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6相6線式送電線路を考える(4) 「3相の送電容量」


3相3線式の電圧を正三角形で見る

線間電圧は相電圧の引き算なので、相電圧のベクトルの先端同士を結んだベクトルが線間電圧になっています。3つの線間電圧は正三角形になっていて、相電圧は正三角形の外心(3つの頂点の中点)から各頂点を結ぶベクトルになっています。


3相3線式の電圧を表す正三角形


相電圧

$$
\begin{alignedat}{2}
\.V_A &=E  \angle \frac{1}{6}\pi
 = E \left(\dfrac{\sqrt{3}}{2} + j\dfrac{1}{2}\right)&\text{ …(10-A)}\\\\
\.V_B &=E  \angle \frac{5}{6}\pi
 = E \left(-\dfrac{\sqrt{3}}{2} + j\dfrac{1}{2}\right)&\text{ …(10-B)}\\\\
\.V_C &=E  \angle \frac{3}{2}\pi
 = -jE &\text{ …(10-C)}
\end{alignedat}
$$

線間電圧


$$
\begin{alignedat}{2}
V &= E \sqrt{3}\text{とおくと、} \\\\
\.V_{AB}&=V \angle 0
=V &\text{ …(11-1)} \\\\
\.V_{BC}&=V \angle \frac{2}{3}\pi
=V \left( -\dfrac{1}{2} + j\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)
&\text{ …(11-2)}\\\\
\.V_{CA}&=V \angle \frac{4}{3}\pi
=V \left( -\dfrac{1}{2} - j\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)&\text{ …(11-3)}
\end{alignedat}
$$


送電線の話

送電線では、電流の2乗に比例した損失が出ます。
送電容量は 電圧 × 電流 なので、電圧を上げれば上げるほど、同じ太さの電線で多くの電気を送れます。
しかし、送電線の電圧を上げすぎると、空気中に電気が流れてしまいます。(空中放電)
なので、送電線の電圧にも限界があります。


3相3線式と送電容量

単相2線式の送電容量



ここで、送電線の定格電圧(線間電圧)を$${V_L}$$、定格電流を$${I_L}$$、送電容量を$${K}$$とすると、家庭用のような単相2線式(行き帰り一本ずつ)なら、
$${K=V_L I_L}$$ になります。単相2線式の線1本あたりの送電容量を$${K_2}$$で表すなら、
$${K_2 = \dfrac{1}{2}V_L I_L}$$ …(12)

になります。
この数値が大きい程同じ電線で多くの電力を送電できることになります。


3相3線式の送電容量


下の図は、線間電圧$${V_L}$$の3相3線式送電線路に3相平衡負荷(3相ともバランスの取れた電気を使う設備)を繋いだ簡略化した図です。
注意点として、$${V_L}$$も$${I_L}$$も絶対値を表していて、計算をするときは位相を考慮しなければなりません。
$${I_L}$$の向きが全部同じになっているのはそのためで、実際は逆向きの電流をマイナスとして計算し、3相とも足すと零になって辻褄が合うのです。

3相3線式電源と負荷の簡略図


上の図を相電圧の図に書き直します。
平衡3相回路では零相の電流は流れない$${(I_0 = 0)}$$です。

相電圧での表示に直した図

上の図で1相だけを簡略化したのが、下の図です。

1相だけの図 

送電線の定格電圧(線間電圧)を$${V_L}$$、定格電流を$${I_L}$$、送電容量を$${K}$$とすると上の図より、

$$
\begin{aligned}
\dfrac{1}{3}K&=\dfrac{1}{\sqrt{3}}V_L I_L \\\\
K&=\dfrac{3}{\sqrt{3}}V_L I_L \\\\
K&=\sqrt{3}  V_L I_L
\end{aligned}
$$

線1本あたりの送電容量を$${K_3}$$で表すなら、

$$
\begin{aligned}
K_3 &= \dfrac{1}{3} \sqrt{3}  V_L I_L \\\\
K_3 &=\dfrac{1}{\sqrt{3}}V_L I_L \text{ …(13)}
\end{aligned}
$$

$${K_2}$$(単相)と$${K_3}$$(3相)を比較するため、$${\dfrac{K_3}{K_2}}$$を計算すると、

$$
\begin{aligned}
\dfrac{K_3}{K_2}&=\dfrac{\frac{1}{\sqrt{3}}V_L I_L }{\frac{1}{2}V_L I_L }\\\\
&=\dfrac{2}{\sqrt{3}}\\\\
&≈1.15
\end{aligned}
$$

つまり3相3線式は行き帰り一本ずつの単相2線式に比べ、電線一本当り1.15倍も多くの電力を送電できるので経済的なのです。


新たな疑問

ここまでを理解すると、3相3線式が良いのはわかりましたが、4相4線式とか、6相6線式はどうなの?って私は思いました。

次回はそれを考えてみます。
今回も読んでくださり、ありがとうございました。

なお、送電線には電流の2乗に比例した損失以外の諸問題もあり、力率という交流ならではの問題もありますが、今回は省略させていただきました。

続き↓


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