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この猫達のおかげ

昨年12月、我が家に猫がやってきた。
友人の友人からの依頼で、二匹を一年間預かることになった。
二匹とも成猫で、トイレや爪とぎ、タオル類なんかも一緒に託してくれた。買い置きのキャットフードと猫砂も一緒にもらったので、ほとんど何も準備しないで済んだ。
我が家が事前に準備したのは、床置きしていた雑多なものを断捨離したことと動線をよくしたこと、ゴミ箱を撤去したことくらいだ。ビニールを噛み噛みする感覚が大好きで、そのまま誤飲するらしく、蓋付きゴミ箱以外は使わない方がいいとアドバイスを受けたからだ。

我々は比較的スムーズに共同生活に移行できたと思う。
もちろん彼らは最初、姿を隠せる場所に篭りがちだったし、こちらも構いすぎず、知らん顔で過ごすことにした。
幸い、いつもの食器に盛られたキャットフードを食べてくれたし、いつものトイレを理解して用を足してくれた。
兄猫が初日の夜に私のベッドの枕元で小をしたのが、ささやかな反抗であったと言えるかも知れない。
その夜以降は、トイレ以外の場所で用を足すことはないので、テリトリーの意思表示とかトイレ掃除が行き届いていなかったとか、とにかく「俺の場所!」アピールの一種だったのだろうと思う。
夜中に耳元で「ピシャッ」と水音が聞こえたときはさすがに一瞬で覚醒したが、むしろ猫以外の何者かが発した音じゃなくて良かった。この猫達のおかげだ。

小学生の頃から猫がいる生活に憧れていた。
通学路でたまに会う猫の向かいにしゃがみ込み、猫語を真剣にメモしたこともあった。
40年来の夢が思わぬ形とタイミングで叶った。
保護猫ちゃんを迎え入れるために、一年くらいかけて準備をしようかと思っていた矢先の提案だった。
思いは通じるのだなぁと思った。
仕事の報酬とか、やりたい仕事とか、もっと真剣に思いを込めて思おうと思った。この猫達のおかげだ。

この猫達のこんなに軽くて儚い存在は、子供達の赤ちゃん時代を思い起こさせる。
人間の赤ちゃんと違って、この猫達は放っておいても勝手にご飯を食べてくれるし、トイレも自分でしてくれる。
生まれたての人間のなんと手間のかかることよ……とティーンエイジャーになった子供達に 説教 解説したりする。この猫達のおかげだ。

ペットを飼うことは、母が嫌がったのだった。
「ペットは抜け毛がね…」と困った顔を見せる母に、それ以上の要求はできなかった。
まぁ、「結局お母さんが世話することになるんだから!」というのも、今ならわかるというものだ。
確かに布製のソファーも、その上にうっかり置きっぱなしにしてしまった服も猫の毛まみれだ。
毛まみれにしたくないからすぐに片付ける。掃除もまめにする。この猫達のおかげだ。

この猫達は上海で生まれた保護猫ちゃんで、2021年の春に10年住んだ上海を離れて、はるばる台湾にやってきた。
検疫も済んでやっと一緒に暮らせるようになった友人の友人のもとに、一年間の上海赴任命令が下りたのだという。
環境も違う、気候も違う新しいおうちに馴染んだばかりなのにまた移動…検疫…一年後にはまた検疫…はさすがに可哀想だということで、預かってくれるところを探していたのだと言う。
我々は、一年間のつもりで預ける/預かるけれど、猫達の幸せを最優先に、このまま家族で居続けることも選択肢に入れましょう、ということで同意している。

この猫達は、上海で生まれて台湾人ママと家族になって、亜熱帯の台北に連れてこられて、馴染みのない”日本語”とかいう言語を話す人間達の住む窩に連れてこられた。とてもとても奇異なご縁で私と家族になった。この猫達のおかげで、家の中の気配が変わった。
大抵の服に毛がついてたり、爪が引っかかって穴開いたり、爪切りの段取り悪くて威嚇されたり、所かまわずゲロ吐かれたり、夜鳴きで起こされたり、満腹のお腹の上で踏み踏みされたり、ノートパソコンを座布団代わりに座ってたりするけど、この猫達がうちに来てくれて本当に良かった。
二匹一緒で良かった。
この猫達がいるうちに、もう一匹、台湾の保護猫を迎え入れられたらいいなと思っている。

人生も折り返し地点にきた私だけれど、新しいことをたくさん学べたし、これからも学んでいく。
この猫達のおかげだ。


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