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メタバース上で商品やサービスを提供するビジネスを行う場合、特に注意すべき法的論点は何ですか?

Web3やブロックチェーン技術に関して、よくある法規制の疑問に「法律事務所ZeLo・外国法共同事業」の弁護士がワンポイントで糸口となる考え方を紹介します。Web3事業開発のヒントにぜひご活用ください。

Q:メタバース上で商品やサービスを提供するビジネスを行う場合、特に注意すべき法的論点は何ですか?

A:メタバース空間において、ユーザーは、実際の年齢や性別とは異なる設定のアバターを用いて様々な活動を行うことが一般的です。

そのため、メタバース空間で行われる取引は、通常のECサイトを通じて行われる取引に比べ、ユーザーが実際の年齢と異なる年齢を申告して取引を行う事態が、より生じやすいと考えられます。このような観点から注意すべき主な法的論点は、以下の3点があげられます。

(1)未成年者がメタバース空間上で取引を行うことに対する対応
(2)なりすまし取引に対する対応
(3)消費者保護に関する法令への対応

未成年者がメタバース空間上で取引を行うことに対する対応
民法上、未成年者が、法定代理人(代表例は両親)の同意を得ずにした取引は原則として取消可能(民法第5条第2項)とされ、例外的に「詐術」による申込みを行った場合などには未成年者の取消が制限(民法第21条)されています。

この点、経済産業省が公開する「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和4年4月)」は、事業者が設定するサービスの仕様を踏まえて上記の未成年者の取消制限の定めが適用されるか否かが判断されるとしています。そのため、未成年者との間の取引に起因するトラブルを防止するためには、サービスの設計段階から専門家と相談の上、検討を行う必要があります。

なりすまし取引に対する対応
たとえば、「Aさん(なりすました人)は、友達のBさん(なりすまされた人)のIDとパスワード、そしてアバターを利用してメタバース空間X内で使用できるアイテムYを購入した」という事例を基にして考えてみましょう。このようななりすましによる取引が行われた場合、原則としてAとアイテムYの販売者との間では契約は成立しません。

ただし、民法上、上記の例でいうアイテムYの販売者の保護と本人(上記の例でいうAさん)の保護のバランスをとるため、様々な例外規定があり(たとえば民法第110条など)、このような例外規定が適用されると、AさんとアイテムYの販売者との間に契約が成立することとなります。

このような、なりすましによるメタバース上の取引に起因するトラブルを防ぐためには、利用規約などで、IDやパスワードなどの基本情報の貸出しを禁じる、本人確認や二段階認証などの技術的対応を採ることが考えられますが、どこまでの対応をとるのかについても専門家と相談しながら検討することになります。

消費者保護に関する法令への対応
まず、メタバース空間内においてEC事業を行う場合には、多くの場合、特定商取引法(以下「特商法」といいます。)上の「通信販売」に該当します。

そのため、事業者側は、特商法に基づく広告規制への対処(いわゆる特商法に基づく表示との作成などです)、購入に当たってのいわゆる最終確認画面表示内容に関する規制(たとえば、商品の販売価格や商品の引渡時期などの記載です。)への対処などを検討する必要があります。

その他、消費者契約法に基づく規制への対応(たとえば、事業者が消費者に対して負う損害賠償責任の免責の範囲には制限がありますので、利用規約等で事業者側の免責を定める際には対応をする必要があります。)も検討する必要があります。


監修者:法律事務所ZeLo・外国法共同事業
法律事務所ZeLoは、2017年3月に設立された企業法務専門の法律事務所です。「リーガルサービスを変革し、法の創造に寄与し、あらゆる経済活動の法務基盤となる」を組織ビジョンに掲げ、スタートアップから中小・上場企業まで、企業法務の幅広い領域でリーガルサービスを提供しています。Web3分野においては、黎明期から築き上げた豊富な知見・実績を活かして所内に専門チームを組成し、関連する広範な法規制動向やリスクを把握し、最新の実務に精通した法的アドバイスを提供しています。このほか、グループファームであるZeLo FAS株式会社と税理士法人ZeLoと連携し、M&Aやファイナンスなどにも強みを有しています。


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