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『哲学探究』概説

はじめに ウィトゲンシュタイン『哲学探究』を概説する。モチベーションは、第一に、ウィトゲンシュタインの文章が分かりづらく、簡単にまとめたものが欲しいため。第二に、人に説明する手間を省くため。第三に、科学(特に認知科学)と親和的な哲学として有望だと考えるので、その紹介のためである。  本稿についてのご意見、ご感想、ご質問等あれば下記まで。 mail:vozleaf☆gmail.com 要約 先ず以て、『哲学探究』全体を要約することは難しい。書かれた歴史的な背景や、そこにおける

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    • 映画ランキング

      全151本 Sランク(3) 12人の怒れる男 シェフのテーブル(ドキュメンタリードラマ) キング・オブ・エジプト Aランク(2) ノッキンオンヘブンズドア バックトゥザフューチャー Bランク(5) バッファロー'66 普通の人々 眼下の敵 スーパーマリオ 魔界帝国の女神 メッセージ Cランク(12) ソナチネ 街のあかり 過去のない男 ロゼッタ ブレインデッド フォーリングダウン カッコーの巣の上で ロストイントランスレーション アポストル 酔いどれ詩人になる前に ブ

      • 個人的SFオールタイムベスト

        長編部門 第一位 『火星年代記』レイ・ブラッドベリ 第二位 『人間以上』シオドア・スタージョン 第三位 『高い城の男』フィリップ・K・ディック 第四位 『キリンヤガ』マイク・レズニック 第五位 『虎よ、虎よ!』アルフレッド・ベスター 第六位 『この人を見よ』マイケル・ムアコック 第七位 『光の王』ロジャー・ゼラズニィ 第八位 『たったひとつの冴えたやりかた』ジェイムズ・ティプトリー・Jr. 第九位 『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア 第十位 『銀河ヒッチハイ

        • 人生に意味はない

          人生の意味。益体もない話ではある。大抵の人は「そんなものはない」「考えてもしょうがない」と答えると思う。その答えには私も同意する。さてしかし、なぜ人生に意味がないのか、あるいは、なぜ考えてもしょうがないのか、見聞きした覚えがない。私も、自分の考えを口に出したことはほとんどない。 そもそも、人生の意味と一口に言っても、何を問うているのかは判然としない。言葉を探すと、生きる価値や、自分の行いの意義などに言い換えできるように思う。 人生の意味や生きる価値と言うほど大仰でなくとも、

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        『哲学探究』概説

          「気がついたら教師になっていました」

          高校生の頃、学級新聞か何かに、教員へ質問をするコーナーが載っていた。質問のひとつに「教師を志したきっかけは?」というものがあり、教員がそれぞれに思うところを書いていた。 今でも憶えているが、ある数学教師がそこに「気がついたら教師になっていました」と書いていたのだ。 他の教員の書く、それらしい立派な初志からすれば、えらく志が低いなと思われるような話だと思う。まあ、半ばジョークだったのだろうけども。 彼自身は(2年の頃担任だった)大変穏やかな先生で、周囲の志の高い(はずの)教員と

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          『統計学はなぜ哲学の問題になるのか』感想

           11月7日の哲学オンラインセミナー。巷で(私のTL上では)話題の『統計学を哲学する』の著者による関連発表。販促を兼ねてと言ったところか。  結論としては、相変わらず(?)哲学に対する私の否定的・批判的な見解を覆すものではなかった。なお著書は購読していない。  発表の大筋は、タイトル通り哲学者向けに統計学および著書の内容を紹介するというもの。逆の「哲学はなぜ統計学の問題になるのか」については本を読んでもらいたいとのことだった。  現在動画が公開されている。 https

          『統計学はなぜ哲学の問題になるのか』感想

          頭のいい人

          頭がいい人は、難しいことを簡単に説明できる。 定期的に話題に上るよな、と思い、考えてみた。 第一に、この「頭がいい人は難しいことを簡単に説明できる」は本当に正しいのか。結論としては、難しいことを簡単に説明するためには、かなり高度な知的能力が必要だ、と考える。ただし第二に、その能力を「頭がいい」と表現することは、一概に正しいとは言えない。「頭がいい」については、言えることの幅がかなり広い。 物事を説明することは、その物事をいったん頭の中に入れて、言葉にしたり絵に描いたりとい

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          形而上学にとどめを

          『動物に「心」は必要か』の序文「擬人主義にとどめを」を読んだ。 面白い序文だった。文章が巧みだ。そのうち買って読みたいと思う。 読んで思ったのは、「哲学でも同じことが言えるのではないか」ということだ。曰く、形而上学にとどめを。 時を同じくして、以下のnoteを読む機会があった。「擬人主義にとどめを」のような美文は私には書けないが、このnoteに反論する形で形而上学を批判してみたい。 最初に断っておくことがふたつある。 ひとつ目。私には職業哲学者に対するやっかみがある。私

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          映画『トレジャー・プラネット』感想

          友人に薦められて視聴。いわゆるディズニーのアニメ映画。現在ディズニープラスで配信されている。本稿では以下「トレプラ」と略すことにする。 公開は’02年(日本’03年)。友人曰くディズニー暗黒時代の作品だそうだ。暗黒時代の割りにかなり面白かった。というか、商業的には成功しているであろう最近のディズニー映画よりもむしろ面白かった。原作はロバート・ルイス・スティーヴンソンの『宝島』で、これを宇宙を舞台とするSFアニメーションに変更したもののようだ。『宝島』は読んだことがない。

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          映画『トレジャー・プラネット』感想

          面白い人=いい人

          ツイートの主張自体は割とどうでもいい(失礼)のだが、バンギャの逸話とチャラ男の話は興味を惹いた。この「面白い人=いい人」という言い回しはすごく的を得た表現だと思ったのだ。 すぐに連想するのは学校とお笑いだ。思い起こせば小中学校くらいの頃は、学校という空間で支配的だったのはこの「面白い人=いい人」の価値観だったように思う。弟と私はディズニーのピーターパンが大好きで、当時VHSのそのビデオを時折見返して、フック船長がワニに追いかけられるシーンで笑い転げていた。お坊ちゃまくん、幕

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          科学における数学の理不尽な有効性

          前記事と関連して。 私的には理不尽だとは思っていない。 これを不思議だと考える人への説明は次の二通りあると考える。 1.構成的な見方 谷村先生も似たような話を書かれていたと記憶している。科学、例えば物理学などは社会的(歴史的)に構築されてきたものであって、今の形=数学が有効であるような形になったのは結果的なものである、とする説明である。 例えば古代ギリシャでは元素(世界を構成する元になるもの)について、様々な説が唱えられていた。元素は水だとか、いや元素は愛だとか、四つの元素

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          『高次元科学と理解のあり方』オンライントーク 感想

          興味があったので(2/3まで)聞いてみた。大変面白かったので、参加者の方々には感謝したい。 以下雑感。 全体に言葉の使い方が右往左往しており、「次元」が一体何を指すのかが分かりにくい。個人的に整理すると、「次元」と言うことで、①スケールの大小、②パラメータの多寡、③記述の長短、の三つについて議論されていると思われる。 ①スケールの大小 例えば気体の分子運動のようなミクロな現象と、天体の運行のようなマクロな現象について、運動方程式は同一の記述が可能である。このスケールフリーな

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          『〈現在〉という謎―時間の空間化批判』への補足ノート増補版、『一物理学者が観た哲学』感想

          谷村先生の書いたノート http://www.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/time/note.html および、ノートへの反応を読んで書きたくなったので 最初に断りを入れておく ・わたしは一般人である(職業哲学者でも職業物理学者でもなく、大学にも属していない) ・わたしは大学で理学部物理学科を修了した ・わたしは趣味で哲学を勉強している ・わたしは谷村先生のノートに対し、基本的に賛同している したがって、わたしには職業哲学者に義理

          『〈現在〉という謎―時間の空間化批判』への補足ノート増補版、『一物理学者が観た哲学』感想

          概念工学入門ツアー 感想

          去る8月10日・11日に京都・大阪で開催された概念工学入門ツアーに参加した 参加のモチベーションは以下 ・フォローしている哲学(関係)者の間で話題に上っていた ・宣伝文句に釣られた 鈍行に揺られ3時間、泊めてもらう代わりに友人の分までチケット代も出し、それなりにコストを払っている。値段なりの面白さを期待 初日の第1講は概念工学の紹介 ・話を聞く限りでは、(哲学から見て)社会学が羨ましいのでいっちょ噛みしたい、と聞こえる ・「結婚」が概念を変える例に用いられるが、文化侵犯

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