川野浩志(獣医師/皮膚科医)

獣医学博士 / 日本獣医皮膚科学会認定医 / 東京動物アレルギーセンター(https:…

川野浩志(獣医師/皮膚科医)

獣医学博士 / 日本獣医皮膚科学会認定医 / 東京動物アレルギーセンター(https://taac.jp) / 九州動物アレルギーセンター(http://www.pal-animal.com) / 福岡動物アレルギーセンター (http://live-ac.com

最近の記事

腸内細菌が食物アレルギーを予防するのか?

犬のアレルギー性皮膚疾患と言えば「アトピーが多いいんでしょ?」と思われていますが、臨床現場の最前線で犬と猫のアレルギーを診察して感じることは「実は食物アレルギーがめちゃくちゃ多い」と言うことです。アトピー性皮膚炎の治療は様々ですが、食物アレルギーの治療はシンプルで「ダメなものを食べない」です。 火事の出火元を的確に見極め消化活動をしなければならないのに、ガソリンを撒き散らしながら消防車で放水活動してもなかなか鎮火しないのと同じ原理です。 食物アレルギーの出火元(原因トップ3)

    • 犬と猫の腸内細菌叢の主役はヒトと同じか?

      人間の赤ちゃんは母親の胎内で基本的に無菌の状態で過ごすので生まれて初めてするウンチには細菌がいませんが、赤ちゃんは産道を通過するときに母親から菌を受け継ぎ、生まれて数時間のうちには腸内に細菌が定着を始めます。その後ビフィズス菌(Bifidobacterium)がガンガン増えます。大人になるとバクテロイデテス(Bacteroides)をはじめユウバクテリウム(Eubacterium)、ビフィズス菌(Bifidobacterium)などの菌が増え安定していきます。やがて加齢ととも

      • ペットの腸内細菌と攻撃性

        世界中の多くの研究者が腸内細菌にターゲットを絞り様々な仮説を立て、検証を繰り返し、裏付けをとった腸内フローラに関する論文が毎日ガンガン投稿されています。 そんな中、2019年に犬の腸内フローラと攻撃的な行動が関連するという衝撃的な結果がアメリカのオレゴン州立大学の研究チームが発表しました。 闘犬場からレスキューされアニマルシェルターに保護されている21頭の攻撃性のある犬(aggressive dogs)、つまり激おこプンプン丸の犬と10頭の攻撃性のない犬(non-aggre

        • ペットの腸内細菌と健康~善玉菌を増やす2つの方法~

          「腸内フローラ」や「腸内細菌」という言葉をよく聞くようになりました。この理由は、今までなかったスゴイ測定器(次世代シーケンサー)が世界中で使えるようになったことが大きな理由の1つです。 例えば海の中にどんなお魚がいるか知りたい時に、これまでは岸壁からエサを垂らして釣りをしてお魚が釣れた時点で「海の中にお魚がいる」という事実を知ることができました。ところが次世代シーケンサーが登場し、海水一滴で「海の中にお魚だけではなく海藻や甲殻類などどんな生物がどのくらい生息しているのか?」

        腸内細菌が食物アレルギーを予防するのか?

          ペットに水素水を与える意味はあるか?

          「りんごを放置しておくと、茶色になる」という現象は、化学的な表現では、「りんごが酸化した」と言います。 医学界では、今日までの様々な医学や生理学研究によって、活性酸素やフリーラジカルによる体の酸化が、ガンや動脈硬化をはじめとする多くの生活習慣病や慢性疾患、さらには、老化そのものに深く関わっているというのが定説になっています。 活性酸素は、アンパンマンに例えると悪役バイキンマン的なイメージしかありませんが、実際はウイルス感染の初期はアンパンチを出すなどよい働きもしてくれて

          ペットに水素水を与える意味はあるか?

          中学2年生でも理解できるアレルギー・免疫学の仕組み

          外部から体内に細菌、ウィルス、寄生虫などの犯人(抗原)が侵入してくると、体内をパトロール中の警察官(マクロファージ)が犯人を逮捕してバラバラにします。さらにサイレン(サイトカイン)を鳴らして警告すると次々に仲間の警察官(好中球やNK細胞)が集まり一緒に協力して犯人をバラバラにします。 しかし、犯人が強敵で倒せなかった場合は、警察官は白バイをぶっ飛ばして交番(リンパ節)に戻り、司令官の刑事(T細胞)に顔や服装など犯人の情報を伝えます。情報を受け取った刑事(T細胞)はただちに戦

          中学2年生でも理解できるアレルギー・免疫学の仕組み

          新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から身を守る3つの壁

          多くの動物は、体内に敵(細菌やウイルスなど)が侵入しても感染せず病気にならないし、もし発病しても多くは治癒します。これは生体が敵(細菌やウイルス)を排除するシステムを持っているからです。この外敵に対する整体の防御には3つの壁が存在します。 1つ目の壁:皮膚や粘膜による物理的な壁 皮膚や粘膜という壁を敵が突破して体内に侵入すると「感染」となります。これを防止するには飽きるほど聞いた「密閉空間」、「密集場所」、「密接場面」を避けて手洗いやマスクで応戦するしかありません。 2つ

          新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から身を守る3つの壁