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ボディビルダーのJ。
自分がゲイであることを直視しない・できないまま、しかしいかにもゲイっぽくジムに通い始めた大学生の僕。
ジムでは黙々と筋トレ、そこで友達をつくるようなことはなかったんだけど、数少ない例外がJ。僕と同年代の中国系ニュージーランド人で日本語が少し苦手、たしか市役所の国際交流推進室みたいなところでバイトしてると言ってたっけな。
Jは仕事上、◯◯大学と付き合いがあったらしく、僕がそこの学生だと知って、それがきっかけで話をするようになってました。
Jは血統的には純粋に東アジア人のはずなんだけど、ニュージーランドで育ったニュージーランド人で、身のこなしや表情はしっかり外国人でした。加えて、日本人離れした(現に日本人ではないんですけど)すごい筋肉を纏ってて。当時、同年代であんな筋肉質な男は周りで見たことなかったし、今にして思えばもしかしたら何かステロイド的なものを使っていたのかもしれないですけどね。
それはともかく、僕の方といえば、Jが地方の学生にとって数少ない英語ネイティブの友人だったというのもあり、時々、筋トレの後に軽く一緒にご飯を食べに行ったりするのを楽しみにしてました。
そして、目の前にボディビルダーの男がいることにドキドキしてました。
しかし、事ここに至っても、僕はまだ自分がゲイであることから目を逸らし、誰だってこんなマッチョを目の前にすればドキドキするだろう、くらいに考えようとしてたんですよね。
***
あるときまた、この後一緒に飯でも食ってから帰ろうかということになったとき、Jが友達も一緒にいいかと聞いてきたのですが、その時その友達はもうジムの前で僕らを待っていました。
長髪のアジア人女性でした。彼女も日本語が苦手そうでした。
そしてJとその女性の様子を見ていると、それはあからさまに分かりやすく彼氏と彼女。二人の会話も、ボディタッチも、外国人のカップル。
二人は目の前にいて、僕にも親しげに話してくれているのに、なぜか遠くの別の世界の人たちであるような感じがしたよ。
***
その以降、いつの間にかJは僕の日常から消えてしまって、今となってはJという彼のファーストネームしか覚えてないんです。
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