を聞かせていただきありがとうございました。


▼「肉note」編集チームより

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今回の記事の感想や飲食店開業や投資のご相談も受け付けておりますので、以下のフォームにご入力いただければ幸いです。いただいた質問や相談は、順次回答していきます。


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