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「ディストピア禍の新・幸福論」はユートピア行の切符だった―グラレコ風イラストで振り返る

 ウェルビーイング、幸福学を研究している研究者、慶應義塾大学大学院教授の前野隆司さんの最新著作。「ディストピア禍の新・幸福論」を読みました。
 グラレコ風イラストで振返りたいと思います。
 一部表現が適切でない部分(他の意見の紹介)、語尾の統一のために修正しました。(2022/05/25)

結論:現在はユートピアでしかない

ディストピア禍の新・幸福論のグラレコ風イラスト

 もっと気楽にウェルビーイングで生きて良い。この本のメッセージを要約するとこうなると思います。
 この本を読んで思ったのは、我々人類はとてつもないユートピアに住んでいるということ。所々の問題はあるが人類の歴史、地球の歴史、宇宙の歴史から見るとほんの些細なこと。
 実際本書には、タイトルに「ディストピア禍」という言葉が入っている。内容についても悲観的なものも多いと思います。
 50年前の自分を思い出してみる。青っ鼻を垂らしていた。ウオッシュレットだけでなく水洗便所すらない。カラーテレビはほとんど普及していなかった。そんな時代である。天然痘はほぼなかったが他の病気は蔓延していたと思います。それら病気もある軽症で致命的なものではなかったという印象です。仮に命を落とすものはそうだと思って覚悟できていたと思います。
 COVID-19は現代の生活習慣がウイルスを凶暴化させてしまったのではないでしょうか。文化や科学の発展により得たウェルビーイングの代償なのだと思います。

 以下、各章は1枚ずつのイラストにまとめてみました。

第1章 前提条件:心はない

意識はVRみらいなもの―全ては幻想である

 気になったトピックは以下の通りです。

  • 全ては幻想

  • 意識は記憶(エピソード記憶)のためにある

第2章 必要条件:死を想う

スポットライトが当たっているのは現在いまだけ―過去も未来もない

 気になったポイントは以下の通りです。

  • 宇宙の年齢138億年を13.8kmに置き換える

  • 東京駅からだと東中野ぐらいの距離

  • ホモサピエンスの誕生は20 cm(20万年前)

  • 枢軸時代は2.5 cm(2500年前)

第3章 幸せの連立方程式

つながることで幸せになれる―人類共通のOSがある

 気になったポイントは以下の通りです。

  • ありのままに!、やってみよう!、なんとかなる!、ありがとう!

  • コンセンサスとアコモデーションの違い(コンセンサスについては記載はない)

  • 創造的な第三の解決案(「7つの習慣」のスティーブン・R・コヴィー)

第4章 解:わたしは地球であり宇宙である

私たちは地球と宇宙と一体である―すべてを包摂

 気になったポイントは以下の通りです。

  • 古代のヒトは『自己と他者を区別はない』と考えていた

  • 農業革命は、人口爆発、エリート層の誕生、食物の劣化→史上最大の詐欺

  • 資本主義は、さらなる格差の拡大につながった

第5章 分岐点:愛するか、滅びるか

全てを愛する―みんなすばらしい

 気になったポイントは以下の通りです。

  • 心の地動説

  • 世界を100%愛することをイメージする

  • 自己利他円満

まとめ

 書名にディストピアとあります。私は筆者としてはより良く生きることができることをあらゆる知見を集めて書いたものだと考えています。
 筆者は研究者です。もちろん当然ファクト、各種研究結果にもとづいて発言しています。一方、本書がスピリチュアルやコーチングなどの本と内容が非常にかぶっていると感じました。著者もそのことについて言及しています。
 ここから分かることは生き残るための知恵は似通っているということだと思っています。統計を用いた科学も、修行により得たひらめきも、各種宗教で生き残った教義、私達に備わっている思い込み・バイアスの多くは、結局のところ同じところに落ち着いてしまうのだと思いました。
 一方、変化の度合いが大きくなってしまったためにフィットしないものが多数発生しているということなのだと思います。
 本書の様にこれまでの知見の根本原理に目を向け、現在の我々にあっているのかどうなのか再評価する。アンラーニングすることが必要だと思います。

他の意見の紹介

 以下は本書中で違和感を感じた部分。別の書物等で示されてる別の意見を紹介していきます。

P.78―ふたつの本能―「怒り」と「共感」

 本書の記述間違いがある訳ではありません。「怒り」と「共感」についてはそのとおりだと思っています。「7つの感情回路」という研究結果があるようです。

7つの感情回路

パンクセップ教授の7つの感情回路とは、SEEKING(ワクワク)、RAGE(怒り)、FEAR(恐怖)、LUST(性欲)、CARE(慈しみ)、GRIEF(寂しさ)、PLAY(遊ぶ楽しさ)である。

未来に熱狂はない:進化の賜物「7つの感情回路」

 私ももともとは「怖れ」と「愛」だと思っていました。「7つの感情回路」はひとつずつ実験でその感情が動物にあることが確認されているらしい。
 7つの感情回路で考えると、「怒り」は「怒り」(恐怖がないと怒りが生じない)と「恐怖」、「共感」には「ワクワク」「慈しみ」「寂しさ」「遊ぶ楽しさ」に呼応するのではないかと思ったりもしています。

P.89―宇宙の年齢(大きさ)

 138億光年という標記がありそこに若干の違和感を感じました。本書の記載については正確だと思っています。宇宙の大きさに関する記述ではないので。
 実は宇宙は膨張等により大きくなっているため観測可能な宇宙のサイズは宇宙の年齢である138億年より大きいはずという論(下記参照)があります。今届いている光は138億年かけて私達に見えています。しかし、それを発した星は現時点だともっと遠くにあるのです。
 私をはじめてとして大多数の人が138億光年が宇宙の大きさ。理由は光より速いものはなく138億年前に地球が誕生したことがわかっているから。となっていると思います。
 本書で観測可能な宇宙のサイズの話をはじめるとたしかに脇道にそれてしまうのでその点は書かないという立場も理解できる。悩ましいところですが「もにょ」っとしたのでコメントさせてもらいました。

地球から「可視」宇宙(宇宙光の地平面)の端までの共動距離は、あらゆる方向に約14ギガパーセク(465億光年)である[3]。これによって、観測可能な宇宙の共動半径の下限が明確になる。もっとも、導入部で述べたように、可視宇宙は観測可能な宇宙よりやや小さいと考えられる。これは、再結合(宇宙の晴れ上がり)以後に放射された宇宙背景放射からの光しか見えないためである。この宇宙背景放射によって、われわれには天体の「最終散乱面」が見えているということになる(重力波によって、あくまで理論上は、この球体の外部領域から、再結合期以前の事象が観察できる)。つまり、可視宇宙は直径約28ギガパーセク(約930億光年)の球体だということになる。

観測可能な宇宙

P.157―投影(プロジェクション)

 本書では「リフレクション」となっているのですが、内容から察するにプロジェクションのことかと思われます。第2版では修正されるとのことでした。(2022/05/25追記)

心理学における投影(とうえい、: Psychological projection)とは、自己のとある衝動や資質を認めたくないとき(否認)、自分自身を守るため(防衛機制)それを認める代わりに、他の人間にその悪い面を押し付けてしまう(帰属させる)ような心の働きをいう[1][2][3]。たとえば「私は彼を憎んでいる」は「彼は私を憎んでいる」に置き換わる[3]。そのひとつに責任転嫁(Blame shifting)があり、たとえば習慣的に失礼な振る舞いをしている人は、いつも他者を失礼な人だと言って回っているケースがある。一般的には悪い面を強調することが多いが、良い投影も存在する。

Wikipedia: 投影

参考資料

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