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メタバース空間におけるアバター同士のトラブルには、どのような法律が適用されますか?

Web3やブロックチェーン技術に関して、よくある法規制の疑問に「法律事務所ZeLo・外国法共同事業」の弁護士がワンポイントで糸口となる考え方を紹介します。Web3事業開発のヒントにぜひご活用ください。

Q:メタバース空間におけるアバター同士のトラブルには、どのような法律が適用されますか?

A:アバター同士のトラブルには、適用される法令が複数想定されます。また、ユーザーなどが作成したデジタルコンテンツに関するトラブルもあります。

アバターに対するトラブル
まず、アバター同士のトラブルとしては、以下のような行為が挙げられます。それぞれ典型的な適用法令も併せて記載します。

(1)わいせつな表現によるトラブル
→わいせつ物頒布等罪、いわゆる児童ポルノ禁止法等による規制の対象となりうる

(2)差別的な表現や誹謗中傷
→名誉毀損罪、侮辱罪等による規制の対象となりうる

(3)プライバシー情報の公開
→プライバシー権侵害による損害賠償請求の対象となりうる

(4)脅迫、威圧的言動
→脅迫罪、恐喝罪等による規制の対象となりうる

(5)痴漢、のぞき行為
→いわゆるストーカー規制法や各都道府県の迷惑行為防止条例が規制しているが、原則として適用なし
※ただし、現実空間の人間に対してその行動を監視しているなどとつげる行為が伴うと規制の対象になりうる。

(6)身体的な暴力
→暴行罪や傷害罪による規制の対象となるが、これらの罰則は現実空間の人間に対して成立するので、原則適用なし
※精神的障害を生じさせる行為(典型的なPTSDなど)には傷害罪などが成立する可能性自体はありうる。

以上に挙げたようなメタバース空間上でのトラブルの特徴はデジタル空間上のトラブルであるということですが、上記で挙げたような法令は、現実空間の人間同士による行為を前提にこれまで解釈論が展開されてきました。

そのため、上記(5)(6)にも記載した通り、既存の法令がメタバース空間におけるアバター同士のトラブルに適用されるのかどうか、については個別の事案ごとに専門家に相談する必要があります。

ユーザーなどが作成したデジタルコンテンツに関するトラブル
以上の他、アバターに関して生じるトラブルについては、以下のように、ユーザーなどが作成したデジタルコンテンツに関するトラブルもあります。

・現実空間の人間の肖像のアバターへの盗用
・あるユーザーが作成したアバターの肖像やデザインの盗用や無断使用

これらについては、著作権、肖像権、パブリシティ権、プライバシー権の各侵害の有無が論点となりますが、これらの権利についても、これまで、現実空間の人間同士の行為を前提とした裁判例の集積や解釈論の集積が行われてきたため、アバター自体の肖像やデザインが侵害の対象となる場合には、個別に侵害の有無、適用法令が何かを検討していく必要があります。


監修者:法律事務所ZeLo・外国法共同事業
法律事務所ZeLoは、2017年3月に設立された企業法務専門の法律事務所です。「リーガルサービスを変革し、法の創造に寄与し、あらゆる経済活動の法務基盤となる」を組織ビジョンに掲げ、スタートアップから中小・上場企業まで、企業法務の幅広い領域でリーガルサービスを提供しています。Web3分野においては、黎明期から築き上げた豊富な知見・実績を活かして所内に専門チームを組成し、関連する広範な法規制動向やリスクを把握し、最新の実務に精通した法的アドバイスを提供しています。このほか、グループファームであるZeLo FAS株式会社と税理士法人ZeLoと連携し、M&Aやファイナンスなどにも強みを有しています。


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