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4人に1人が「年収の壁」で就労を制限 今すぐ児童扶養手当の増額や所得制限緩和を

(フリーライター 田島 望)

▼働きたくても働けない…

シングルマザーの4人に1人が児童扶養手当や奨学金などを受給するために就労を制限した経験があることが、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都)の調査でわかった。最低賃金が上がる中、各種手当や給付の所得制限の見直しが追いつかず、働きたくても働けない人が多いことが見て取れる。一方、物価高の中、低く抑えた収入と児童扶養手当だけでは最低限の生活が成り立たず、食事がまともに取れない状況にあることも浮かび上がった。児童扶養手当の増額や所得制限、住民税非課税ラインの緩和は急務だ。

調査は同団体のメールマガジン会員約1万人を対象に2023年12月中旬にWEB上で実施。20歳以下の子がいる世帯2393人から有効回答があった。

11月中に収入を伴う仕事をした人は85%、うち2つ以上の仕事をした人は13%だった。雇用形態はパートが37%、正社員等が34%、派遣社員、アルバイトが各7%、非常勤職員が3%。11月の就労収入は12・5万〜15万円が最も多く、半数が月収17万5000円未満だった。岸田内閣は財界に「賃上げ」を要請しているが、昨年と比べて賃金が「上がった」は19%にとどまり、「変わらない」が55%、「下がった」も26%いた。収入の不足を補うために副業をしている人も337人に上った。宿泊業、飲食サービス業が40人と最も多く、次いで介護職19人、その他サービス業17人。キャバクラ、ホステスなど夜の仕事も8人いた。

給付金や手当、奨学金をもらうために、所得制限を考えて就労収入を抑えたことがあるかどうかを聞いたところ、26%が「ある」と答えた。その際、年収の上限をいくらと考えているかを聞いたところ、住民税非課税ラインで、高等教育無償化、緊急小口資金の特例貸付の返済免除、臨時給付金受給の条件にもなっている「年収204万円」という回答が最も多く38%、次いで、児童扶養手当全部支給の「年収160万円」が24%、児童扶養手当一部支給の「年収365万円」が14%だった。

▼子どもに「3食」食べさせたい

一方で、家計は火の車だ。11月に支払った食費は「3万〜3万5000円」がピーク。子どもの数にもよるが、概ね「2万5000〜4万円」の範囲に収めようとしている家庭が多い。前年12月と比べた食費の家計への負担は「とても負担に思う」75%、「やや負担に思う」23%で、実に98%が負担が重くなったと感じていた。対応策として「食べない」を挙げた人が多い。前日の食事の回数を聞いたところ、親は「1食」が19%、「2食」が47%で、3人に2人が食事を抜いていた。子どもに関しては「3食食べさせたい」と思っている親が多いが、それでも「2食」が24%いた。

6〜11月の半年間に水道光熱費や家賃、学校納付金の滞納があった人も36%に上った。4〜10月に家計がショートし、借り入れ等を行なった人は64%。内訳は「貯金を取り崩す」(24%)、「家族や親戚から借りる」(18%)、クレジットカードのキャッシング利用や、銀行のカードローン、消費者金融からの借り入れ等、複数の選択肢にまたがる回答も少なくない。「支払えず滞納し、毎日電話がかかってきて精神的にとても苦痛で、消えたいと思う」「自分の全財産の貯金も底をついた。子どものお小遣いを借りる時も多い」などの切実な声もあった。

現在、児童扶養手当は子ども1人あたり満額で4万4140円。第2子は満額で1万420円、第3子は満額で6250円が加算される。子どもが多くなるほど1人あたりの金額は少なくなる。この支給額は過去40年間で35%しか増額されていない。最低賃金が244%増となったのとは対照的だ。所得制限限度額も子1人の世帯で、全部支給が160万円、一部支給が365万円と、2002年に大幅減額されて以降、低く据え置かれてきた。

子どもの貧困対策に取り組む支援団体は2022年12月、こども家庭庁や厚生労働省に要望書を提出し、児童扶養手当や加算額を子ども1人あたり1万円ずつ増額する▽所得制限を全部支給で200万円、一部支給で400万円に引き上げる、の2点を求めた。一方、政府が同月末にまとめた「子ども未来戦略」では、増額は第3子の加算額を1万円に引き上げるのみで、所得制限の引き上げも全部支給で190万円、一部支給で385万円までにとどまった。

「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の調査の自由記述では、「ご飯の水の量を増やすようになった」「乾麺をブヨブヨになるまでゆでて、お腹をふくらせる」「お粥にする」などの回答が複数みられた。欠食による栄養失調や貧血でドクターストップがかかった母親もいる。同団体は「アフターコロナと物価高が、ひとり親と子どもたちの生活を生存ギリギリの状態に追い詰めている」とし、「今すぐの、恒久的な手当の増額等の支援が必要だ」と訴えている。

(2024年2月25日号掲載)


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