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ブロックチェーン入門_#13:ブロックチェーンの課題解決になるか - プルーフ・オブ・ステーク編

Ethereum (イーサリアム)が「プルーフ・オブ・ワーク」を捨てて移行したという「プルーフ・オブ・ステーク」とは何でしょうか。それはブロックチェーンの課題を解決する鍵となるのでしょうか。プルーフ・オブ・ステークの概念や安全性について解説します。


プルーフ・オブ・ステークの基本概念

スマートコントラクト の実行プラットフォームであるEthereumは、2023年9月の大型アップデートにより、それまでのプルーフ・オブ・ワークに基づく仕組みからプルーフ・オブ・ステークに移行しました。

プルーフ・オブ・ステークは、以前からプルーフ・オブ・ワークに代わってブロックチェーンを効率的に動かせる可能性がある仕組みとして様々な取り組みの中で採用されてきましたが、Ethereumではそうした経緯を踏まえて慎重に研究開発を行ってきました。

■ステーク(デポジット)とは

ここでのステークとはETH(イーサ)のデポジットのことです。ブロックチェーンの維持作業に参加し報酬を得たい参加者は、32ETHをデポジットしてバリデーターとなります。

■バリデーターと報酬の仕組み

バリデーターはアルゴリズムにより任命されてブロックを提案したり、正しいと考えられるブロックに対してデジタル署名により証言をしたりします。

こうした仕事を遅延なくこなすことで、バリデーターはETHによる報酬を得ることができます。

■ペナルティーと攻撃に対する制裁

一方、仕事をさぼるとペナルティーがあり、報酬として得られたであろう額が逆にデポジットから消却されます。

また、ブロックを二重に提案するなどの攻撃を試みると制裁を受け、大きな額がデポジットから消却されることに加え、バリデーターの役目から追放されます。同じ識別子を持つバリデーターは二度と復帰できません。

プルーフ・オブ・ステークとプルーフ・オブ・ワークの比較

■ブロック生成の違い

プルーフ・オブ・ワークではダイジェストの計算によるくじ引きにマイナーが当たることでブロックが生成されます。いつ、誰がブロックの作成に成功するかは(もちろん単位時間当たり何回計算できるかに依りますが)偶然によって決まります。

一方、現在のEthereumでは時間を12秒ごとのスロットに区切り、ランダムに選ばれたバリデーターがスロットの中でブロックを提案するようにしています。

■トランザクションの確定時間

プルーフ・オブ・ワークではブロックが連なることで過去のブロック(の中のトランザクション)が承認されたことになり、そのブロックが有効であり続ける確実性は上昇していきますが、原理的にはトランザクションが確定することはありません。

一方、現在のEthereumでは、6分半ほどで全員に役目が回ってくるバリデーターの委員会メンバーが、スロットごとにブロックの正当性に署名を行います。そして何事もなければ (攻撃等がなければ)、最長で13分弱でブロックに含まれるトランザクションは確定することになります。

■電力消費の違い

現在のEthereumでは電力コストをかけた競争とも言えるプルーフ・オブ・ワークを行わないので、電力消費が著しく減少しています。

シャーディングについて

■シャーディングの概要

シャーディングは、スループット を向上させるための施策の一つです。Polkadot(ポルカドット)等のブロックチェーンでは先行して実装が進んでいますが、Bitcoin(ビットコイン)やEthereumにはいまだ実装されていません。

ブロックチェーンでは従来、全マイナーないしバリデーターが全てのトランザクションの検証を行っています。シャーディングは、検証の対象を「シャード」と呼ばれる部分に分け、分担して検証に当たる仕組みです。

これにより、同じ計算力を持つネットワークでも、単位時間当たりに処理できるトランザクションの数を増やすことができ、スループットが向上できます。

■プルーフ・オブ・ステークがシャーディングを可能にする理由

シャーディングのアイデアは以前からありましたが、プルーフ・オブ・ワークでは参加するマイナーが匿名かつ自由参加のため、シャードごとに処理能力の差が生じ、その差を利用した攻撃を受ける恐れがありました。

一方、プルーフ・オブ・ステークでは、デポジットを行ったアカウントを用いてアルゴリズムがバリデーターたちを仮名(かめい)で管理できます。デポジット額相当でシャードごとに均一な数のバリデーターを割り当てることができ、攻撃を防止できます。

プルーフ・オブ・ステークの安全性

■1/3以上の悪意ある参加者の問題

Ethereumのプルーフ・オブ・ステークでは、32スロットの単位(「エポック」と呼ばれます)で、ブロックを確定させるためにデポジット総額の2/3以上に相当するバリデーターからの署名が必要です。逆に言うと、悪意のある参加者がデポジット総額の1/3未満であれば確定が起きていきますが、1/3以上になると確定が起きなくなり、Ethereumに対する信頼が損なわれることになります。

■ネイティブトークンの価格との関係

ブロックの確定が起きなくなると、マジョリティ側に署名しなかったバリデーターからはデポジット額の一部の消却が起きます。それにより持続的に悪意のある参加者がデポジット総額の1/3以上を占めないようにしています。

しかし、ETHの市場価格が安くなれば、継続してデポジット総額の1/3以上を担うことがそれだけ容易になります。

プルーフ・オブ・ステークは、多くの面でブロックチェーンを改善していると言えるかもしれませんが、根本的な課題である、ネイティブトークンの市場価格が高い間だけシステムが安全に動作できるという問題を解決するものではありません。

次回はプルーフ・オブ・ステークと同様、ブロックチェーンの課題を克服する主要な概念の1つである「レイヤー2」について解説します。


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