人物のディテールを突き詰めること 〜デヴィッド・フィンチャー監督『ザ・キラー』感想

 まず導入からしてとんでもない。任務を遂行中の殺し屋の生活ルーティンを、彼の心の声をバックに見せていく。たったそれだけなのに、こちらの興味を飽きさせないし、映画を観ている内に我々は、この殺し屋の人となりを自然と理解することになる。
 その後の展開として、殺し屋は任務に失敗し報復を受ける。その後殺し屋の復讐劇が始まっていくわけだが、そんな展開でもこの映画は感傷的にならず、殺し屋の行動を淡々と見せていく。その淡白さがより作中で起こるイレギュラーを際立たせ、作品をドラマチックにしている。この芸のすごさはなかなかお目にかかれるものではない。
 人物のディテールをとことん突き詰めることで、映画を1本作ることが出来るのだということを教えてくれる傑作。Netflix に加入している方はぜひご覧ください。

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