仮想昔話・むちむち山

むかしむかし、おにいさんの家の裏山に、一匹のウサギが住んでいました。
 ウサギは悪いウサギで、おにいさんが会社で働いていますと、
「やーい、巨乳教。Just童貞」
 と、悪口を言って、夕方になるとおにいさんのPCでUnityを起動しアバターの胸を平らにしていくのです。
 おにいさんはウサギのいたずらにがまんできなくなり、PCにワナをしかけてウサギをつかまえました。
 そしてウサギを家の天井につるすと、
「ねえさん、こいつは性悪ウサギだから、決してなわをほどいてはいけないよ」
と、言って、 そのまま仕事に出かけたのです。
 おにいさんがいなくなると、ウサギは人のよいおねえさんに言いました。
「おねえさん、わたしは反省しています。もう悪い事はしません。つぐないに、おねえさんの今作っているアバターの軽量作業をしましょう」
「そんな事を言って、逃げるつもりなんだろう?」
「いえいえ。では、秘伝の技で、おねえさんが今作っている服のUV展開とウェイト塗りとアバター対応作業をしましょう」
「秘伝の技?」
「はい。おねえさんのアバターだけでなく、ティア1のアバターやおにいさんの使っているマイナーアバターにも対応させます。きっと、おにいさんも喜びますよ。もちろん、作りおわったら、また天井につるしてもかまいません」
「そう。おにいさんが喜ぶなら」
 おねえさんは言われるまま、しばっていたなわをほどいてしまいました。
 そのとたん、ウサギはおねえさんにおそいかかって倒れさせ、その隙にPCのプロジェクトを全部ゴミ箱に入れて消してしまいました。
「ははーん。バカなやつ。信じるなんて。貧乳にならないやつのプロジェクトなんて価値ないし、blenderは1ミリもわかんないよ。Unityすら雰囲気で触ってるのに」
 ウサギはそう言って、裏山に逃げていきました。
 しばらくして帰ってきたおにいさんは、倒れているおねえさんを見てビックリ。
「ねえさん!ねえさん!...ああっ、なんて事だ」
  おにいさんがオンオンと泣いていますと、心やさしいタヌキがやってきました。
「おにいさん、どうしたん?」
「ウサギが、ウサギのやつが、ねえさんをこんなにして、逃げてしまったんだ」
「ああ、あの悪いウサギやんね。おにいさん、たぬがおねえさんのかたきをとってあげるよ」
 タヌキはウサギをやっつける方法を考えると、ウサギを遊びに誘いました。
「ウサギくん。作業通話せんか?」
「それはいいな。よし、やろう」
 さて、Unity作業を終えた2匹は、アバターの確認をするため仮想世界へと入りました。
「おや?たぬきさん、今の『むちむち』と言う音はなんだい?」
「ああ、このWorldはむちむち山さ。だからむちむちというのさ」
「ふーん」
 しばらくすると、ウサギのアバターの服が、『みちみち』と悲鳴を上げ始めました。
「おや? タヌキさん、この『みちみち』と言う音はなんだい?」
「ああ、このWorldはpublicだから、誰かのavatarギミックだろうね」
「ふーん」
 そのうちに、ウサギのアバターは震えだしました。
「なんだか、おかしいな。うわ、胸がでっかく...!服も透けて...!!!」
 ウサギは周囲のUserに見られ、社会的信用度(トラストレベル)に大やけどをおいました。
 次の日、タヌキはUnityをこねて作ったツールをもって、ウサギの所へ行きました。
「ウサギくん、アバターの修正用ツールを持ってきたよ」
「ありがたい。まったく、むちむち山はひどい山だな。さあタヌキさん、はやくなおしておくれ」
「いいよ。ほら、これをこうして」
 タヌキはウサギのアバターにギミックを仕込みました。
「うわーっ!やっぱおかしいよ!わたしのアバターはもっと慎ましくて、えろおんなじゃないんだ!」
「がまんしなよ。1度でも変な操作をしなかったと断言できるかい?元に戻すのには時間がかかるんだよ」
 そう言ってタヌキは、用意していたツールでどんどんシェイプキーを追加してウサギのアバターを盛りました。
「うぎゃーーーーっ!」
 ウサギは衝撃のあまり、気絶してしまいました。
 さて、数日するとウサギのメンタルが治ったので、タヌキはウサギを遊びに誘いました。
「ウサギくん。たまにはFriendsOnlyばかりじゃなく、イベントにも遊びにいってみよう」
「それはいいな。よし、行こう」
 Joinしますと、なんだか妖しいオーラの漂うBarのWorldでした。
「ウサギくん、きみはそっちの席だよ」
 そう言ってタヌキは、清楚系おねえさんのキャストと向かいの席に座りました。
 そしてウサギは、好みでありそうなロリ系のキャストと席に座りました。
 会話も弾み、Worldの色味や流れる楽曲によりいい感じの雰囲気となります。
「ウサギくん、どう?キャストさん膝に乗せちゃってさ。楽しそうで良かったよ」
「うん、楽しいよ。タヌキさん、誘ってくれてありがとう。・・・あれ、なんだかキャストさんが大きくなってきてないかな」
 小学生くらいのサイズだったキャストはどんどん大きくなり、なんということでしょう。油ぶっかけたみたいなてかてかのマットキャップにリアルな人肌ノーマルマップのバチクソデカいむちむちえろおんなに変身したのです。
「うわーっ、助けてくれ!性癖が歪む!」
 大あわてのウサギに、タヌキが言いました。
「ざまあみろ。自分の性癖を他人に押し付けるというのはこういうことよ。これからは心を入れ替えてでかでかのむちむちを着て生きていくんやな」
 やがてウサギの性癖は全部溶けてしまい、そのままアバター肉体魔改造沼に沈んでしまいました。

おしまい。

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