ローソンがアバターワークを導入。アバターワークの今までとこれからの未来を予測してみました。
皆さんこんにちは。VRC note編集長の八重樫です。
先日、ローソンが新しく立ち上げる都内の店舗にアバター接客を取り入れるという発表がありました。
11月末の新規オープンに向けて、初期は10〜30名の採用を目指すそうですが、ゆくゆくは1000名のアバターワーカーを育てたいということだそうです。
アバターを用いた接客というのは、すでに事例がいろいろありますが、これから先の未来として
・アバターから接客を受けること
・アバターとして働くこと
これらが恒常化していくのか?どんな未来がやってくるのか?について考察してみたいと思います。
■そもそも今までどんなユースケースがあったのか?
今までもアバターでの接客に踏み出す企業はありました。大きく分けるとユースケースとしては2種類あります。
1.限られた期間や限られた場所でのリアルな場所での活用(期間限定、1店舗限定など)
・飲食店の注文対応での活用
ハワイアンパンケーキで有名なEgg's thinksは、御殿場にある店舗にAIアバターレジを導入しています。アバターに話しかけることで注文ができ、タッチパネルの操作なども必要なく注文ができるので非接触の観点からも良さそうです。
・施設案内などでの活用
次は実証実験として、空港での案内をアバターで行った事例です。中部国際空港内に3カ所モニターを設置し、空港内施設案内やフライト案内などの案内業務を1名のスタッフが遠隔で対応したそうです。
遠隔で複数箇所のアバターを1名で操作できるというのは、人員確保にも繋がりますし、効率化も図れそうです。
こういう案内系の事例は他にもあり、ホテルのフロント業務や、観光案内のスタッフなどをアバターで実施している実証実験もありました。
・対面では話しにくい内容を聞くサービスでの活用
ワコールが2店舗限定で行っているのは、ビューティーアドバイザーがアバターになり接客するという「パルレ」というサービス。通常は店舗でビューティーアドバイザーに試着室で採寸してもらい、下着のフィッティングなどをしながら相談しますが、採寸してもらったりするのは恥ずかしさが伴うものでした。
そこで、ビューティーアドバイザーがアバターとして画面越しにやりとりするサービスを始めたところ、気恥ずかしさが少ないということで、好評を得ているそうです。他人に話したくない、話しにくいことなどは、対面で話すよりもアバターに話したほうが話しやすいということだと思います。
2.オンライン上でのアバターワーク
・バーチャル空間やメタバース内でのアバターワーク
今注目を集め始めているのは、仮想空間やメタバースでのアバターワークです。メタバースでのライブやイベントなどの開催も増えており、会場内での案内など運営がスムーズにいくようにサポートする役割が求められたり、イベント内でのグッズ販売などで販売スタッフが必要になったりするため、アバターワークが少しずつ始まっています。これらの例はVRゴーグルをして身振り手振りも加えて接客をするので、実際に接客を受けているのに近いサービスを受けることができます。
昨年はバーチャル空間で行われた渋谷ハロウィンや、サンリオバーチャルフェスなどで、案内スタッフを募集しアバターで接客をしたそうです。
アパレル企業であるビームスでは、VRChat上で行われたバーチャルマーケットに出展し、アバター店員を店舗に配置したところ、接客を受けたユーザーがリアル店舗までスタッフに会いにくるということもあったそうです。
・バーチャルオフィスの活用
コロナ禍になり、テレワークが普及・定着することで、出社の機会は著しく減りました。そこで課題になるのがコミュニケーションの問題です。チャットやオンライン会議では補えない部分を解消するのが、アバターを使ったバーチャルオフィスのサービスです。
oViceなどいくつかのサービスがありますが、アバターやアイコンを使って会議室に集まって会話したり、広場のようなコミュニティスペースで雑談したり、ビデオ会議などもできるので、Slackなどのチャットサービスと併用して導入する企業が昨今増えているようです。
オンライン会議だと顔をみて話すので疲れますが、声だけのコミュニケーションは気楽にできるので、一人でテレワークするよりも同僚の存在を感じられて程よい距離感で接することができるのが受けているのではないかと思います。
■アバターでの接客は増えていくのか?
ローソンの事例は、恒常的にアバター接客を取り入れ、また多店舗で展開していく構想があるという点で新しいと感じます。今後、アバターから接客を受ける機会は増えていくのでしょうか?
人と人が対面で対応する場面ももちろん重視されていく風潮は消えないと思いますが、オンラインの対応やチャットの対応なども昨今サービス業では増えているので、オンラインでの画面越しの対応やテキストのみのチャットの対応よりも、人を感じられるという点で、アバターを活用した接客は増えていく予感がします。
ローソンは人型のデフォルメアバターを採用していますが、極論をいえば対応してもらえればいいので、人型にこだわる必要はないかもしれません。ただ、やはりコミュニケーションをとる、という点から考えると人型である方が親近感が沸くと思います。また、デフォルメされていたり、動物だったり、アニメ調のアバターよりも、リアルアバターの方が信頼度も増すと思うので、ビジネスシーンではある程度のリアルさは求められるのではないか、と思います。
実証実験レベルでは取り組みが始まっており、例えばコールセンター業務をメタバースで行う、というものもあります。今までは電話やチャットがメインだったお問合せ業務をアバターで行うことで、例えばクレームが減るのか逆に増えるのかなど、エンドユーザー側の心理状況に何か変化があるのか注目したいところです。
また、アバターと話したほうが心理的障壁が低いので、人に聞かれたくない話や、打ち明けにくいことなどはアバターの方が話せるのかもしれません。そういう使い方としては、メンタルヘルスケアや遠隔医療などでも取り入れられていくのではないか、と思います。
そのほか今後の進み方としては現在導入が増えているセルフレジ+アバター接客というのも考えられるでしょうし、AIと連携させて人が介在しなくても簡単な案内はできるようになっていくのではないでしょうか。現に、先日VRChat内でAI接客アバターのお披露目会も開催されており、今後の活用の仕方が気になります。
■アバターで働くことは増えていくのか?
現状の課題として、接客業では人材の確保も問題になっているので、その点からもアバター接客はメリットがあると思います。
人を配置するにはコストがかかりすぎるという場合にも有効なので、例えば過疎地域と端末で繋いでオンラインで対応する、という取り組みもできるでしょうし、コンビニのように深夜まで開いている場合も、働き手が少ない時間に複数拠点を繋いで一人で対応すれば、コストダウンに繋がります。
また、働く場所も関係ないので、さまざまな事情で家から出て働くことが難しい人も、働く選択肢が増えるでしょう。容姿や障がいなどで働くことを躊躇う人も、働けるようになるかもしれません。パソナでは、淡路島にアバターワークの拠点を作るということもしており、島の雇用創出に役立っています。
Vtuberなども増えてきているので、アバターの姿で働くというのは今後普通になっていくのではないでしょうか。
ただ、画面越しのやりとりにはなるので、コミュニケーション能力は求められるのではないか、と思います。人材育成をどう行っていくのか、というのは一つの課題でしょう。パソナの事例やローソンの事例から、どのように人材確保と育成をしていくのかノウハウが広まっていくことを期待します。
■リアルアバターで働く・接客を受ける未来は訪れるのか?
今までのアバター接客の事例は、アニメ調のアバターが多く、リアルさは求められていません。先ほども述べたように、確かにただ普通に接客を受けるだけならリアルなアバターである必要性はないでしょう。
では、どんな場面だったらリアルなアバターが良いのでしょうか?
例えば本人認証と絡めて何かサービスを受けるとか、そういう時にはリアルである必要は出てくるのでは、と思います。
例として社員証や運転免許証と連動するサービスやイベントがあるなら、そういう時は本人であることがわかる方がいいので、リアルアバターという選択肢もあると思います。
具体的には、メタバースでやる入社式や、会社の表彰式などビジネスシーンでの活用は今後出てくるでしょう。リアルな自分自身の方が、現実のコミュニケーションにも繋がりますし、信頼性や安心感があると思います。
あとは企業の代表者や有名人など、知名度のある人が出ていく場合にはリアルなアバターの方が存在感もありますし、信頼性も上がるでしょう。吉本のようなエンタメ事例がまだ多い印象ですが、今後はまた違った活用の仕方も増えていくと思います。
VRCのスキャニングソリューションは素早く大量に撮影するということも可能なので、そういったビジネスカンファレンスなどでの活用も今後増えてほしいと思っています。
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仮にアバターワークが定着していったとすると、飲食店の注文やコンビニの接客など、リアルに人が対応しなくてもよくなる仕事は増えていくでしょう。AIと組み合わせると裏でオペレーターが操作する必要もなくなり、人を介さずとも接客ができるようになっていくと思います。そうなると人の仕事は減ってしまうのでしょうか?
単純な受け答えなどの仕事は確かに置き換わっていくのかもしれませんが、より創造性の高い仕事に時間を割くことができたり、新しいアバターワークの仕組みを考えるようなより高度な仕事にシフトしていくことができるのではないでしょうか。AIが対応できるようにスクリプトを考えるとか、単純解答ではなく場面に合わせて受け答えができるような設計を考えていくのは、実際に接客をしている経験者にしかできないことです。
アバターワークもまだ始まったばかりで、手探り状態ですが、例えば新しい使い方として高齢者や入院患者と遠隔地からアバターを使って話し相手になるとか、不登校や引きこもりなどのメンタルケアを行うとか、そういった接客以外の使い方を考えて実施することで社会課題解決の糸口になるかもしれません。
ローソンの事例を参考に、他の企業がどのようにアバター接客やアバターワークを取り入れていくのか、また、働き方として定着していくのか、ユースケースが広がっていくのかなどの動向を注視していこうと思います。
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