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大手企業のWeb3参入が相次いだ2023年を経て、2024年の業界色模様を語る Astar×0x(レポート)

Web3事業開発コンサルティング企業の0x Consulting Group(0x=ゼロエックス、旧:LCA GAME GUILD)が運営するWeb3事業開発企業向けメディア「LGG Research」は12月22日、イベント「2023年総括&2024年に向けた準備 世界を代表する企業が取り組む『ブロックチェーン事業開発』」を開催しました。同イベントでは、Astar FoundationのJapan Head of BizDevである陳宇鴻(ちん・うこう)さん、0x Consulting GroupのFounderである細金恒希(ほそがね・こうき)さん、LGG ResearchのChief Media Officerである伊藤富有子(ふゆこ)さんの3人による、「2024年に向けての展望と準備」をテーマにしたパネルディスカッションも行われました。その様子をお届けします。


2023年のAstarと0x

伊藤:2023年12月ということで、まず、2023年はどんな1年だったかぜひ聞かせてください。

陳:2023年は本当に激動の年でした。Astar Networkは2023年度前半期までPolkdot(ポルカドット)のブロックチェーン上で、いかに自分たちのユーザーベースやトランザクションを増やしていくかにトライしていました。2023年の後半からはPolkdotを大事にしつつ、Ethereum(イーサリアム)のレイヤー2ソリューションであるAstar zkEVM Powered by Polygon(以下、Astar zkEVM:アスター ジーケーイーブイエム)の開発を通じて、Ethereumというある意味、現時点におけるWeb3の主流になっているプラットフォームにいかにジョインしていくのか、という取り組みをしたのがすごく大きなところでした。Astar zkEVMをEthereum上に出してからは日本企業からの申し出もより活発化したという意味で、開発者の母数がどれだけあるか、その時の開発者の技術トレンドがどこにあるかを押さえることが、特にエンタープライズの方と話をする上ですごく重要でした。

細金:0x Consulting Groupは特に、ブロックチェーンなどのインフラに乗っているコンテンツを得意としているんですが、2023年は仕込みの1年で、2024年に一斉にコンテンツが世に出るというステータスであり、直近、目白押しで発表がありました。

0xもサポートしているプロジェクトの中で皆さんにぜひ見ていただきたいと思っている一つが、DMMグループのDM2C Studioによるweb3プロジェクト「Seamoon Protocol(シームーン プロトコル)」のホワイトペーパーと資金調達の実施についての発表です。ホワイトペーパーを見ていただくと、単体のアプリケーションだけではなく彼らが持っているアセット全体をWeb3化することで、ユーザー体験をどう示していくのかという一つの大きな試みであることが分かると思います。ゲームのプラットフォームは世界中にあるんですけど、ゲームとゲーム以外のものを全部つないだようなプラットフォームはまだ見たことがなく、Seamoon Protocolが先行事例になると思っています。これが軌道に乗れば、あらゆる企業のユーザーの経済圏を同じような形で作っていけるようになるのでは、と考えています。また、資金調達には本格的なグローバル展開を目指すというメッセージが含まれています。

それ以外にも、スクウェア・エニックスがNFTコレクティブルアートプロジェクト「SYMBIOGENESIS(シンビオジェネシス)」をリリースしており、1日目にして30~40カ国のユーザーが一斉に遊び始めていました。クリプトやWeb3でプロジェクトを起こす一つのメリットが、グローバルにユーザーへリーチできることだと思っており、私自身もそこが非常に面白いと感じています。また、コナミデジタルエンタテインメントのデジタルトレーディングカードゲーム「ORE’N(オレン)」のリリースが2024年に控えていますし、これから色々と世に出せることにワクワクしています。

0x Consulting Group Founderの細金恒希さん

先を行く企業との違いは「トップの決断」

伊藤:Web3業界全体の話をすると、インターネットの黎明期もそうですけど、まずベンチャー企業が事業成功の定石とまではいかずともある程度の突破口を見つけ、そこからいわゆるマスアダプションを作るには、大手企業の資本力やリソースなどが投下されないと市場が活性化していかないということはあると思います。そういう意味で、2023年は大手企業の動きが非常に活発になってきたのかなと感じていますが、その辺りはどう感じていますか。

陳:大手企業のWeb3に対する関心が高いというのは間違いないと思います。ただそれぞれの企業で温度感は大きく違っており、多額の予算を見据えて準備を進めている企業は、やはり先を走っているという印象です。

伊藤:お答えいただける範囲でうかがいたいんですが、それだけの資本やリソースを入れて動ける会社とそうでない会社の違いは何なのでしょうか。

陳:トップの決断です。私がWeb3業界に入ってから感じていることですが、Web3事業は想定以上に資本力がないと戦えないという意味で、ボトムアップではなかなか進めにくいところがあると感じています。だから、一つの事例をインキュベーションするためだけに参入しようとすると、うまくスケールしていかないということも少なくありません。それよりも、社長の決断で予算を用意し、初めから会社としてベットしていくような企業の方が圧倒的に動きが早いですし、これから出てくるトレンドに対してのキャッチアップが早く、かつ、実績を挙げられるというのはあると思います。

伊藤:逆に言うと、その社長を動かすのに困っている方々が現場には多いのかなと思うんですけど、何かヒントはありますか。

陳:日本企業の特性として、海外企業よりもかなりバランスシートを大事にしているように感じています。海外企業だと一気に予算やリソースを投下してレバレッジを利かせている傾向がありますが、日本企業の場合は全体のバランスシートと経営の安定性に関わるところを重視しています。その意味で、ビジョンとビジョンをぶつけ合うというような感じになると思います。具体的なソリューションである一つの事業を向上させるというよりは、これから世界と戦っていく上で、ここでベットしないと業界のリーディングカンパニーとして存在感を発揮できるのか、ぐらいのコミュニケーションで社長に働きかけていただく方がいいように感じています。

Astar Foundation Japan Head of BizDevの陳宇鴻さん

伊藤:ハウツーじゃなくても、姿勢というか、あり方というか。

陳:そうですね。若干、フィロソフィーに関わる部分だと思います。

伊藤:確かに、それがWeb3らしさでもあるのかもしれないですね。

細金:私も同意なんですけど、日本企業とお付き合いをさせていただく中で感じることの一つが、やはり意思決定をするためにはデータが欠かせないということです。それは0xが得意というところで、0xのLGG Research内には投資家目線のデータなどもあります。Web3を語る上で、いわゆるそのマーケットの出来高はすごく重要な視点だと思っていて、国内に限らずグローバルな出来高はどのぐらい可能性があるのかストーリーを立てて話ができると、興味を持っていただけるケースが多いように感じています。

伊藤:細金さんにもぜひうかがいたいんですが、2023年の日本国内における大手企業の動きをどう見ていましたか。

細金:特にゲーム業界は早いタイミングで意思決定をしていたと思います。2022年に参入を決断し、2023年に制作するというような流れです。ただゲーム業界の中でも、各社のスタンスは違うように感じています。例えば新規事業の重点領域と位置付けてコミットしている会社もある一方で、現状としては同業他社の動きを見ながら事業を進めるような会社もあります。0xとしてコンサルティングをさせていただく中には、途中でプロジェクトがとん挫してしまうケースも少なくありません。なぜWeb3なのか、Web3で何をやりたいのかというビジョンが明確に決まってくると、プロジェクトとしても推進力が上がっていく印象があります。

2024年は金融とエンタメの動きに期待

伊藤:もうすぐ2023年も終わり、2024年が訪れます。Web3業界としてはどんな年になりそうですか。

細金:まず業界的にリアルワールドアセット文脈の立ち上げが多く、中でも不動産領域がかなり大きく動くのではないかと思っています。ゲーム業界に関しては、今までのようなゲームの形じゃなくなると感じています。既存のソーシャルゲームの延長線上のようなものではなく、各社が全く違う角度からゲームを作っているので、相当面白いものが出てくるという期待があり、それを市場がどう受けとめていくのかを私も楽しみにしています。

伊藤:ゲームの概念が変わりそうですよね。もう少し細かいキーワードに落とし込んでいかないと、ゲームという同じ括りには収まらないような商品サービスも出てくるんじゃないかなと私も感じています。

LGG Research Chief Media Officerの伊藤富有子さん

細金:ゲームはトークンの設計でもあるんですけど、コミュニティのデザイン設計になるとWeb3の要素が全部詰まってきますし、そこを深堀していくと様々な業界に転用できるのではと考えています。

陳:私も感覚は同じで、2024年はやはり一つはファイナンス、もう一つはエンターテイメントだと思っています。日本国内で言うと、2023年6月に金融庁は改正資金決済法を施行し、電子決済手段としてのステーブルコインを国内で発行することが可能になるという動きもあり、2024年にはファイナンスのインフレーションが加速するのではと考えています。エンターテイメントでも、ゲームやスポーツなどの文脈から様々なプロジェクトが生まれると期待しています。ただ、全てのプロジェクトがそろって伸びるというよりは、winner take all(勝者総取り)に近いところはあるのではと感じています。相当慎重に設計しないとスケールしづらく、周りは伸びているのに自分たちだけ伸びていないということもあり得るかもしれません。その意味で、Astarとしても2024年は一層気を引き締めて取り組んでいかないといけないなと感じています。


陳宇鴻
Astar Foundation Japan Head of BizDev
CEMS国際経営学修士および経済学修士。大学院卒業後、日本マイクロソフト社にてスタートアップ企業への技術投資・事業支援に従事。現在、Astar FoundationのJapan BizDev Teamにて日本市場での事業展開・パートナー開拓をリード。共著『現代金融と日本経済』(慶應義塾大学出版会)

細金恒希
0x Consulting Group Founder
大学卒業後、起業。事業家として複数事業を立ち上げながら、その傍らで通信会社、ゲーム会社などスタートアップ投資も行うだけではなく、自らの食へのこだわりを表現した日本割烹「白金台こばやし」のオーナーでもある。2019年5月LGG(現0x Consulting Group)設立。2023年3月にはWeb3.0特化型ビジネス誌IOlite(アイオライト)にて、 時代を創るWeb3.0注目の起業家Best30に選出。現在は、LGGとしてコンサルティング事業を行いながら、あらゆる領域のWeb3プロダクトに個人アドバイザーとしても携わっている。

伊藤富有子
LGG Research Chief Media Officer
2004年大手メディア企業にて最年少営業管理職を経験後、独立。“自分らしい生き方”を実現する大人を増やす社会の実現に従事する中で、Web3に触れ、トークンエコノミーの可能性により、現代の社会問題である“経済格差の是正”に貢献したいとの想いで活動している。Web3事業開発コンサルティング企業「0x Consulting Group(旧LGG)」が運営する、事業開発を加速させたい企業様向けの会員制メディア「LGG Research」を展開中。


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