見出し画像

上を向いて歩かなくてもいいかも

小学生の頃
ふと、自分は下を向いて歩きがちだと気づいた。登校、下校、移動教室でいつも視線が下なのだ。

何となくそれを良くないことかもしれないと思った私は、視線を上に上げて歩こうと決めた。

視線を上げると、景色が広い。今まで床や道、電柱くらいしか見えなかったのが、空、周りの住宅、電線に止まっている鳥が見えるようになった。気分も晴れやかになって、これはいいと満足げに歩いていた。

ある日、友達と下校していていつも通り視線を上げることを意識して歩いていると、

「あ!」

と突然友達が叫んで、私の腕掴んだ。

「え?」

私はそう言ったと同時に、足に違和感を覚えた。

なんか、柔らかいものを踏んでいる気がする。

恐る恐る足元を見ると、
私は犬のフンを踏んでいた。


「うわー、、、」

私はそう言って半歩下がり、思わず友達の顔を見た。

「ごめん、気づいてると思って」

友達は申し訳なさそうな、心配そうな顔をして言った。

「いやいや、全然そんな、、」

と言い、私は片足を引きずって、靴についたフンを道に擦りつけるように歩き始めた。
友達も、横で何事もなかったかのように歩き始めた。


帰宅後、まだフンを踏んだことについて考えていた。

あれは、私が上を向いていなければ起きなかったことだ。前みたいに下を向いて歩いていればフンに気づいて避けていたに違いない。そう、上を向こうと意識して歩いていたからフンに気づかなかったんだ。いやー、ついに踏んだか。フンを。うん、でも上を向いて歩くことは全然悪いことではないよね。気分も晴れやかになるし。いや、そんな歩き方を続けていたら今日みたいなことがまた起きるかも。でも、空とか鳥とか見れるから上を向いて歩くのは楽しい。待てよ、下を向いていても生えている花や草を見つけることができて、それはそれで楽しい。でもいやそれでも…………

頭の中で上を向いて歩いたほうがいいと言う自分と、下を向いて歩いたほうがいいと言う自分がいる。結論は出ない。

上を向いて歩こうという気持ちは大事だが、たまに下の方にある大切なものに気づかないこともある。犬のフンとか蝉の死骸とかミミズとかね。だから、程々に下を向いて歩くのもいいかもしれない。

ね。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?