SHIZUKU PROJECT vol.1「そこにある、ここにいる。」 演者インタビュー
――まずは自己紹介ということで、普段どんなことをやっているのかというところをお聞きしたいと思います。まずはなっちさんから。
黒木:黒木なつみです。なっちって呼ばれてます。普段はマイムをやっていて、でもパントマイム、いわゆる壁とか綱引きとかもやるけれど、無言劇みたいなことをやってます。舞台で身体を使って表現をするということをやっています。時々歌を歌ったりすることもあります。
――無言劇ってどんなものでしょうか。
黒木:難しいですよね。マイムにもいろんなジャンルがあって、ダンスにジャズダンスとかコンテンポラリーとかいろんなジャンルがあるように、パントマイムもマイムの中の一つって言われてるのかな。パントマイムをやる人によっても、それぞれ説はあるんですが、私はそう捉えていて。だからパントマイムもやるし、言葉を必要としない演劇みたいなことをやったりもする。
――体の動きのみで表現するみたいな。
黒木:そうそう、言葉に関しては、お客さんの脳内で想像してもらうような。動きを見たことによって、お客さんの中に物語が生まれるようなことを目指してやっていたりもしますね。
――なるほど、わかりました。次に八幡さん、お願いします。
八幡:八幡雄士です。本名で活動しています。ジャグリングのパフォーマンスをやっていて、私が使うのはハットですね。帽子として普段使用されたりする人もいるかと思いますけど、ハットを用いたジャグリングをやっています。基本的にソロで活動していて、関東を中心にやってます。
ーーどういうところで発表することが多いですか。
八幡:発表する場としては、最初は屋内が中心かなって思ってたんですけど、比較的最近は外でやってみたりしてっていう形で、活動の幅を広げていこうかなって感じの状態ではあります。
ーーありがとうございます。その中で得意な表現みたいなのを聞いてもいいでしょうか。
黒木:私自身、得意というか、興味を持ってやっているのは、身体を分割して動く。例えば、振り向く動作でも、頭から振り向くのかとか、身体を頭とか色々なパーツごとに分けて、振り向くにも色んな種類があって、全身で振り向くとか胸の部分が動いてから振り向くとか、色んな動きの分析が好きでやってるかな。
ーー八幡さんはハットジャグリング以外には何かやったりするんですか。
八幡:最近ハマってるのが、デビルスティックっていうジャグリング道具ですね。スティックは最近楽しいなってやってたり、それ以外の道具もひと通り軽く技ができるかなぐらいなんですけど、あくまでも表舞台でやるのはハットですね。今までハットしかやってなかったんですけど、ジャグリング自体が楽しいので、他の道具を触ったりもしますね。
ーーなんでハット中心なんでしょうか。何かきっかけがあったのでしょうか。
八幡:そもそも私がジャグリングを始めたのが、大学に入ってからで。それまで別に何もやってなかったんですけど、入学当初仲良くなった学科の友人と、サークルめぐりした時に、ジャグリングサークル面白そうだねって試しに入ったんですよね。
ジャグリング道具は、何をやっていくかっていうのは人それぞれなんですけど、そこで私が選んだのがハットなんですよ。でもハットって誰かがやってたとかじゃなくて、ナランハっていうジャグリングショップのカタログで、ひと通り道具を何となく見ていた時に「ハットって、ジャグリング道具なんだ、へえ〜」って思って、誰もやってないしやってみようかなって。
誰もやってない道具をやろうと思って「ハットやります」みたいな。それからずっとやっている。言っちゃえば一番得意な道具にはなりますし、ずっとやってますから、愛着ももちろん湧きます。それでやってるって感じです。
ーーサークルでは誰もやっていなかったんですね。今回の出演のオファーを受けた理由をお伺いしたいと思います。
八幡:かいしゅー(rece主宰:和田海秀)ととあるイベントの時にたまたま一緒に会った時に言われた言葉をそのまま使うと「八幡さんチェーレ出てくださいよ」ってストレートに言われたんですよね。
ほんとに何の会話の脈絡もなく、かいしゅーチェーレやってるよねとか、そういうきっかけもなく、ドーンと来て、あ、じゃあ出るよ、っていう感じで、即答の返事をしたって感じですね。かいしゅーがチェーレをやってるのは知ってましたし、かいしゅーが頑張ってやってることが、ちょっと気になるなっていうのはあった。
ーーどんな企画かというのは、大枠は元々知っていたということですか。
八幡:いや、今回何をやるのかは全く知らなかったですね。あくまでかいしゅーが何かやっているなっていうのしか知らなかったですね。
ーーじゃああんまり詳しくは知らない状態で、いいよって。
八幡:そうですよね。かいしゅーとは、前々からジャグリング関係で知り合いでしたし、その縁もあって。あと自分は基本的にソロでの出演とか、練習も基本的に自分一人の身体を使っての練習なんですけど、人と一緒にやる何かしら、成分というか、そういう機会がたまに欲しいかなって思っていたので、いいタイミングなんじゃないかなと。
ーーなっちさんのオファーを受けた理由は。
黒木:そうですね、結構似てますね。
私はSLOW CIRCUS ACADEMY(注:認定NPO法人SLOW LABELによる独自のメソッドと、シルク・ドゥ・ソレイユのソーシャルサーカスを融合した半年間にわたるプログラム。)の最後の方のあたりの稽古で、すーってかいしゅーさんが近寄ってきたなって思ったら「なっちさんは3月後半とか空いてますか」みたいなことを言われて、これは何か出演のお話なのかなって思って。でもジャグリングする人とか物を扱うみたいな人に興味があったから、よく分からないままぜひぜひと。
八幡:同じっすね(笑)
黒木:わくわくしそうな方は行こうって思ってたから、ぜひぜひって言って。その後、相方は八幡さんというハットジャグリングの方と聞いて「そうなんや」という感じでしたね。
ーー二人ともその場でOKみたいな。
八幡:とりあえず出ることはOKみたいな。
ーー今なっちさんが道具を使う人に興味があるとおっしゃってましたけど、一緒にやる人にいたら面白いなということですか。
黒木:私自身マイムをやってるけど、マイムって外側から自分の身体を人形と見立ててというか、物と見立てて動かすみたいな、そういう考え方で身体を動かしたり、逆にそういう頭の使い方を生かして舞台上で本当に人形を動かしたりとかすることも、過去に経験としてあって、私は物を触るのがすごい好きだなってずっと思っていて。
これはマイムをやる人の中でも多分特殊なことなんですけど、その上でやっぱジャグリングする人ってものを扱うプロフェッショナルだから、私ができないことをいともたやすくできる人に出会えるみたいなのは、すごい面白いなと思って、自分への刺激としてもいいなと思っていますね。
ーー八幡さんは何か期待していたこととか、こうだったらいいなみたいな、参加する前に思っていたことはありますか。
八幡:他ジャンルの人との、というのは聞いていたんで、自分が普段練習しているとこでは得られない何かしらの刺激とか情報という視点から、それこそさっき言ってた「外から動かす」みたいな考え方とか、そういう知らないことを知れるきっかけになったらいいなっていうのはあったので、他ジャンルとの交流というのは期待してますね。
ーーわかりました。今参加した経緯とする前に思っていたことみたいなのをお聞きしたんですけど、実際どうだったのかと。最初に会ったのがいつだったんですか。
黒木:んーーー?
八幡:1月下旬?
黒木:一ヶ月はたったかなみたいな。
ーー1月は稽古で?
八幡:顔合わせプラス出だしというか。
黒木:そうそう、その日から動き始めてはいた。
八幡:1月の中旬、17日。
ーーそこから一ヶ月ちょっとぐらい経った訳ですけど、稽古はどうですか?
黒木:これはインタビューで載せてもいいのかわからないけど。
ーーOKOK。
黒木:思ったより喋るなってっていう(笑)
八幡:黒木さんが(笑)
黒木:全然しゃべらず、パフォーマンスすると思い込んでいたから。
八幡:ネタバレチックではある。
黒木:思ったより喋るとか、できないことっていうのかな。それこそ八幡さんが得意としてそうなこととかを自分がするっていうのが、意外とないなっていう感じかな。それぞれの今までやってきたことを活かしてる感じがする。
八幡:素材の味をかいしゅーがうまいことやってる感じが。
黒木:そうそうそうそう。
ーー思ったより喋るは確かにそうですね(笑)八幡さんは感想はどうでしょう?
八幡:難しいな。すっと出来上がったなっていうのを感じましたね。パッケージングされたいくつかのシーンがあるけど、どんどんどんってできたなっていうのが。これから調整とか色々あるんですけど。なんて言ったらいいんだろうな。
ーーすっとっていうのはスムーズに出来上がりつつあるということなのか。それとも何か見た目が綺麗なすっとしているみたいな意味なのか。
八幡:出来上がりがすぐにできたなって。別に悪い言い方のつもりじゃないですけど、エイヤでできたっていう感じですかね。
というのも自分の作品を作る時に、めっちゃ一個一個緻密に考えすぎていて、全然足が進まないんですよ。だけど、今回のこの稽古で結構一旦パッと作って全体像をサッて作って、そこから何かちょいちょいポツポツ何か修正していくっていうやり方が、自分もこうした方がいいんじゃね?とか、ちょっと思っちゃったりして。
自分があまりに牛歩過ぎて、そこらへんのエイヤでやっていく精神もちょっと必要だなっていう気持ちになったっていうのはあるなという感じですね。
ーー僕が制作の関わりですけども、やっぱり普段迷う時間とか多いなと思っているんですけど、細かい部分ではもちろんあるんですけれども、今回はあんまり大枠で悩んでない感じで決まっているというか、そういった思うところは近いです。
じゃあ、ちょっとその感想みたいなところをもうちょっと具体的に聞いていくんですけど、普段との違い、自分でやる時とかどこかに参加される時もあるかもしれないんですけれども、普段やっている稽古との違いみたいなものを、八幡さんから今の流れで聞いていきたいかなと思うんですけど、どうですか。
八幡:さっきのとかぶるけど、大枠をバッて決めてっていうのところで、自分はジャグリングやってて、この動きっていうのを決めて、それをひたすら身体に直す練習してってやりたいんです。
バーって何となく決めた後に身体の練習しても、やっぱこうしたいなってところで徐々に変えていくと、なかなか身体に馴染まないんじゃないかっていう気持ちが自分の中にあって、しっかり一個一個決めたやつをずっと練習していくことで身体に馴染ませるみたいなやり方なんですね。
でも今回思ったのは、一回形を作っておくことによって、言っちゃえば安心感もありますし、とりあえずそこからちょっとずつやっていくっていうやり方はいいなって思いました。なかなか進まずにだらだらしているのは良くないと思うので。
ーーそれはかいしゅーのやり方でやっている訳ですけど、簡単ですか、それとも難しい。
八幡:インタビューに載せていいのかわからないですけど、結構稽古外での宿題があって、具体的に言うと「来週の稽古までに10分間の作品を作ってきてください」みたいな。はあ…。
一同:(笑)
八幡:でも締め切り与えられるというのは、僕にとって鞭叩かれる気持ちなので、そういうのはありがたいですよ、だらだらしてるよりは。
なのでエイヤでやらされる感じで、とりあえず作ってきたんですけどっていうのがあるから、稽古中っていうより宿題で進捗を加速させて、稽古の中でその中での具体的な味付けというか、ちょっと調整していってっていう感じで、稽古中での個人的な負担は実はそんな感じてない。
さっきも言った通り、かいしゅーは人の持っている能力を良い感じに生かしてくれるので、宿題で10分作るとかは置いといて、技術的な面でのやべえ無茶ぶりとかはそんなにしてこないんで、そこは何かやりやすいかなって思いますね。あくまで僕ですけど。
ーー宿題のとき、はあって言ってましたけど。
八幡:自分は今新しい作品を作ってるんですけど。
ーーまた別で。
八幡:自分がソロでやってて。昨年までずっとやってきたのを一旦区切りをつけて新しいのをやろうと思ったんですけど、時間かかっていて。
さっきも言った通り、ここがこうで、いやーこうだなーって、この技じゃなきゃダメだとか、正直結構すごい悩んでて、進捗が本当に遅いんです。
時間的にいっても1分か2分ぐらいが決まってるかどうかみたいな感じだったりするんですよ。それを1週間で10分何かしら作ってくださいって。やべえぞやべえぞみたいな。
ーー今進めている作品では、まず全体は何分ぐらいのものを想定しているんですか?
八幡:全体は20分前後なんですよね。
ーーで、今決まっているのが1分2分と?
八幡:1分2分は言い過ぎかな。すげえ具体的な話なんですけど、ジャグリングパートと、前置きというか繋ぎパートみたいなのがあって。
繋ぎパートは頭の中でもう何をやるかってのは決定してるんですけど、身体で動いてやるっていうのは決まってないから、実質0としてて。
ジャグリングの方は動いているけど、ここでやる技はこれがいいなっていうのがあって、それをガッて凝縮したら1分2分になっているかなっていう…。本当はたぶん3分4分ぐらいかな。
ーーかいしゅーから言われたのは、一週間で10分のジャグリング作品を作ってこいっていう宿題ですよね。
八幡:そう、それで今、自分ができる素材で、なおかつ何かかいしゅーが求めてそうなのをかき集めてエイヤで作って何とか一応できたんですけど、自分もそうしなきゃな、っていう反省がありました。
ーーソロ作品の3、4分を作るのにはどのぐらいかかっているんですか。
八幡:作品を作るって決めてコンセプト自体はもう去年の夏ぐらいから決まってて、具体的なジャグリングの構成を詰めていくのは、秋ぐらいからこの技採用していきたいなっていう素材を集めてたんですけど、ちょっと進捗悪くて。
今年に入ってからちょっと素材集めを加速させてたんですけど、その素材達をどう生かしていくかがまだ具体的に決まってない、素材を調理しきれてないので、現状3、4分ぐらいになるかなという感じです。
ーー普段数か月で3、4分と、1週間で10分と、だいぶスピード感に違いがあるような感じなんですね。
八幡:そうですね。なのでやらなきゃなあ、やらなきゃなあって。正直、その1週間の宿題でも、作って、なおかつそれを動画に撮って、かいしゅーに送らなくてはいけないので、本当に作らなくちゃいけないんですよ、当たり前なんですけど。その10分のは稽古の前日に撮ったんですけど、意外となんとかなるんやなあって。
黒木:うなってましたもんね(笑)
八幡:うーーーーーんって。
黒木:宿題出された帰り道どうしようみたいな。
ーーあ、そうなんだ(笑)
黒木:間に合うかしらみたいな。
八幡:でも自分の得意としてる動きの素材も集めつつ。
あと勘違いしない欲しいのは10分をエイヤでやったとはいえ、今までの自分がやってきた演目で出してない技や動きももちろん入れてますし、あと次の作品で使おうと思っていることもちょっと入れてますし、そういう意味での観る方への期待というというか、手を抜いてるわけじゃないよという感じ。
ーーでも10分の、言ってしまえば作品ですもんね。宿題と言ったらなんか軽く聞こえますけど、作品を作っている訳ですもんね。
八幡:10分間のジャグリングの演目を作ってきてねっていう。
ーーそれは、はあと言いたくなる。
八幡:そんな過去があったなって感じです。
ーーでは、なっちさんは普段の稽古との違いがあったのかというところを。
黒木:普段の稽古っていうのがそもそもって感じ。思ってるより違いを感じなかった。普段のテンポで稽古も入っていけた感じがしました。
ーーわりと抵抗なくというか。
黒木:そうですね。一番最初の稽古の時に八幡さんとかいしゅーさんがいて、喋り始めたり何やかんやった時に、もう何か、この3人で作っていくんやなあみたいな。
安心感というか、いい空気で多分本番まで進めそうっていう風に自分が思ったからだと思うんですけど、すごい居心地良くて。今もそんな感じ。あとなんやったかな、すごい色々共感したけど、ちょっと今忘れてる。
ーー違いはあんまりないっていう風に今おっしゃいましたけど、違いではなくても、面白い部分とか難しい部分とか聞けたらなと。
黒木:単に八幡さんのすごさを目の前で見てて、何個も投げてる、すごいとかっていうのは、多分想像上でもあるんですけど、頭の上で変わっていく帽子の色とか、パパパパパってどんどん変わっていく色とかがすごい綺麗やったり、細かいところにすごいはっとさせられるとか、大きな技をした時に感動するっていう見方じゃなくて、ちょっとした細かなすごいところっていうのかな、そういうところに、ちょっと感動したりとかするようになってます。
八幡:それは僕が求めている感じの感想なのでありがたいです。そういうところを大事にしてる。ありがたいです。
黒木:わあ、やったあ。やっぱ稽古ならではですよね。
八幡:細かいところ見てくださってありがとうございます。
黒木:恐れ入ります。
ーー今、帽子の色が変わってくという。
黒木:今日は特に思ったんです。4つですよね、4つの帽子をバババッて、こう投げて頭に乗せてとか、やる時に本当に投げてもいるし、キャッチしてもいるし。頭に乗っかってもいるんですけど、でもそのスピード感が半端じゃなくて、ここだけなんか映像作品、アニメーションを見ているみたいな。
八幡:コマ送り。
黒木:そうそうそう、パパパパって変わるのがすごいいいんですよね。
ーー逆に稽古をしていく中で難しいところはありますか?
黒木:難しいって感じることはないのかな。これ面白いかなって自分が思っちゃっている瞬間はたくさんあるんですよね。お客さんのことを想像して、退屈じゃないかなとか思ったりとか。でも、それはかいしゅーさんが「退屈でも大丈夫。」みたいな。この一瞬にかけたいからみたいなこととか。ちょっとした不安は取り除いてくださってるから、不安にならんでいいなって思いながら。ちょっとなりかけるけど(笑)
ーー普段やらないこともやっていると思うんですけど、動きとか物を扱うとか、あと喋る。それに関しては、難しいとは思っていないのか。どういう気持ちで練習したり稽古したり。
黒木:そうなんですよね。喋るっていうところが結構私の中でずっと苦手な分野だし、インタビューとかもいま何しゃべってたっけってなる感じとかあるんですけど、私も10分、あ、これインタビューに乗せられるのかな。
八幡:うーん。
黒木:とりあえず聞いてください(笑)
10分帽子に喋ってくださいと、10分間喋る内容の文を作ってきてくださいって言われて、えーーーみたいな。そもそもマイム作品とかも、5分とかでちょうど見やすいみたいな感じで作っているのに、すごい台本書かなあかんちゃうみたいな気持ちになって。
やっぱその筋のプロフェッショナルってどういう人なんだろうって、ものを扱うだったらジャグリングとかかなとか考えるの好きなんですけど、喋りのプロフェッショナルはやっぱお笑いちゃうかと思って。トークライブとか、漫才師のしゃべってるのとか、落語であったりとか、取り敢えずひと通り無料でゲットできるYoutubeとかで漁ったりとかして聞きながら。で、お客さんをフッと引き付ける一言とかあるから、そういうのをバーッとメモしていって。
ーー知見を共有した。
黒木:そうそうそうそう。やっぱり自分から何も出てこないので、人から何かもらおうと思って。そうなってくると、相槌がプロフェッショナルなテクニック使ってるなとか、相づちの面白さみたいなのを感じたりして、その辺の眠っていたアンテナみたいなのが徐々に立ち始めてる感じがしていますね。
ーー10分喋る宿題に対しては、一から研究をしたと。
黒木:そうそう、苦手すぎて(笑)。
ーー八幡さん、ちょっとまた戻っちゃうんですけど、難しさみたいなのはさっきお聞きしたんですけれども、逆に面白いところは稽古中であったりしますか。
八幡:さっき言った通り、稽古の中で、すって出来上がっていって、ああできたって感じには、楽しさがあるんじゃないかなとは思うんです。
あとは自分以外の人が帽子を触って何かするっていう時の見える景色ってのは(楽しい)。それこそハットジャグリングをしていない人が、ジャグリングのハットを触っている。そういうところで見える景色もまた新鮮だったりするんで、そこにおける何かしらインスピレーションとか刺激とかも面白いなっていうのは感じたりするんで、そういう意味でも普段味わえない新鮮な景色が見れたりするっていうのはあります。
人と作ってっていうのは、今までは本当に少ないので、接していく中で、人と一緒に作る作品で、どうやって出来上がっていくのかっていうところ、複数人いる人をどう使っていくのかっていうのを見れたりするのが、こうやって作っていくんだなっていうのがわかるのが楽しいですね。
ーーなっちさんに帽子を教えてましたよね。
八幡:大したネタバレでないですけど、ちょっと投げてもらったりとか。ちょっとジャグリングやってる人なら分かると思いますけど、あ、そういうこともするんだって思うシーンが多分あると思うんです。ハットを使ってジャグリングしてない人がハットを使うし。もう今や当たり前にできるようになってて、今日も無理なくやってるって思ってたんですけど。教えたりしましたね。
ーー教えることって普段はありますか?
八幡:全然ありますね。それこそ大学入ってからサークルで。それこそ自分はハットって前にも後にも自分しかいなかったんですけど、他の道具も触ったりたまにしてたんで、その道具を教えることもありますし、サークルじゃなくても他の何かしらのイベントの時に教えたりするんで、その時の培った経験もあって、できたかなと思ってはいるんですけどね。
ーーじゃあ慣れている部分もあった。
八幡:慣れている部分もあるんですけど、でもやっぱり教える上で感じているのは、人の癖というかやり方が一人一人違うんです。
帽子一個投げるにしても、どう投げてるのかとか、こういう投げ方やってみてとか、こういうキャッチの仕方やってみてって。どうやって意識してキャッチしているのか、投げてるのかは人によって全然違ってくるんで、その上でどうやってこの人に教えていくのか。どういう意識で教えるか、投げてみてキャッチしてみてとか。教えるたびに毎回発見がありますね。
ある程度確立された、こうやったらスムーズにいくんじゃないかっていうのも確かにありはするんですけれども、やっぱりそれでも、こういう感じでこの人は投げてるんだ、キャッチしているんだっていう発見があるのは、教えてて楽しいって思う瞬間です。
ーーなっちさんの場合はどうでした?
八幡:比較的ジャグリングをやってない人にとっては、若干ハードル高いんじゃないかなって思うシーンがあるんですけど、それでももう今ではできるようになっていて。
自分の教え方がいいか悪いかは置いといて、やっぱり僕が貸し出したハットを持って帰ったというのはあると思うんですけども、やっぱりやっていく上で、教えることに関して、なっちさんはわりとスムーズにできたんじゃないかなと思います。
繰り返しますけど、難しいことをしていて、できない人は本当に全然できねえやってなるので。ジャグリングの難しさとか、同じ技でも人によって苦手とか得意とかありますし。でも(なっちさんが)こなしてくれたのがありがたいです。
ーーやっぱりたくさん練習しました?
黒木:最初帽子持ってなかったからあれですけど、一個貸してもらって、家で取り敢えず毎日触ろうっていう。触ることは絶対やってて。で、教えてもらった時に膝を伸ばすと、反り腰にならないんですよみたいな。私、反り癖が普段からあって、ちょっと後ろにいっちゃうし。
でも、あ、膝を伸ばしたら、ちょっと前というか、ぴんと身体が張るんやなあとか、そういう身体的な面白さというかを感じながら、その瞬間膝を伸ばすみたいな言葉を頭に入れつつ家でやって。そしたら結構出来る。
八幡:良かった良かった。
黒木:やっぱりどうしても、そういうところの身体の使い方じゃなくて、手先のここからここに投げるみたいなのだけだと多分成功しなくて、そういう身体の中心部の使い方っていうのが大事なんやなあみたいな。毎日これやってますよ。
八幡:文字通り記事になるのかわからないですけど、今ので、果たして何の技やるのかクイズみたいなのは、ジャグラーさんとかできるかもしれない。この技は肩こってる時とかにやると、僕は気持ちいいなって思うんですよ。
ーーえ、そうなんですか。こうですよね(動きを見せる)
黒木:はい、こうです(動きを見せる)
八幡:結構こったなって時にやると、あ、気持ちいいって。これ3つでずっとやるやつあるんですけど、その時はやってて気持ちいいなとかってなったりするんですよ。
ーー確かに肩胛骨が動く感じがしますけれども。
黒木:ほんとに。
八幡:身体のほぐすついでに朝の体操というか。
黒木:やっぱりちょっと自分の使ってなかった方向の動きだから、新しい。
ーーこれをクイズにするかどうかと(笑)
この作品が稽古中ですけれども、作品を通して自分が表現したいこととかってあったりしますか。
黒木:難しいですね。でも今回「いる」っていうことを求められてる気がしてて。存在するみたいな。だから、そのさじ加減というか、「いる」けど、主人公としているのか、脇役としているのか、それこそ背景みたいな、環境として「いる」のかみたいなこと。そういうことを意識してるし、元々興味を持っているところとリンクしてるのもあって。…むずっ(笑)
ーー存在のし方みたいなものですか。
黒木:そうですね、見てほしいところってなると難しいかな。
ーーお客さんは一回置いておくと?
黒木:そうですね、自分のあり方みたいな、存在の仕方みたいなのですかね。
ーー八幡さんはどうですか。
八幡:そうですね、正直言うと、僕が表現したいことっていうのはなくて。
というのも、今回かいしゅーの作品なので、かいしゅーの求めている景色っていうのを、自分の身体を使ってかいしゅーが作ってくれたなって思っている次第なので。
さっきも言った宿題は10分の演目っていうのも、実際に自分で作りましたけど、結局は料理で例えるなら、ご飯を使って1週間で何か一品物のレシピ作ってきてって。で、僕は持ってきたのはカレーみたいな。
でも、カレーって人によって様々じゃないですか。具材とか、ドライカレーとか。どういうカレーでどういう味付けするかってのは、結局かいしゅーが決めて最終的に調整して決めてくれることなんで、僕が作ったカレーをそのまま出す訳じゃないんで、かいしゅーが作ったカレーをちゃんと僕が本番でもレシピ通りにつなげたらなみたいな感じなので。
あとはやっぱり景色ですかね。かいしゅーが今回の作品に於いて求めている景色っていうのを、ちゃんと表現したいなとは思っていますね。
ーー料理の話を戻すと、宿題でもそうだと思うんですけど、カレーを作りましょうっていうのはかいしゅー、最後味付けするのもかいしゅーかな。
八幡:というよりは、ご飯を使って何かの料理を作るとして、僕が実際こういうご飯の料理を作りましたっていうのが、世間一般的にはカレーだとして。
具材とかをある程度自分の中でこれかな、とかして作ったカレーをかいしゅーが「この野菜をもうちょっと刻んだりしたらいいんじゃないですか」「細く」とか、「もうちょっとここはパンチ強くしてもいいんじゃないですか」とか、「もうちょっとどろどろに」っていう調整とかして。
そしたら自分の作ったもともとのカレーっていうよりはかいしゅーのカレーになるかなと言う意味ですかね。
ーーご飯使って何かをって時に、なぜカレーを出したのか、なんでカレーにその具材を使ったのかという部分は、八幡さんが作っているわけですよね。その中で自分の中からチョイスしたものが何かあると思うんですけど、それはどういう基準で、どういう意図でとか、何かあったりしますか。
八幡さん:さっきもちらって言ったんですけど、かいしゅーが求めてそうだなっていう(もの)。今回この稽古やってく中で、かいしゅーが作りたい、いくつかの風景みたいな、景色というか作品というのがあるんですけど、それぞれ別のコンセプトがあるにしろ最終的に一つにパッケージングされているので、その流れで考えてくと、自分に求めているのはこんな感じなのかなという、何となくのフワフワ(したものは感じる)。
例えば、ご飯だと、さすがに砂糖では味付けはないだろうなと。しょっぱいのでだなってみたいな感じでやりつつ。あと言っちゃえばかいしゅーが好きそうな動きとか間の使い方とかですね。そこから調理していくんですけど、その調理の余地を作ると。例えば間をしっかり溜めるところとか、ゴリゴリゴリ動くところもあれば、繰り返しやるところとか、ガーッてやるところもあれば静かになるところとか。あと、舞台のここの部分を使うとか、こういう感じで移動するってところにも、手の加える余地みたいなのも考えたり、後々かいしゅーが手を加えても問題なさそうだなとか、かいしゅーが付け加えやすいんじゃないかなっていうのとかは意識しましたね。それが実際加えられているかどうか置いといて。
ーー後のことを考えて、かいしゅーの好みとかも考えて。
八幡:結局かいしゅーのプロジェクトなので、自分がやりたいのは自分がソロでやっとけって話なので。自分がやりたいのっていうよりはっていう感じですね。
ーー表現したいところがあったりなかったりすると思うんですけれども、じゃあお客さんがいざ来た時に、作品の中でどんなところに注目して欲しいかっていうのをちょっと聞けたらなと思うんですけれども。
八幡:さっきも言ったんですけど、景色。全体があって、こんな感じの眺めぐらいに。なんだろうな。深く考え過ぎなくてもいいし、ちょっとある程度深く考えてもいいしぐらいなのかな。何と言ったらいいさじ加減か分かんないですけど、例えば旅行を行っていろんな景色を見たりするのが楽しいっていう、それと同じように、こういう景色も面白いな、いいなっていうのがそこにあったらいいんじゃないかなって、今回の作品は僕は思ってますし、多分かいしゅーもそういう感じなんじゃないかなって思ってます。
ーーこういう景色があってもいいんじゃないかと。
八幡:こういう景色もいいなとか、普段の自分の日常では見られない景色っていうのが恐らく提供されると思うんで、そういうことの面白みっていうのを味わってほしいです。
ほどよく観察しつつ、程よくぼうっとしつつみたいな感じの具合で見てもらって、そこに何かしらの面白みを発見してくれたらいいんじゃないかなって思います。
ーーなっちさんは。
黒木:本当に目の前で起こることを見てほしいっていう。で、どう感じるかっていうのは多分それぞれだと思うんですけど、それに対して楽しまなきゃいけないとか、なんだろう、自分のその時感じた感覚っていうのはその通りだよっていうか。見ることに対して素直でいてほしいなというか。どうしても意味を探ってしまうみたいなこともありだと思うし、ぼーっとしちゃうもありだと思うし、でもその時間をそう思って過ごしているって感じてほしいなみたいなところがあるかな。
八幡:めっちゃわかる、わかるなあ。
ーー逆に、出演者としては、どんな人が向いているかとか、こんな人がいいんじゃないかなとか、こんな人に参加して欲しいなとか思う部分はありますか。
黒木:誰でもOKな気がする。表現したい人、する人なら。かいしゅーさんはそれぞれを生かしてくれる感じがあるから、こういう人が向いてるとかあるのかな。結構どういう人でも面白くなっていくんじゃないかなって思ったりしたかな。
八幡:僕ジャグラーなので、ジャグリングする人視点で言うならば、そもそもジャグリングってやっぱり一人でやるのが多いんですよね。
自分もそうでしたし、一人でできるものっていう中で、集団で、しかも他ジャンルの人と創作していくっていうことの経験の場として、そういう場所かいしゅーの企画があるのは、いい機会なんじゃないかなとは思いますよね。
なのでさっきもなっちさんが言った通り、誰でも多分大丈夫というか、そこに何かしらのこういう人が参加しなくちゃいけないみたいなハードルは感じなくていいんじゃないかなと思います。そういう場を求めてる人ですかね。
ーーこんな人にオススメだよ、みたいなのあります?
八幡:シンプルに演出されたい人。これもジャグリングの人だったら、自分で演目、演技を作って自分でやるっていうのが基本なんですけど、10分間何か作っても、でもその中でかいしゅーが何か、こうしてこうしてって言ってくれるので、客観的視点を求めている人とか。自分にはない視点とかがそこにあったりするかもしれないので、そういう人とかは結構刺激になるんじゃないかなとは思います。
ーーなっちさんのおすすめみたいな人は。
黒木:自分のジャンルっていうものの魅力も感じつつ、自分のジャンルにちょっと飽きもしてて、そこに新しい風を吹き込みたいとか、それこそ新たな視点みたいなことだと思うんですけど、そういう他者、今回かいしゅーさんの目を通してとか、何か種をもらってる感じがしていて、考えるきっかけが自分じゃないところに欲しい人というか。自分の中で終わらすんじゃなくて、他者から何かほしい人。新しいもの、新しい視点。
ーーありがとうございます。最後に来場者の方へのメッセージをお願いします。
八幡:繰り返しになっちゃうんですけど、そこにある景色を純粋に見てください。そこにある景色をお楽しみに。
黒木:CouCou結構不便な場所にあるし、わざわざ来てくださっているので、それも含めて楽しんでください。自分の家じゃないけど、来て帰るまで楽しんでねっていう(笑)
八幡:そこまでがイベントというか。
黒木:帰るまでが遠足ですみたいになっちゃった(笑)
ーーお二人とも、ありがとうございました!
(聞き手:井手優介)
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