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ルックバック~『チェンソーマン』の藤本タツキ先生最新作~

藤本タツキ先生の
「ルックバック」という漫画を読んだ。
まるで1本の映画を見終わったかのような、見応えのある作品だった。

【あらすじ】

自分の才能に絶対の自信を持つ“藤野”と、
引きこもりの“京本”。
田舎町に住む正反対の2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れ、並んで夢見た未来はいつしかすれ違い、そして一。

【感想】

「時代を抉る青春物語」という謳い文句通り、色々と抉られました…。
また、キャラクターも大変魅力的。
以下に感想を記します。拙い文章ですが、御容赦くださいませ。

藤野と京本、2人の少女が織り成す物語である。
自分の才能に絶対の自信を持つ藤野。
圧倒的な才能がありながらも自信が持てず、藤野に憧れる京本
という、正に正反対な2人。
しかしお互い同じ夢を抱き、惹かれ合う。

(以下ネタバレ)
この物語を題名の「ルックバック」という言葉から見て、語っていきたい。
「ルックバック」とは、「振り返る、追憶する、背中を見る」という意味があるそうだ。

今回は、題名からお話を読み解いていきたいと思う。

①追憶したのは…

途中までは、
同じものを目標に突き進んでいた2人が、いつしかすれ違う。そして別々の道を歩み出す。

どちらもお互いのことが忘れられず、刹那的な2人の思い出を追憶する日々。
そんな2人がひょんなことから邂逅し、再び夢を共に追い始める。

言ってしまえばそういったよくある話なのかと思っていた。途中までは。

そこは、流石藤本先生。頭をぶん殴られるような衝撃の展開。

もし、あの時京本を連れ出さなかったら、助けられたら…最後に追憶したのは藤野だけだった。

そして、振り返った先にあったかもしれない未来(2人での漫画連載を再開する)を空想しながら1人で漫画を描くラストの藤野の姿が哀しい。

②背中を見ていたのは…

ポジティブな性格から来る自信なのかと思いきや、実は努力家の藤野。
全てを絵に捧げ、絶大な絵の才能がありながら藤野の背中を追い続ける京本。
構図としてはこのような関係性の2人。

この作品には藤野が背中を向けて絵を描くシーンが多く出てくる。京本が藤野に憧れの念を抱いていることの象徴だろう。

しかし、背中を見ているのは京本だけではない。藤野も京本に憧れ、京本の背中を見ている。
藤野は、小学校4年生にして自分の漫画の才能に誇りを持っていた。そんな中、学年新聞に自分と同じく連載を始めた、不登校の京本が描いた漫画を見て、絶対的な才能を目の当たりにする。
ここで折れてしまわないのが藤野のいい所で、京本に追いつくために努力を必死に積み重ねる。

お互いにお互いを認め、自分にないものを求め、同時に自分と同じものに惹かれ合っているのだ。

中学生になり、「藤野キョウ」という名前で一緒に漫画を描き始めた2人。佳作に入ったり、連載をしないかと持ちかけられたりと周囲からも才能を認められていく。

しかし、進路選択で2人はすれ違う。
背中を向けながら「私についてくれば全部上手くいくんだよ?」と呟く藤野。
藤野の背中を見ながら「藤野ちゃんに頼らないで1人の力で生きてみたいの。」と告げる京本。

 きっと藤野は2人で並んで夢を見たかった。その証拠に1人になっても「藤野キョウ」という名前で漫画を描き続けている。
 京本は、夢を追い続ける憧れの藤野の背中を見るうちに、自分の夢が広がっていった。でもその先には、周り道をしても藤野と並んで同じ夢を見たいという気持ちがあっただろうと思う。
あんなことにならなければ。

………………………………………………………

③まとめ

「ルックバック」を読んで、改めて藤本タツキ先生は最高だ…と心から思った。このような素晴らしい作品を世に出してくださりありがとうございます。

 と、同時に夢を追い求めることのなんて尊いことかと痛感した。
私にも夢がある。夢とは考えるのは易しいが、追い求めるのは難しい。
でも今からでも遅くないのかもしれない。
私にも背中を追いかけたい人がいる。
幸せなことだ。
生きて、私の目の前にいてくれている。
生きている内に追いかけてみたい。
できれば、並んで立ってみたい。
そんな思いにさせてくれた。

 将来、振り返った時に「ああ、この作品のお陰で…」そう思えるような人になっていたいものだ。

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