世界との距離

COVID-19の影響で、僕の仕事もリモートワークがメインになってもう3ヶ月経った。コンサルティング業は、人とのコミュニケーションが重要ということもあり、当初はどうなるか戸惑いや不安もあったけれど、意外とスムーズに仕事ができている。

今のプロジェクトはクライアントは東京にあるが、うちの会社の中国、インド拠点と協業しながら進めてきていた。東京メンバーはクライアントと毎日対面で会議し、課題の検討をクライアントと一緒に会議室で進め、その結果を中国やインドに伝え、インドや中国はその方針に沿って仕事を進める、という、それが普通のやり方だった。

まず今年の1月に中国オフィスがロックされ中国メンバーがリモートになった。でもプロジェクトの中心点は変わらず東京にあり、「今まで通り」オンサイト=東京、オフサイト=中国、インドという関係で、リモート会議はうちの会社内部の指示を伝える場だった。

それが3月以降、クライアントも含め全てのメンバーがリモートワークを余儀なくされ、当初こそコミュニケーションロスや、伝達漏れ等が発生し混乱したが、それもすぐに慣れた頃、変化が起きた。

今までオンサイトとオフサイト、東京とインド、東京と中国、というように、ある意味主従関係というか、中心が東京にあったものが、ネットの中に移動した。クライアントも我々も、中国メンバーもインドメンバーもみんなリモートになり、会議室がSkypeやTeams、Zoomに変わると、プロジェクトの中心はなくなり、それまでクライアントと密結合していた東京メンバーと国外メンバーの距離は等しく同じに感じ、クライアントも国外も、東京スタッフも等距離の中で仕事を行う感覚になった。

そうすると、今までクライアントと話すのはオンサイトメンバーだけだったところ、国外スタッフも積極的にクライアントとコミュニケーションを取るようになり、オンサイトのスタッフも国外のスタッフとCOVID前よりむしろ密な連携が取れるようになり、プロジェクト全体のスピード感が加速した。

インドはそれなりに時差の壁は存在するが、それでも以前よりもオンサイト側に時間の融通を聞かせられる余地ができ、距離感がグッと縮まった。中国とは時差も1時間しかないので、ほぼオンサイトと同じ距離感で話す事が可能になった。

僕の会社は元々グローバルに展開していることもあり、こういう事態に対して親和性があったのは確かだが、でも自らもリモートワークを始めることによって初めて、国と国との距離の壁が無くなったのを実感したのだ。

国外との距離だけでなく、仕事のやり方も急激に変わった。まず何より通勤時間が無くなったことによって、時間にかなり余裕が生まれた。自分は大体通勤が30分と短かったのだが、そのために身支度を整え、駅に向かい通勤電車に揺られ、というストレスから解放された。仕事中も、とにかく「人を探さなくて良い」というのが嬉しい。今までだったら、それぞれ会議やら作業やらで、プロジェクトメンバーがそれぞれ移動していて、捕まえるのが一苦労だったが、互いの移動時間が無くなったことで、むしろ今誰が何をしているのかがよくわかるようになり、空いている時間にすぐ声がかけられるようになった。全員が等しくリモートになったことで、情報や資料の共有も一元化が一際進んだ。

僕らの世代は、ものすごく変革の連続の中を泳いできた。インターネットが普及し情報はすぐ探せるようになった。メールやスマホでいつでも連絡が取れるようになった。911や地下鉄サリンでテロを身近に感じたし、神戸や東日本大震災で、今ある普通の生活が一瞬にして瓦解してしまうような経験もした。そして今回、中世のペストやスペイン風邪のように、歴史の教科書の中だけのものと思っていたパンデミックというものを初めて目の当たりにし、短期間ではあるが世界中がそれぞれ鎖国をするような体験の中にいた。

すごい勢いでパラダイムシフトが起きている。おそらく、AfterCORONAの世界では、もう以前のようなワークスタイルには戻らないし、戻れない。きっと今まで以上に、想像を超えるいろいろな変化がここ5、6年で起きるんだろうと思う。そんな時、その変化に対して、ストレスを感じるよりも受け入れて、それを面白く感じられる柔軟性を持ち続けて行きたいと思う今日この頃です。

だって、まさかオリンピックが延期になるなんて、1年前は誰も思っていなかったでしょ?(笑)4で割り切れる年、なんて言ってられなくなるよねー。

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