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DAO_#6:合同会社型DAOとは何か – DAOで資金調達をする

2024年4月に施行された「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」および改正された「金融商品取引法等に関する留意事項について(金融商品取引法等ガイドライン)」に拠り、合同会社型DAOの設立が可能になりました。合同会社型DAOでは具体的にどのようなことが可能になるのかを解説します。


合同会社とは

今回の制度改正は、2023年4月にまとめられた自民党による「web3ホワイトペーパー」内で、有限責任会社型のDAOを日本で可能にする特別法が提言されたことを受け入れたのが始まりです。その後、政策ハッカソンを含む議論を経て、最小限の制度改正と法解釈で合同会社型DAOを可能にする案がまとめられていきました。なお、DAOを有限責任会社として法人化できる制度は、すでに米国ワイオミング州(2021年~)等で事例自体はありました。

合同会社型DAOの前に、合同会社とは何かを簡単に解説します。合同会社は2006年の新会社法により設けられた、所有と経営が分離されていない会社(持分会社)の形態の一つです。出資者(社員)が経営を行い、原則として全員一致で定款変更などを行い、社員自らが会社の業務を執行します。英米における有限責任会社(LLC : Limited Liability Company)を参考にして設けられ、社員全員が自分の出資分だけの責任を負う有限責任を持ちます。さらに加えると、債務者から直接弁済の追及を受けない間接有限責任を負います。

合同会社は所有と経営が一致していることから迅速な意思決定が可能で、特に小規模なビジネスやスタートアップに適しているとされています。また、数々の大手外国企業の日本現地法人がこの形態をとっていることからも知られています。

合同会社型DAOとは

■DAOが法人格を持てる?

もしDAOをそのまま法人化できるとすれば、日本において新たな法人の形態が生まれたことになりますが、今回はそのような法改正は行われていません。改正されたのは金融商品取引法に関わる内閣府令(金融庁は内閣府の外局であるため)およびガイドラインであり、あくまで後述する合同会社の「社員権トークン」(ガバナンストークン)や「別トークン」の扱いが整理された形になります。

■実際には、合同会社のDAO的な拡張

合同会社型DAOは、既存の合同会社の枠組みにブロックチェーン技術を組み合わせたものと言えます。一定の条件下で社員権を表すトークン(社員権トークン)やその他のトークン(別トークン)を発行することで資金調達ができ、また、トークンの保有者によるガバナンスを行えます。条件については専門家に相談するなどして、慎重に検討する必要があります。

一定の条件下で、合同会社のトークン化された社員権が、より厳しい規約が設けられている一項有価証券ではなく、二項有価証券(みなし有価証券)であると整理されています。つまり、自己募集に係る業規制や開示規制(50%超有価証券投資の場合を除く)が適用されない形となるため、事実上、DAOでの資金調達が可能になります。
なお、合同会社型DAOを始める際には、合同会社としての登記を行うことになります。

■メンバーシップの区分

合同会社型DAOでは、メンバーは大きく分けて2種類の社員と、社員ではないメンバーに区分され、それぞれが特徴づけられたトークンを保有します。

(1)業務執行社員
業務執行社員権トークンを持ち、出資額を超える収益分配が可能です。組織の日常的な運営や重要な意思決定プロセスに直接関与します。業務執行社員は登記される必要があります。業務執行社員権トークンは、相手も業務執行社員である場合のみ譲渡可能です。

(2)その他の社員
譲渡可能な社員権トークンを持ち、出資額を限度として収益分配が可能です。意思決定には投票を通じて参加します。登記されませんが、定款に記載する必要があります。

(3)社員ではないメンバー
社員の地位とは明確に区別されて発行され譲渡可能な「別トークン」を基本的に持ちます(トークンを保有せずにDAOに参画する形態もあり得ます)。具体的なサービスや貢献に対する報酬として別トークンを受け取りますが、必ずしも経営上の意思決定には参加しません。その人が議決権を持つかどうかは、そのDAOの設計に依存します。

別トークンは社員も保有できます。

合同会社型DAOにおけるメンバーシップの区分

合同会社型DAOの応用事例

今回の制度改正を受けて、多くの合同会社型DAOが設立されています。その中の例として、日本初の大学DAOと言われる「iU DAO」を紹介します。

iU DAOはiU(情報経営イノベーション専門職大学)の在学生・第1期卒業生が主体となり、「合同会社iU DAO」として設立したものです。同窓会的な活動を皮切りに、従来受益者でしかなかった学生が、大学や学生生活への貢献活動に取り組み、インセンティブを受けることが可能となるような、学生による大学自治を目指した取り組みです。

合同会社型DAOは新しい組織形態か

さて、合同会社型DAOは新しい組織形態なのでしょうか。もっと深く問えば、DAOは新しい組織形態なのでしょうか。

日本において、最小限の制度改正と法解釈により合同会社型DAOが実現できたということは、そもそも合同会社とDAOに親和性があったことを示しています。DAOは参加型の組織であり、所有と経営が一致しているのが特徴の一つですが、その特徴は合同会社そのものに当てはまります。DAOは何か新しい組織の在り方をもたらすものというより、合同会社やLLCをデジタル化しただけではないのか、という観点も大事ではないでしょうか。例えば、先に紹介した合同会社iU DAOも、単に学生により合同会社を設立しても、同様の効果を期待できたかもしれません。

合同会社と従来からあるDAOを比べると、両者にはそもそも親和性があったことが見て取れます

また異なる観点からは、合同会社の設立に今回の内閣府令の改正が組み合わさることで、ある情報技術(例えば、業務執行社員権トークンの譲渡は相手も業務執行社員である場合のみにするなど)による措置を実装することが特定の形態を持つ会社の設立要件になる、という世界が到来したとも言えます。これは今後、社会において様々な自動化が浸透していく上での一つのステップだと言えるかもしれません。

The author generated this text in part with GPT-4, OpenAI's large-scale language-generation model. Upon generating draft language, the author reviewed, edited, and revised the language to their own liking and takes ultimate responsibility for the content of this publication.


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