内倉真一郎写真集「私の肖像」

「内倉真一郎写真集 私の肖像」
 慌ただしい毎日の連続の間に写真展も終わってしまったが、内倉真一郎さんが新しく「私の肖像」という写真集を出版したので少し思った事を書いてみたいと思う。私は、発売前に公開された動画で、表紙にキラキラ光る箔が押されているのを見て、思わずジェケ買いしてしまったが、それは今までの彼の作品の質の高さもあってのことだった。
 写真集を見て改めて、内倉真一郎さんは、肖像写真家であると思った。彼の過去の作品「肖像」で、黒バックの前に浮かび上がる被写体の写っている作品の前に立った時に言葉に出来ない何かドロッとした灰汁みたいなものを感じたのを覚えている。なんだったんだろうと後々まで考えていた私は、それが内倉真一郎そのものだと思った。その後に製作された「人間図鑑」であは白バックに替わったが、私の考えは間違っていないと思った。
 「私の肖像」この作品の中には、たくさんの人の肖像写真がセレクトされている。「肖像」に使われている肖像写真も収録されている。連写撮影という今の写真機だからできる機能を使い何百枚の中からセレクトされたその一枚は、決定的瞬間とは違うどこか間を外した瞬間に内倉真一郎を見る事ができて面白いと思った。そして「肖像」で感じたドロッとした灰汁に変わってサラッとした旨味に変わっているように思えた。
 最後の一枚に彼のセルフポートレイトがセレクトされていたが、彼のデビュー作を瞬時に思い出した私は、ロバートメイプルソープを敬愛している内倉の初心を忘れない心を見た気持ちになった。
 是非この作品を手に取ってみてほしいと思う。
 
「私の肖像」内倉真一郎 5,000円+税 赤々舎

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