Giraffage-Computer City:溶融する愛
GiraffageによってPerfumeのコンピューターシティは完全に崩壊してしまった。原曲よりテンポダウンしヴォーカルの音程も下げることで、キラキラと輝くポップな世界で願う健気な愛から、ダウナーでドロリと纏わりつく狂気さえ孕んだ愛の歌へと昇華している。計算崩壊したコンピューターシティを見事に表現してみせる、その計算は完璧だ。
Giraffageはサンフランシスコを拠点に活動する音楽プロデューサー、Charlie Yinのソロプロジェクトで、2011年頃からネット上でトラックを発表している。詳しくはPLANCHAの紹介ページを参照されたい。登場以降、彼は現在までドリーミーなエレクトロポップをリリースし続けている。
PLANCHAのアーティスト紹介ページ:
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/artists/giraffage/
僕が彼の楽曲に初めて触れたのはおそらくXLR8Rの記事だったと思う。
XLR8R:
10年代前半はPichfork、Stereogum、XLR8Rなどの音楽サイトで日々最新の楽曲を追っていた時期で、チルウェイブ、ウィッチハウス、ダブステップなどを好んで聴いていた。そんな中で出会ったアーティストのひとりがGiraffageだ。先のPerfumeのコンピューターシティのリミックス然り、イージーかつドリーミーだがどこか寂しげであったり、あるいは毒を孕んだような個性的な楽曲に強く惹かれた。またFeel Good Lost制作の"Even Though"(XXYYXXとのコラボ作品)のMVも秀逸で、郷愁と混乱を同時に体現するような映像によって楽曲が別の強度を得ている。
Giraffage & XXYYXX - "Even Though":
一方Perfumeとの出会いは06、07年頃で、大学の先輩に熱心なファンがおり、強く勧められて聞いたのが"リニアモーターガール"だった。僕は先輩ほど熱心なファンにはなれなかったが、中田ヤスタカの楽曲は好んで聴くようになった。エレクトロポップに傾倒していったのもこの時期だったと思う。その後Perfumeに対してはゆるく関心を持っている程度であったが、2013年の『LEVEL3』で大きな転換を遂げた後のリリース作は積極的に聴いている。
Perfume『LEVEL3』:
さて愛についての歌は多いが、それらは客観的に、換言すれば静的に愛を外部から観察するように歌われる。Giraffageのコンピューターシティは溢れ出す好きという感情で楽曲ごと溶かし切って愛そのものへ直接的に触れようとする。それはおそらく内在的に愛を歌うことなのだ。このリミックスにおいてGiraffageは原曲を減速すると同時に加速しており、このアンビバレントが末期的な「こんなにくるしいの」へと集約される。溶け出してしまった愛の末路をレーザーサイトが追っているような感覚。はたして僕らは今この瞬間愛に触れる。
了
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