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エッセイ

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山﨑祐介のエッセイ集です。
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#育児

あの時、君が褒めてくれたから

「山崎の作文、めっちゃ泣けたんだけど!!」  すれ違いざま、興奮気味に感想を投げ付けてくれたのはコトミだった。  読者の感想を待っていた私は、「え?そう?」なんて平静を装いながら、期待していた反応があったことに手応えを感じた。  あの冬の日、私は一つの宝物を手に入れたのだ。  私は現在37歳。自営業をしながら会社員の妻と3歳になる息子との3人暮らしだ。息子が生まれてからというもの、育児が私の頭の半分を占めている。  息子が伸び伸びと成長するにはどうすればいいか、それ

育児休業を終えるとき

息子のいないリビングには、散らばったオモチャが寂しげに転がっている。 私の育休が始まってから6ヶ月、この部屋がこんなに静かに感じたのは初めてだった。 雪国にも、桜の季節がやってきた2019年4月。息子は保育園で新しい生活をスタートさせた。 初登園の朝、息子は思いの外あっけなく、先生に抱かれて園の奥へ行ってしまった。 これで6か月に渡る育児休業は一旦の区切りとなる。息子と2人きりで過ごした日常は、予想より遥かに軽い足取りで去って行った。 自宅で一人、呼び出されることを